魯忠民＝文・写真

２０１３年９月７日、中国の習近平国家主席はカザフスタン共和国のナザルバエフ大学で講演を行い、「シルクロード経済ベルト」すなわち中央アジア諸国などとの経済協力構想を明らかにし、シルクロードは再び世界の注目を集めることになった。

西安は古代シルクロードの東の起点であり、中国史上13の王朝が都を置いた歴史ある都市だ。前漢（紀元前２０６～２５年）時代、張騫は２度ここを出発して西域に向かい、西安と地中海東岸との交流路を切り開いた。唐代（６１８～９０７年）には玄奘三蔵がここからシルクロードを通って天竺（インド）に到り、貴重な仏教の経典を携えて帰国した。

古代のシルクロードは東西を結ぶ経済、文化交流の道だった。陝西省の省都である西安は、中国西部地区の重要都市でもあるが、ここを訪れると依然として長い歴史と文化を蓄積した古都のたたずまいを感じることができる。

「大唐西市」のにぎわい

往時の繁栄を現代に

隋（５８１～６１８年）・唐時代の長安（現在の西安）は東西に二つの「市」を有していた。東市は国内市場であり、西市は国際市場だった。西市は長安市街地の西南部に位置し、約１平方㌔の広さを持ち２２０余りの業種にわたる４万余店がひしめいていた。当時としては世界最大の国際取引・文化交流センターだったのだ。

范燕燕さんがデザインした、シルクロードをテーマにしたスカーフ

西市は隋代に建設が始まり、唐代に最も繁栄し、唐末に破壊されるまで約３２０年続いた。史料によれば、ペルシャ、インド、ローマ、日本など世界各地の商人がここに集まって来て、中国の絹織物、陶磁器や紙、西方の宝石、香料や薬剤などを取り引きしたという。西市は市場として繁栄し、堅実な経済発展でシルクロードの貿易システム全体を支えた。その意味でもここが真のシルクロードの起点だったと言えよう。

唐代に西市があった場所には、新たに「大唐西市」という名前のシルクロード文化をテーマにした国際貿易センターが建設された。この中にある「丝绸之路风情街」（シルクロード・ストリート）には中国、日本、韓国、インド、キルギス、イラン、トルコなど20カ国近くの特産品や芸術・文化が集められており、古代シルクロードの繁栄をほうふつさせる。

中国では商（殷）から周代にかけてすでに絹織物が作られていた。西安のある関中地方は周代にはすでに養蚕や絹紡織の基地となっており、漢代には中国の絹織物は非常に発展し、シルクロードに沿って西方に伝えられて行った。

歴史的テーマと現代技術

西安美術学院中国画科を卒業したデザイナーの范燕燕さんは、シルクロード・ストリートで自分のシルク製品を売る店を出している。店には自分がデザインしたスカーフなどが陳列されている。デザインの題材の大部分はシルクロードに関するもので、唐代の宮殿・大明宮、鼓楼や鐘楼、敦煌の壁画に描かれたハスの花、飛天などだ。范さんは、敦煌莫高窟で２年間壁画の模写をしたことがあり、そこからシルクロードに対する深い興味を持つようになったそうだ。彼女はまた６年間を費やして、絵画技法とパソコンで絵を描くペイント・ソフトの結合を試み、絹織物にデジタル・プリントや手描きを施すテクニックを確立した。現在、彼女のアート・スカーフは４００種類にも及ぶ。米国のオバマ大統領夫人も彼女の作品を収蔵し、礼状まで送っている。彼女によれば、今後は新疆シリーズ、寧夏シリーズなどのスカーフ制作に取り組んでいくそうで、ゆくゆくはシルクロード全域をスカーフに表現したいという夢を持っている。

イラン館の家楽さんと愛娘

かつて、ペルシャ人のラクダの隊商がシルクロード上をさかんに行き来していた。記録によれば、唐代にはペルシャの使者が40回以上長安を訪れており、その人数は合計で４０００人を上回っている。西市でも著名な「波斯邸」（ペルシャ屋敷）はかつてペルシャの行商人たちが居を定め商いを行った場所にほかならない。行商人たちの中にはそのまま住み着いた者も少なくない。現在の西安「回民」（イスラム教徒）の祖先だ。

現在、大唐西市イラン館は濃厚なイスラムの香りに満ちている。館長の中国名は家楽と言い、１９７９年生まれの彼は妻子とともに西安に住んでいる。中国で最も有名なイランの商品といえばペルシャじゅうたんやトルコ石だが、これらはかつてシルクロードをやって来たペルシャ商人が扱う主力商品でもあった。

家楽さんの紹介によると、小さい時からじゅうたんの上で育つイラン人にとって、じゅうたんは日常生活の必需品であり、家々に伝わる芸術品でもあるという。ペルシャじゅうたんの歴史は１７００年前にまでさかのぼることができる。手織りのじゅうたんは天然の羊毛でできており、絹と綿も使われる。そのうちでも最も高価なのは絹織りのタペストリーで、じゅうたんに生糸が使われるようになったことには明らかにシルクロードとの関係が見られる。ペルシャじゅうたんは国際的に高く評価される芸術収蔵品で、現代の中国でも巨大な潜在市場を持っている。

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