英ガーディアン紙は17日、「東アジアは緊張と対抗の時代を迎えている」という悲観的な文章を掲載した。このように悲観視するのは、日本の自民党が衆議院選挙で勝利し、「保守タカ派」の安倍晋三氏が首相に返り咲いたためだ。対中関係の対処は景気低迷からの脱却と同じで安倍氏が直面する最も緊迫した問題であり、世界に与える影響はもっと大きいと見られている。安倍氏は手を緩めることなく強硬な態度をとり、当選直後の会見では「国際法的にも日本は尖閣(中国の釣魚島及びその付属島嶼)を所有している。交渉の余地はない」と、中国に「警告」する発言をした。中日関係は安倍氏の再登板によって更に悪化するのだろうか。世界から多くの懸念の声が上がっている。韓国紙「東亜日報」は社説の中で、安倍氏の当選は軍国主義の復活を意味し、安倍氏の計画に従えば日本は「怪物」になる可能性が高いと論じた。一方、日本の景気低迷と膨大な中日貿易は安倍氏の「熱」を下げるという見方もある。中国外交部の報道官は17日、「日本の発展方向に大いに注目する」と表明した。中国社会科学院の日本問題専門家の呉懐中氏は「環球時報」に対し、「安倍氏が中国に対してどのような態度をとっても、中国は心配する必要ない。中国の戦略的優位性は高まっており、焦るのは日本であり、中国ではない」と話した。
中日関係はさらに悪化するか?
ロイター通信は17日、「日本の安倍新総理は経済を立て直し中国に対応しなければならない」と安倍次期首相の主要課題を強調した。保守的な自民党が衆院選に勝利し、タカ派の元首相が再びこの国を取り仕切る見通しだが、低迷する経済の立て直しとともに、中国との緊張関係を早急に処理しなければならないと指摘。米フォーブス誌は、安倍氏がどういった経済政策をとるか非常に重要だが、アジア太平洋地域と世界にとってより緊急な課題は彼の新チームがいかに対中関係を回復するかだと指摘した。
日本の毎日新聞によると、自民党の勝利から24時間と経たないうちに、安倍晋三次期首相は島嶼問題に関して中国を激怒させる発言を行ったが、中国との戦略的互恵関係の再構築をも強調した。日本は中国への大規模な投資で1000万人近い雇用に寄与しており、中日関係は切り離せない。AFP通信は、安倍氏は中日関係の重要性を認めつつ、強硬路線を堅持していると伝えた。
安倍政権によって中日関係はさらに悪化するのか?米ロサンゼルス・タイムズは、安倍氏が平和憲法改正支持、軍の制限緩和、日本の主権維持の強化を公約していることから、自民党は島嶼をめぐる中日対立をまた激化させると指摘。また、英ガーディアン紙は、保守的なタカ派が再び政権につくことで、東アジアは緊張と対抗の時代を迎えつつある。安倍氏が公約を履行し、釣魚島での漁場開発、施設建設など領土問題において強硬な立場をとった場合、対中関係はさらに損なわれ、中国の強烈な反発を招くと分析する。上智大学政治学教授の中野浩一氏は「安倍氏は自らの保守観のほかに、自民党が進めるタカ派政策の圧力を受けるだろう」との見方を示す。
中国の環球網が17日行ったネット調査によれば、78.8%の回答者が「安倍氏が再登板によって中日関係がさらに悪化する」と答え、「安倍氏が主張する平和憲法改正、国防軍創設が実際に行われれば、東アジアで戦争に火をつける可能性が高まる」とする回答者は89.5%にのぼった。AP通信によると、中国のミニブログサイトでは安倍氏非難の声が強く、安倍氏の島嶼問題をめぐる強硬な発言を受け、日本製品ボイコットを呼びかける声もあったという。
その一方、「日本経済の難局が安倍氏の勢いを弱まらせるだろう」とAFP通信の見方は楽観的だ。衆院で獲得した多数議席が安倍氏のタカ派外交政策に自由を与えるが、強大な財界が彼の極端な行動をとどまらせる可能性が高い。安倍氏は中国に拠点を持ち、その巨大市場で利益を享受しているトヨタやソニーといった大手メーカーの制約を受けるというのだ。政治学者の増山千高氏は、「中国の巨大な経済と両国の貿易関係のほうが安倍氏の勢いに勝っている。対中関係を改善できなければ、有権者は来年の参院選で自民党に罰を与えるだろう」と分析する。
ニューヨーク・タイムズ紙は17日、今回の選挙は、経済を改善できなかった民主党を失望した国民が放棄する形となった。安倍氏の言うように「自民党に対する国民の信頼が回復したというより、民主党政権の混乱に対して国民がノーと言った」といえる。「有権者が自民党に票を投じたのはそれが唯一の選択肢だったからだ。今回大勝したが、安倍氏はこれを任意に何でもできる全権委任状だとは思わないほうがいい」と京都大学政治学教授の待鳥聡史氏は忠告する。自民党関係者は、安倍陣営は選挙前からすでに北京とひそかに接触し、緊張緩和に努めていたと明かす。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年12月19日
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