利益大きいが難問も山積

 

沈暁寧=文

昨年9、10月、習近平国家主席が「シルクロード経済ベルト(丝绸之路经济带)」「21世紀海上シルクロード(海上丝绸之路)」の共同建設構想を打ち出して以来、二つの構想を合わせた「1帯1路」という表現は、中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)の「改革全面深化についての若干の重大問題に関する党中央の決定」に盛り込まれたのみならず、世界的な関心を集めている。

「1帯1路」は中国にとっていかなる意味があり、その特徴は何か、また世界経済にいかなる影響を与えるのだろうか?

全方位開放と東西均衡策

 今年7月、張高麗国務院副総理は西部地区各省を視察した際に、「1帯1路」の建設は、世界情勢の大きな変化に応じて、党中央が国内的、国際的な大局を総合的に考慮して決定した大きな戦略的政策である、と指摘した。

中国は過去30年間、世界に向けて東南沿海地区の「前のドア」を開けて、中国経済をテークオフさせたと言うとすれば、中国の改革開放がさらに一段高まった段階で西部地区の「後ろのドア」を開けた、と言えよう。中国経済に新たな成長の機会を創出することを願い、東西地区の均衡の取れた協調的な発展を実現するために、中国を全方位開放という新政策の下で、良好な経済発展の勢いを持続させようというわけだ。

 長安の栄華を今に伝える西安の夜景

「シルクロード経済ベルト構想」の下で、沿線の各省・市はすでに建設に着手している。今年年末、西部地区初の高速鉄道―蘭(州)―新(疆)鉄道は甘粛、青海両省、新疆ウイグル自治区ウルムチを結ぶ「最後の1㌔」に入る。中東各国と生活・習俗が似通っている寧夏回族自治区は中東商人の営業に向き、定住環境も快適だ。陸上輸送のセンターである河南省鄭州は「ベルト」の物流中枢、ビジネスセンターの役割を果たしたいと望んでいる。一方、古代シルクロードの起点だった陝西省西安は「新シルクロード」の国際都市として往年の繁栄を再現したいと考えている。

「21世紀海上シルクロード」建設は沿海地区の経済に前向きの影響を与えている。広東海洋大学の朱堅真教授は次のように評価している。「新たな海上シルクロード建設は大量の人材、科学技術、情報、金融などのハイエンド要素の沿海各都市への集中を促進するだけでなく、対外開放の中で地域経済の一体化プロセスを推進する」

現在、沿海各省・市では「新シルクロード」の「橋頭堡」づくりがブームになっている。広西チワン族自治区は北部湾の港でASEAN諸国の47港湾との間で海運貿易ネットワークの構築を目指している。資本、労働力輸出の大手である福建省は、海外の新興市場に目を向け、企業に対して、新たな海上シルクロードに沿って、域外投資を拡大するよう奨励している。広東省は世界規模の都市群を作り、21世紀海上シルクロード上の国際貿易センターになろうとしている。復旦大学国際問題研究院の沈丁立副院長は、「1帯1路戦略」は、中国ウイン、周辺国ウイン、東部ウイン、西部ウインというオール・ウインの局面形成を意図している、と分析している。

世界と共同の繁栄目指す

米国『僑報』はかつて「『1帯1路戦略』は時空を超えて、国際交流・協調のために巨大な想像空間を切り開く」と論評した。しかし、この戦略は想像を満足させるためではなく、中国と世界に実際的な繁栄をもたらしている。

1992年、中国と中央アジア5カ国(カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、トルクメニスタン、タジキスタン)の貿易総額は4億6000万㌦だったが、20年後の2012年には、459億㌦に増大し、中国はこの5カ国の最大の貿易パートナーになった。商務部(部は日本の省に相当)の統計によると、「シルクロード経済ベルト」沿線の中央アジア各国の貿易総額は年平均21%上昇している。中国企業のこれらの国々に対する直接投資額は1億8000万㌦から86億㌦に増え、年率54%の伸びを示した。一方、中国の対タジキスタン融資は3800万㌦と3300万元で、農業支援に回され、タジキスタン政府と農民に歓迎されている。また中国はウズベキスタンの中小企業の融資難を打開するため、2億5500万㌦の協力プロジェクトを展開し、300社余の中小企業を救済し、数千人の雇用問題を解決した。蘭州大学中央アジア研究所の曾向紅副教授は「経済ベルト」の建設が完成された後、東アジアと欧州に挟まれていた中央・西アジア地域は地政学的な優位性を生かして、「経済窪地」から「経済高地」に変身するだろう、と語った。

国際貿易大都市を目指す広州

「海上シルクロード」で言えば、中国はASEANの最大の貿易パートナーである。昨年、中国とASEANの貿易総額は4436億1000万㌦に達し、双方向の投資は1000億㌦を超過した。習主席はインドネシアの議会で演説し、中国はASEANとの自由貿易区の水準を向上させ、2020年の貿易総額を1兆㌦にしたい、と述べた。中国とASEANの過去10年の経済・貿易関係を「黄金の10年」と称するのであれば、「海上シルクロード」がこれから創出するのは「ダイアモンドの10年」になるだろう。

中国国際問題研究所の曲星所長は、経済のグローバル化という背景の下で打ち出された「1帯1路」は、世界経済を陸地から海洋へ循環させることを意味し、各国は直接、間接的に受益することになろう、と語った。

 

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