路地裏の日本式洋食店

 

東城区北新橋周辺には、多くの胡同が連なっている。そのうちの一つ石雀胡同と呼ばれる路地の東の端に目立たないレストランがある。店のロゴはウサギの顔がデザインされたオタマだ。店内の装飾、壁に掛けられた絵、キッチンののれんなど、店内のそこかしこにウサギのデザインが見られる。ウサギはこの店の経営者の1人・鈴木功治さんの貴重な宝物なのだ。

店の残る2人の経営者は若い夫婦、周寧さんと朱迪さんの夫婦だ。店の名前は「鈴木食堂」といい、それほど大きくない店舗で提供されるのは主に日本風の各種定食だ。周さんの定義ではそれは日本の家庭料理で、「私たちが作るのは洋食と呼ばれるもので、純粋な日本料理ではありません。ヨーロッパから日本に伝わったものです」。日本の家庭で作られる洋食のシンプルなぬくもりが訪れる客に伝わるためか、店内はいつも満席だ。当初彼らは大学生を顧客に想定したが、現在では小学生から中高生、サラリーマンまでがこの店のファンになっている。

鈴木食堂はこの石雀胡同のほか、南鑼鼓巷の小菊児胡同と帽児胡同内にもそれぞれ店を出している。なぜどの店も胡同なのだろう。

周寧さんは生粋の北京っ子で、小さい頃から什刹海近くの胡同で育っただけに、胡同にひときわ深い思いを抱いている。日本に留学していた時も、人々の生活感が色濃い東京・吉祥寺付近に住んでいた。彼女の夫の朱迪さんも胡同で育っただけでなく、以前は胡同にコーヒー店を出していた。一方、鈴木さんは中国の民俗音楽を学ぶために北京にやって来たが、中国文化に対する熱愛から、ひと目で胡同に魅せられてしまった。彼にとっては、胡同こそが最も中国的味わいがある場所なのだ。

2009年、3人はいろいろ話している間にレストランを出すアイデアを思いついた。2年にわたる協議や準備を経て、2011年に鈴木食堂の1号店を小菊児胡同にオープンさせたが、このために周さんは雑誌社での仕事を辞し、鈴木さんは北京に開いていたカレー店をクローズし、朱さんも画廊での仕事を辞めた。夫婦と鈴木さんは出身国も違えば文化的背景も違うが、相互信頼から彼らは一緒に進むことを選んだのだ。

開店当初は3人でサービスから料理まですべての仕事を担当していたが、現在では3店で50人余りの従業員を抱えている。周さんはスタッフの訓練と管理を担当しているが、留学時のアルバイト体験から「サービス」について深い考えを持ち、スタッフに店のサービス理念を、単なる言葉やスタイルではなく心から受け入れてほしいと考えている。鈴木さんは全力でキッチンを管理しており、衛生面から料理の品質まで厳しく目を光らせている。朱さんは仕入れと工程管理が担当だ。

共同経営について、朱さんは「私たちは価値観が似ており、ぜいたくなものを追求せず、お金を多くかせぎたいとも思いません。ただ多くの人と美食を分かち合いたいのです。小さな言い争いになっても事実に即して話し合い、面と向かって直接言い合っています。また仕事の分担が明確で、それぞれに重きを置いているので、最終決定は責任者が行っています」と話している。

取材時、彼らは4号店出店の内装工事で忙しいところだった。今度の店もやはり前門大柵欄の楊梅竹斜街という胡同に出す。北京の胡同は、周さんと朱さんにとっては子ども時代の記憶を見出す場所で、鈴木さんにとっては北京で最も文化の趣ある、静かな、北京独特の魅力を感じさせる場所なのだ。

 

鈴木食堂「トロイカ」経営陣のうちの2人、周寧さん(左)と朱迪さん夫婦 

鈴木食堂小菊児胡同店 

 

鈴木食堂小菊児胡同店

所在地/北京市南鑼鼓巷小菊児胡同77号

電話/010-64031580

アクセス/地下鉄6号線南鑼鼓巷駅下車、 A口を出て南鑼鼓巷を北へ徒歩10分、 小菊児胡同を東に入る

 

人民中国インターネット版 2014年

 

 
 

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850