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山海の珍味を名物料理に | ||||||
「佛跳墻」の誕生秘話
その福州料理を代表するのが、老舗料理店聚春園の看板料理・佛跳墻で、中華料理通なら一度は耳にしたことがあるはずだ。伝えられるところでは、清代同治年間の1876年、福州のある役人が屋敷に福建の布政司(省の民政や地租、戸籍を担当する役人)周蓮を招待した。浙江省紹興出身というこの役人の妻は自ら厨房に入り、鶏肉やアヒルの肉、数種類の海産物を紹興酒を満たしたかめに入れて煮込んだ料理「福寿全」をふるまった。周蓮はこれをいたく気に入り、お抱え料理人の鄭春発に再現するよう命じた。鄭は「福寿全」を改良し、使用する肉類を減らし海産物を多く使って、よりかぐわしく口当たりのいい料理に仕上げた。後に鄭は自分の店聚春園を開き、この料理を看板料理にしたのだった。佛跳墻という名前の由来については、福建方言で「福寿全」が「佛跳墻」と似ているため次第にこの名前で呼ばれるようになったという説と、この料理の香りの素晴らしさは仏像さえお寺の塀から飛び出してくるほどだからというものがある。 最も伝統的な佛跳墻はナマコ、アワビ、干し貝柱など20種類以上の食材を使い、料理方法も非常に複雑だ。一般にはまず各種材料を下ごしらえした後紹興酒のかめに一層、また一層と敷き詰め、シャンタン(鶏の一番だし)と紹興酒を適量入れる。最後にかめ口を蓮の葉で密封し強火にかけた後、とろ火でじっくり煮込む。 現在の料理長である楊偉華氏は、聚春園佛跳墻料理技術の第8代伝承者だ。今年40歳の楊料理長は十代で料理学校を卒業するとすぐにこの店の見習いとなった。「当時は毎日朝7時から晩の10時まで仕事でした。辛い仕事の中、盗み見をして秘法を学ぼうとしていました。後になって親方が私にやる気があると見て、佛跳墻担当チームに抜てきしてくれたのです」 楊料理長は、「本当の佛跳墻は材料選びからお客様に供するまで最低でも1週間は必要で、材料と料理法に非常にこだわった料理なのです。本来の味を保つため、佛跳墻を担当する料理人チームは十数年来固定されています。福州料理も不断に改良が進んでいますが、佛跳墻伝統の調理法は正しく伝承されていかなければなりません」と話している。
「小吃」も見逃せない 福州料理の重要な構成要素となっているのが「小吃」と呼ばれる伝統的な軽食だ。佛跳墻に比べるとかなりB級だが、「線麺」(細い麺)、「太平燕」(アヒルのタマゴが入ったスープ料理)、「魚丸」(魚のすり身だんご)、「煎包」(焼きパオズ)など多彩な福州の「小吃」は佛跳墻にも劣らない歴史を内包しており、これらもまた福州伝統の味を代表している。福州市南後街の名所である「三坊七巷」にはそうした「小吃」の店が軒を連ねており、グルメな観光客が集まって来る。 福州の「小吃」には安全や吉祥などの意味が込められているものが多い。今月号がお手元に届く春節の時期、福州では南宋時代(1127~1279年)からの歴史を持つ「線麺」を食べる習わしがある。旧暦の1月1日、出産祝い、長寿祝いなどめでたい席にいつも「線麺」が出されるのは、「線麺」の別名「長麺」が、この地の方言では「長命」と発音が通じ縁起がいいためだ。 同市の晋安区鼓二村では多くの住民が今でも手のべ「線麺」づくりを生業としている。「線麺」は小麦粉に塩、サツマイモ粉、ピーナツ油、鶏卵などを加えて作られるが、村民の陳さんによれば「線麺」づくりのためには毎朝3時から4時には起床しなければならないという。麺打ち、もみ、延ばしから天日干しまで9時間にわたる作業を行ってようやく完成だ。長さ2㍍ほどに延ばされた麺の直径は0・6から0・7㍉ほどになる。午前中にこの村を訪れたなら、通りに沿った家々がみな麺を干す壮観な眺めが見られるはずだ。一方、料理法はいたって簡単で、沸騰した湯に麺を入れ浮き上がってきたらすくい上げ、とんこつスープを張った碗に入れたら、老酒を加え入れ、刻みネギを散らして出来上がりだ。細い麺はつるっとなめらかで、コシのある歯ごたえが魅力だ。
また「太平燕」も福州を代表する「小吃」だ。つぶしたブタの赤身をサツマイモ粉に練り込んだ「燕皮」と呼ばれる皮で肉のあんを包んでゆで、ワンタン状の「燕餃」にする。スープには「鴨蛋」(アヒルのタマゴ)が入っているが、地元方言で「鴨蛋」は「圧乱」(乱を鎮圧する)の発音と近いため、料理に「太平」の名がつけられたという。この料理は明治時代に日本に伝わったが、日本では一般になじみの薄いアヒルのタマゴは鶏卵に、「燕餃」は春雨に置き換えるアレンジが加えられ、今では熊本県を代表する人気料理になっている。福州と日本との交流を示す興味深いエピソードだ。
人民中国インターネット版 2014年3月 |
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