日本電信電話株式会社(NTT)中国総代表 稲葉雅人

 

中国との事業開始は、1980年の技術交流の覚書締結

NTTグループは、現在、中国23都市70 数拠点において事業展開をしています。

1978年の日中平和友好条約の締結以降、私たちは30年以上にわたり、事業を通じて中国社会の発展に貢献してきました。中国との関係は、1980年に中国郵電部との間で「電気通信技術交流に関する覚書」を締結したことに始まります。

当時、中国の電話加入数は全国で460万(普及率0.5%)ほどであり、手動交換方式が中心だった通信インフラの発展を支援するため、NTTは「クロスバ交換機」を日本から移設、郵電部と協力して導入を進めました。導入地域は、外国人がほとんど赴くことのなかった中国内陸部の山西省、内蒙古自治区、福建省、雲南省などでしたが、NTTは日本から数多くの技術者を現地に派遣し、精力的に技術指導を行うことで、電気通信インフラを短期間、低コストで改善していったのです。 結果として、中国全体の通信基盤は向上し、中国の地方経済発展のための基礎が築かれることとなりました。

1985年以降は、日本政府の政府開発援助(ODA)枠内のプロジェクトとして、様々なシステム導入の事前調査やコンサルティング業務を実施しています。例えば中国国家計画委員会国家情報センターが計画した全国規模での統計データの収集や処理システムについて、NTTは、1986年から7年間にわたり、システム構築に関わるノウハウを提供しました。これらは、その後の行政システムを構築し運用する際の基礎となり、これらの案件を通じて、数多くの中国人技術者が育ちました。

1992年には鄧小平氏の「南巡講話」により市場経済への移行が明示されましたが、この過渡期に、NTTは中国の各種大型システム、具体的には、郵便貯金システムや中国人民銀行の銀行間決済システムなど、中国金融システムの基盤作りを支援しました。これらの技術は、当時の日本が持つ先端的な郵便貯金システム、銀行間為替業務、全国規模大型システムの分野における各種ノウハウが活かされたものであり、現在では中国の金融システムの基礎を支えるものとなっています。

中国の環境・エネルギー問題への取り組み

中国では環境意識が高まり、環境負荷の軽減が課題のひとつになっています。NTTグループでは様々な取り組みを展開しています。NTT環境エネルギー研究所は、北京市と協力して大気汚染物質を測定したり、北京オリンピックの際には太陽電池フットライトを設置するなど、環境負荷の軽減に協力してきました。また、2010年6月、NTTファシリティーズが参加している日本都市総合設計連合体は、青島市で開催された「国際公募都市計画コンペティション」で、環境への取り組みを可視化するアイデア等が評価され、全世界22チームの中から1位に選出されました。

NTTデータは、2010年7月に、天津市とリサイクル分野での協力に係る覚書を締結し、天津市と日系リサイクル企業の橋渡しを行い、資源循環型社会の形成に貢献しています。また、2011年1月に、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と中国国家発展改革委員会、北京市発展改革委員会が共同発起した「国際エネルギー消費効率化等技術普及協力事業」において、北京市での交通渋滞を解消するエコドライブの実現に向け、センターシステムの構築に参画しています。NTTドコモは、2011年6月に、NEDOの「江西省共青城におけるスマートコミュニティ技術実証事業」をスタートさせ、電気バスに関連した交通システム管理などに取り組んでいます。こうして様々な分野で環境への取り組みを進めているのです。

中国人社員の感性を尊重

中国のNTTグループでは、関連会社も含めると1万人近い社員が働いています。そのうち日本人はわずか数%程度です。子会社にはNTTコミュニケーションズ(中国)など、中国人がトップや幹部として仕事を進めている会社が多く、中国人の感性を尊重しつつ事業展開しています。

また、中国国内各都市に新たに拠点を展開していく時には、グループ会社を可能な限り同一ビルに集約し、グループの協力関係を実現しやすい土壌を作るように心がけています。これは、中国市場を熟知するNTTグループ内の中国人社員が、会社は違ってもお互いに会話する機会を増やすことで、違った角度からの視点を見つけ、お互い刺激し合い、発想を広げ、新しい着想(アイデア)を生んでいくことを期待して実施しているのです。こうした刺激が顧客満足度の高い優れたサービスを実現し、中国のお客様に役立つ企業として伸びて行くことにつながる、と考えています。

 

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