中日の未来のために私たちが出来ること

滕春萍(天津外国語大学)

 

チベットにあるヤルンツァンポ川で、こんな話があった。この川は自然的に出来た険しい崖と激しい流れのために、昔からここに橋を架けることはとても困難であった。しかし、その地域の人々は、藤のつるで橋を架けたり、綱でロープウェーを作ったりして、このようにいろいろな知恵をしぼって、橋を使い山の外の世界を見に行く。中日の間の交流もそうだ。行く道を妨げるものがあるが、中日両国民の知恵をしぼって一生懸命に友好交流の「橋」を架けるならば、良好な中日関係を促進していくのも決して夢ではない。

情報化時代のおかげで、ネット上には、日本文化を了解し、日本人と交流するチャンスも増えている。わたしもその恩恵を受けオンラインの交流を通して日本人の友だちできた。互いの文化に好奇心や好感を持っているから、ディスカッションしているうちにコンセンサスを得る場合も多い、どちらに対しても楽しい経験だ。

もちろん、ネット上の交流のほかに、現実生活に双方向・多様化な交流も重要な役割に立つ。

日本語学科の学生として、日本人と交流したり、いろいろな場面で日本を理解したりするチャンスが多い。民間友好交流は実に中日関係を促進する一番大切な手段だということをしみじみと感じられる。日本語学習者であるわたしたちは民間交流の最前線にいるといっても過言ではない。学んだ日本語で、さまざまなことを理解できる上に、日本の文化理解も出来るようになる。学部生だったとき、久保先生というやさしい日本人の先生と親しくなり、いつも話し合ったり、食事などをしていた。先生との交流の中で、私のなかには日本人の生活習慣・考え方などに新しい発見や気づきが生まれ、それと共に日本文化への理解も一層深くなっていった。日本で選挙(衆議院・参議院)があったとき、先生はわざわざ中国駐在日本領事館に手続きをし、日本から投票用紙を受け取り、真剣に投票用紙に記入し国際速達郵便でまた日本へ送っていた。日本人にとって、これはただ日常生活の一部に過ぎないのだろう。しかし、先生の行動は中国人の私にとって、衝撃を超えて、信念とか正義とかたくさんの素晴らしい考え方を私の生活に与えてくれた。

昨年九月、釣魚島事件で中国全国が騒がしくなって、TVニュースにも新聞にも反日デモの報道があふれていた。私が住んでいた小さな街までも反日デモが起こった。丁度この時期にクラスメートの6人が日本に留学していた。中国にいる家族が彼らの身の安全を心配して、不安を抱えながら電話をかけて状況を聞いた。しかし、思いがけなくこの6人のクラスメートは国内での反日デモのことをあまり知らず、「周りの日本人もいつものように暮らしている」と教えてくれた。その6人の中ひとりである王さんが、日本料理店へ食事しに行ったときに、食堂の店主は王さんが中国人ということを分かった後でも、差別するどころか、かえって、親切に名刺をくれ中国で働いている自分の息子のことについて話しをしてくれたという。この話を聞いて、中国にいたクラスメートは驚いたというより衝撃を受けた。なぜなら、国内のデモで日本の会社やレストランや人が中国人から野蛮な行為をうけていた。このことを知った日本人は中国人に仕返しをするのではないかと私たちは思ったからだ。

中日関係が緊張したとき、日本人作家の村上春樹氏は『魂の行き来する道筋』という文章を書いた。この『文化の交換は「我々はたとえ話す言葉が違っても、基本的には感情や感動を共有しあえる人間同士なのだ」という認識をもたらすことを一つの需要な目的にしている。』という話しを読んで、中日交流について村上さんが述べた考えにとても共感を覚えた。更に、釣魚島事件について、村上さんも次のような目の覚めるような言葉を書いた。『「我々は他国の文化に対して、たとえどのような事情があろうとしかるべき敬意を失うことはない」という静かな姿勢を示すことができれば、それは我々にとって大事な達成となるはずだ』。確かに、もし我々は敬意を込めている姿勢で交流すれば、感情や感動の共通点も発見し、さらに互いの文化への理解も増進することができる。

目下のところ、我々は何国人というより国際人としての覚悟が持つべきだと思う。国際人の視点にたてば、ただ自分自身あるいは自国のことを考えるではなく、「自分の身の回りから、自分だけのためではなく他人のために行動する人びとの連帯を、粘り強く広げる」というように行動実践していけるのではないか。わたしは「自他共の幸福を築く」という言葉が好きだ。ひとりの力は小さいが、同じ信念のある人々の力をあわせ、寛容・理解の根底に据えて中日友好交流を促進していけば、きっと「自他共の幸福」を築くことができる。

 

 

 
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