程永華委員:さまざまなレベルでの交流を堅持すべき

 

聞き手=『対外伝播』譚震記者

現在、中日間に領土紛争、歴史問題、安全保障面での相互信頼など多種の問題が同時に発生し、中日関係は最も厳しい時期にある。いかに現在の両国関係を見て、両国人民がこの時期にいかに付き合うべきか? 中国人民政治協商会議第12期全国委員会(全国政協)第2回会議の期間中に、これについて、政協委員である程永華中国駐日大使にうかがった。

中日関係は段階的な問題

――程大使は業務での日本滞在が累計で26年あり、対日問題について発言権があります。現在の中日関係をどのように見ていますか?

程永華(以下程と略す) 長期的に見て、私は中日関係には自信を持っています。現在は段階的な問題ですが、中日両国の多種の問題はすでに中日関係に大きなマイナスの影響を及ぼしています。2013年、中日両国の貿易額は5.1%減少しました。双方の往来も減少しており、中国から日本を訪れる人は8%前後、日本から中国に来る人も22%減少しました。

なぜ中日関係の現在は段階的な問題だと言うのでしょうか? 2010年、中国のGDPの規模が日本を上回り、中日両国の国力比較に変化が生まれました。日本の一部の人々は故意に「中国脅威論」を吹聴し、中日関係の正常な発展に影響を与えました。

日本に限らず、国際的にもこの種の心配があり、中国が発展し強大化すると「マッチョさを見せよう」とするのではないか? と考えているのです。外の世界にどんな声があろうと、私たちはさまざまなチャンネルを通じて、中国の平和発展という大きな政治的方針、理念、方向の説明を堅持していかなければなりません。

――なぜ日本の民衆の中国に対するマイナス感情がますます大きくなっているのでしょうか? 日本社会の本当の考え方はどうですか?

 両国に最近絶えず出現している問題は、どれも日本側の挑発によるものです。例えば、釣魚島をめぐる問題のような領土紛争ですが、私が釣魚島問題の歴史的背景と中国の立場について話すと、彼らは「あなたの話にはあなたの道理があると感じる」と、聞いてくれます。しかし、彼らに中国の立場を支持させるのは無理で、この問題をめぐる日本の民衆の中には中国側とお互いに対立する一種の主張が形成されています。

日本の指導者の靖国神社参拝には、日本人にも異なった見方があります。日本のメディアによる世論調査によれば、およそ3分の1から半分以下の人がこれを支持しています。一方、かなり多くの日本人は指導者の参拝に不賛成、不支持で、歴史と戦争に対しても省察と反省をしています。あの戦争の歴史は悲惨な記憶で、多くの人は戦いを望まず、平和を望んでいます。

日本の一部過激分子の言論は極端で、極めて少数ですが声が大きく、街頭デモさえ行い、外来者を差別する言論を発表しています。

各レベルでの交流を堅持

――日本社会には中国を客観的、友好的に待遇する人々も少なくありません。いかに焦点を定めてこうした人々と良い交流をしているのでしょうか?

 まず上層の人々、例えば国会議員です。次に、各分野の代表的人物。例えば日本各界を代表するメンバーで構成される各界ごとの友好団体です。日中経済協会は、日本の経済界のメンバーで構成され、会長と副会長は各企業のトップです。日中文化交流会のメンバーの多くは文化界の人たちで、辻井喬会長は逝去されましたが、現在の副会長は中国人がよく知っている女優の栗原小巻さんで、中国に対して非常に友好的です。これらの人士はすぐに中国の声を理解し、日本社会の上で客観的な声を強める助けになっています。第三に、末端第一線の大衆団体で、例えば日中友好協会はそのメンバーの多くは普通の民衆で、長年日中友好を堅持してきた「鉄の竿」(確固たるの意)の人々です。私たちはこうした人々を引き続き重視しなければならず、彼らを忘れてはいけません。

日本の人々の大多数は平和を望んでおり、中国との隣国関係が改善されることを望んでいます。事を起こし、挑発するのは、ほんのひと握りの右翼勢力で、これは区分する必要があります。

――いかに日本の若者を対象に交流、コミュニケーション活動をすべきでしょうか?

 戦後日本は国民に対する歴史的教育が不足したため、歴史について常識的な認識を欠いている人が多く、特に若い人たちは、日本軍国主義が中国、朝鮮半島、東南アジアで多くの悪事を行ったことを知らず、「真珠湾攻撃」事件さえ知らない人もいます。ここ20数年来、日本経済は長期にわたって低迷し、政治的にも混乱状態に陥り、そこに日本の上層部にいる右翼分子が扇動することで、若者の民族主義感情が容易に誘発されてしまいます。

この問題に関しては、双方はより理性的に行動し、フェースツーフェースの交流と意思疎通を行うべきです。大学生間の討論を行うなどです。ただ、討論してもいいですが、ケンカになってはいけません。討論を通じて、日本の大学生に、中国の大学生がどのように考えているのか、中国人がなぜ日本の指導者が靖国神社に参拝することに反対するのかを理解してもらうのです。こうした交流は、われわれのメッセージを相手に伝えていくことに役立つと思います。

――民間交流の伝統をこれからも堅持する必要はあると思いますか?

 そうですね。友好団体、地方の各省・自治区・直轄市の間の交流など、民間組織や団体の間の交流も多く展開すべきです。例えば、中国の有名なバレエ劇『白毛女』は、かつて日本の松山バレエ団が創作したもので、日本でも公演されました。民間交流の伝統は、捨ててはいけないもので、引き続き推進しなければなりません。

――中国と日本は、今後どの分野で多く交流していくことに注意すべきでしょうか?

 一般に日本では、文化面で両国は根源的に非常に深いつながりがあると考えられています。現代の日本文化の中に非常に多くの中国から伝わったものがあるということは、日本社会の共通認識です。日本の民衆は政治的主張の相違を棚上げし、中日文化の間にある共通の言語に親しみを感じることができます。

1980年代、中日間の文化交流は非常に盛んでした。例えば、映画やドラマでの中日合作です。このところはやや少なくなっていますが。2012年、作家の莫言氏がノーベル文学賞を獲得したことに対しては、日本の人々も喜んでくれました。当時は日本の作家と競争と言われていましたが、同じアジア人である莫言の受賞を歓迎したのです。日本人はアジアの文化には、欧米文化に対してとは違った一種の親近感を持っているのです。

そのほか、中国はより多くの優秀な映画・テレビ作品を輸出すし、多元的なチャンネルを通じて、日本の人々に中国に対する理解と認識を深めてもらうようにすべきです。私は交流できる余地はまだまだ大きいと感じています。

正しい理解のため丁寧な説明を

――中日両国間の誤解は減るどころかより深まりつつあるようです。中国に対する日本の誤解について、メディアはその中でどのような役割を果たしてきたと思いますか?

 2013年『中国日報』と日本の言論NPOが、両国の民衆に対する共同世論調査を行いましたが、それによると双方の民衆の90%以上が相手に対し好感を持たないものの、70%は相手との関係の改善を望んでいるそうです。このデータは現在両国民衆の感情に一種の対立する傾向があることを示しており、重視すべきです。しかし、実際にわれわれが接触した日本の民衆、とりわけ地方の文化界や経済界では、中日友好を願っている人が大多数を占めます。

ご質問のメディアの役割についてですが、確かに日本では次の二つの面の問題を感じています。一つは、日本のメディアは、正常でポジティブなことを報道せず、逆に常々論争となる話題を取り上げていることです。このような報道は民意を誤った方向に導くものです。もう一つはインターネットの問題です。私の知るところでは、両国のネットユーザーの間にすでに対立傾向が出ています。極めて不正常で不健康な言葉で意見を述べ、すでに問題の討論ではなくなっています。この問題についても、われわれは理性的に、冷静に考えるべきです。というのは、世界に中国がどのようなイメージを持たれているかは、すべての中国人が考えるべきことだからです。特にニューメディアにおいては、ユーザーたちはやはり理性的な討論を行うべきです。

――いかに日本に対して「中国の夢」を説明すべきでしょうか?

 中国の大きな政治的方針は平和発展で、二つの長期目標を実現し、中国の夢を実現しようとしています。中国の夢を世界に理解してもらうには、私たち各人が自分の言葉と行動で外に対外表明していくべきです。

中国が覇をとなえるかもしれないという懸念を持つ一部の日本人に対しては、中国の歴史上引き継がれてきた「和を以って貴きと為す」の理念を述べ、事実として中国が日本に行って戦争をしたことはなく、日本を侵略したことはさらにないことを説明すべきです。私たちは日本に中国の夢について説明を行う時、中国は平和発展を堅持することを説明すべきです。これは私たちの基本理念と発展目標です。こう説明すれば、私たちが直接接する相手は、講演の対象から大学教授や大学生まで、きっと理解してくれるはずです。

 

人民中国インターネット版 2014年3月13日

 

 
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