習主席が新構想打ち出す

 

段非平=文

習近平国家主席は昨年9月に中央アジア各国を訪問した際、「シルクロード経済ベルト」建設という戦略構想を世界の舞台で初めて提起し、さらに上海協力機構(SCO)ビシュケク・サミットで広範囲の共通認識となった。

この構想は「シルクロード」が通過していた各国の発展願望と合致したことから、大いに歓迎された。しかも、「経済ベルト」の機能の拡大と成長に伴い、ユーラシア大陸の政治、経済、文化交流はより緊密さを増し、新しい歴史的意義を与えられた「シルクロード」は再び世界に大きな影響をもたらすに違いない。

内陸部経済の発展に注目

習主席は昨年9月7日、カザフスタンのナザルバエフ大学で行った以下の講演で、初めて「経済ベルト」の共同建設という新たな概念を打ち出した。

「20年来、中国とユーラシア諸国の関係が急速に発展してきたのにつれて、古い歴史を持つシルクロードは日増しに新しい活力を生み出してきた。われわれは中央アジア各国とともに、絶えず相互信頼を増進し、友好関係を強固にし、協力を強化し、共同の発展と繁栄を促進し、各国民の福祉をはかることを希望している……ユーラシア諸国の経済関係をさらに緊密化し、相互協力をさらに深化させ、発展の見通しをさらに広げるため、われわれは新たな協力モデルとして、『シルクロード経済ベルト』を共同建設し、点から面へ、線から平面へ拡大し、次第に広範な地域協力を推進しよう」

昨年9月カザフスタンを訪問した際、ナザルバエフ大学で講演し「シルクロード経済ベルト」構想を初めて打ち出した習近平国家主席(新華社)

「経済ベルト」構想は中央アジア各国にとって現実的な意義を持つ。2012年当時、中央アジア各国の経済情勢は総体的に以前より悪化し、経済成長率も鈍化していた。これらの途上国は「中国の助力」を期待していた。各国は「経済ベルト」建設によって中国の強力な資金、技術、経験面での支援を獲得できるだけでなく、「経済ベルト」の延伸によって、中央アジア各国の貨物を太平洋への出口の港まで運び、アジア太平洋経済における発展のチャンスを分かち合うこともできる。

「こうした状況下で、中国が打ち出した『経済ベルト』構想は中央アジア各国に大歓迎された」。中国社会科学院ロシア・東ヨーロッパ・中央アジア研究所の孫力副所長は「中国と中央アジア各国との経済・貿易協力関係がこれまで以上に実務的に発展し、『黄金期』に入ったことを意味している」と、分析している。

「経済ベルト」の効果は中央アジアにだけでなく、最終的には世界経済の発展にも影響を及ぼすとして、専門家は次のように指摘している。

「経済ベルト」の建設によって、陸路が再び中国とヨーロッパを結ぶ重要なチャンネルとなり、世界経済における内陸部の地位を向上させ、グローバル経済の構造を変えるだろう。それによって、内陸部経済と海洋経済が共に発展し、さらにバランスのとれた新たな局面が切り開かれるだろう。

柔軟な経済協力目指して

習主席の講演から、政策面の意思疎通、道路網整備、貿易の円滑化、通貨の流通、民心交流が、「経済ベルト」実現の最も基本的で核心的な中身だということが理解できるだろう。

政策面の意思疎通とは、各国が経済発展戦略と対策について十分に交流し、小異を残して大同につく原則にのっとり、協議によって地域協力推進の計画と措置を定めることを指している。

道路網整備の面では、太平洋からバルト海まで貫く大輸送ルートを開発し、東、西、南アジアをつなぐ交通運輸ネットワークを徐々に構築し、各国の経済発展と人的往来を便利にする。

ウズベキスタンの孔子学院で中国語を勉強する子供たち。「シルクロード経済ベルト」はその周辺国の経済的結びつきだけでなく、文化の懸け橋でもある(写真・楊佳)

貿易の円滑化については、貿易障壁を取り除き、貿易と投資コストを引き下げ、地域経済の循環スピードと質を高め、互恵・ウインウインの実現を呼びかけている。

また通貨の流通では、「経済ベルト」沿線の各国が自国通貨の兌換と決済の実現によって、流通コストを引き下げ、金融リスクに対する抵抗力を強め、地域経済の国際的競争力を高めることを希望している。

上述の分野で協力を実現するためには、各国民の支持を得て、文化交流と人々の友好往来の促進を通じて、各国間の相互理解とこれまでに築いてきた友好交流を増進して行くべきだろう。また「シルクロード」を単なる「経済回廊」にとどめず、友好の懸け橋としなければならない。これこそが民心交流が持つ深い意味だ。「経済ベルト」は「経済区」ではなく、一種の理念、方向性であり、実務的かつ柔軟な経済協力構想だと言えよう。

SCO前副秘書長の高玉生氏は次のように考えている。「シルクロード精神」は、異なる文明、文化的な背景を持ち、異なる民族・国家間にでも存在する有無相通ずる精神であり、共同発展の精神だと言えよう。この精神が今では、ユーラシア諸国の互恵・協力・ウインウインとして表現され、現代の経済条件下では、実務的な協力に基づく「シルクロード」の意義に拡大されて解釈されている。習主席が講演で指摘したように、「われわれはさらに広く胸襟を開き、さらに広い視野で地域協力を切り開かなければならない」

SCO研究センター高級顧問の王海運氏はさらに次のように指摘している。「『経済ベルト』を共同建設する過程で、中国はより多くの場面で主動的に行動し、より多くの公共製品を提供し、義を重く利を軽く、多くを与え少なく取るようにすべきだ。互恵・ウインウインの原則にのっとり、他国との共同発展を実現する。これは、中国の『平和的勃興』という復興理念と合致する」

 

人民中国インターネット版

 

 
人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850