沿線にビジネスチャンス

 

張雪=文

2000年以上前に、中国商人のキャラバンが長安(現在の西安)を出発し、中国産の生糸、繻子、綾織物、緞子、絹布などのさまざまな絹製品を満載して、西に向かった。彼らは河西回廊に沿って、見渡す限り果てしないゴビ砂漠を通り抜け、これらの商品を途切れることなく中央アジアと欧州に運び、また西域(玉門関以西の新疆、中央アジア)の珍しい宝物を中国内陸部に持ち帰った。今では、かつてシルクロードに鳴り響いていたラクダの鈴の音は聞こえないが、古い歴史を持つシルクロードに新時代の息吹がみなぎり始めている。

急速に進む鉄道網の整備

貨物を満載した列車がごう音を残して山間部を通り抜け、はるか彼方の平原、山地、砂漠に向かって走り去る―こうしたユーラシア大陸を貫く経済大動脈の建設が今、真っ盛りだ。

「渝新欧(重慶市―新疆―欧州)貨物列車」の汽笛には、遠く彼方のドイツ・デュースブルクが待ち望んでいる東方からのあいさつが込められている。この鉄道によって、中国西南部の要衝である重慶からデュースブルク港までの輸送時間は海路より1カ月近く短縮され、そのコストは空路のわずか5分の1。

中国企業がカザフスタンに建設した工場。現地政府の税収増だけでなく、現地住民に雇用チャンスを提供した(新華社)

「素晴らしい変化だと思います。歴史的経験は貿易関係がさらに緊密化すれば、国と国との全面的な相互理解の増進に役に立つことを物語っています」と、デュースブルク港の最高経営責任者 (CEO) のエリッヒ・シュターケ氏は語った。

「渝新欧鉄道」のほか、「鄭新欧(河南省鄭州市―新疆―欧州)鉄道」「漢新欧(湖北省漢口市―新疆―欧州)鉄道」なども建設されている現在、新シルクロードは交通がより速く、運送がより効率的な通路になっただけでなく、貨物がより豊富で、貿易がよりハイエンドな輸送ネットワークにもなっている。

昨年10月、欧州とアジアを結ぶ海底鉄道トンネルがトルコで開通し、トルコ人の「百年の夢」が実現した。新しく開通したトンネルはボスポラス海峡を貫き、アジアと欧州を結んだ。これは、世界初のユーラシア大陸を横断する海底鉄道トンネルであり、「現代版シルクロード」に例えられる。

国際鉄道連合(UIC)のジャン-ピエール・ルビノー理事長は、21世紀のシルクロード再振興という偉大な構想を高く評価している。彼によると、現在、上海からアジア諸国、西欧諸国にまですでに鉄道が運行しており、またシベリアと北京を結ぶ鉄道もある。もし、トルコからイラン、アフガニスタンまで鉄道が建設されたら、欧州とシルクロードを一体化できる。

「西へ進む」未来図を描く

「シルクロード経済ベルトのわれわれが『西へ進む』未来図を描いています。これから中央アジア各国の豊かな牧畜産業の基礎を活用し、われわれの新製品や新技術をシルクロード沿線の国内各省・自治区、沿線各国に広げようとしています」と、陜西省紅星乳業有限公司の王宝印会長が今年の目標について語った。

陜西省・富平県は「乳用ヤギのふるさと」と呼ばれる。現在、全県で36万余頭の乳用ヤギが飼育されている。

王会長によると、今年10月に、彼の企業はカザフスタンで開かれる中国・カザフスタン経済貿易商談会に参加し、その場を利用して、彼らのヤギ乳製品を世界にアピールし、中国のヤギ乳製品が「高品質、高基準」という新しいイメージを打ち立て、「ヤギ乳製品の『空母』を作ることが夢です」と誇らしげに語った。

また、天水星火旋盤有限責任公司の劉強・副総経理が「星火旋盤は世界で最も品種が多く、規格がそろった水平旋盤製造企業であり、精密ロールグラインダー生産の先進企業でもあります。フランスとイタリアにそれぞれ持ち株会社があり、ドイツにも資本参加企業を持っています」と胸を張った。

2013年9月10日、ドイツのデュースブルクに到着した重慶発の貨物列車第1号

中国が「シルクロード経済ベルト」などの戦略構想を打ち出している現在、中国西部がその特有のマンパワー、資源と地縁的な優位性を生かして、世界的な製造業の投資、研究・開発センターになる潜在力を発揮している。オーストラリアの中国系エコノミスト・郭生祥氏は、産業のグレードアップと西部の発展が今後、中国経済をけん引する二つのエンジンであり、今、この二つのエンジンが合わされば、地域経済全体に対する影響の大きさは計り知れない、と分析している。

カザフスタン人女性のザナールさんは、カザフスタンユーラシア大学の孔子学院で中国語を3年間勉強した。彼女の専攻は国際関係論で、卒業論文のテーマは『シルクロードの復興』だった。彼女は「江蘇省連雲港を出発し、カザフスタン経由で欧州までの貨物輸送の所要時間はこれまでの45日から十数日に短縮され、両国の経済分野における協力の強化に役に立っています。私は、中国・カザフスタンの友好往来に貢献したいと思っています。これは単なる外交辞令ではありませんよ。私の夢は、中国語をマスターし、将来、外交官になり、中国駐在大使になることです」と語り、微笑んだ。

沿線各国が積極的に参加

「ユーラシア各国の経済関係をさらに緊密化し、発展空間をさらに広げるため、われわれは新たな協力モデルとして、『シルクロード経済ベルト』を共同建設すべきである」―習近平主席は中央アジアを訪問した際、こう呼びかけた。

国務院発展研究センターの専門家の趙晋平氏によると、沿線各国の中国の高付加価値商品に対する需要が日増しに増えている。これらの国家のエネルギー・資源、道路・鉄道、港湾インフラなどの建設はまだ不十分だが、一方、中国は生産能力、技術、資金の面において強みがあり、さらに多くのシルクロード沿線各国に輸出し、各国に産業資源を移転することができる。

駐トルコ中国大使の宮小生氏は次のように指摘した。「シルクロード経済ベルト」を共同建設しようという提唱はトルコで大きな反応があった。トルコもかつて、シルクロード再振興の構想を提起したことがあり、現代化した鉄道で中央アジア各国と連携を深めたい。両国はこの点における観点やタイミングが合致している。中国鉄建が請負い建設したアンカラ─イスタンブール間の高速鉄道の第2期本体工事はすでに完成した。

カザフスタン国際商学院のツルレーシャフ教授は以下のように考えている。中国はアジアにおいて、けん引車の役割を発揮している。カザフスタン・中国両国による経済貿易、人文交流もますます頻繁になっており、2国間経済貿易の深化につれて、両国の貿易額は年々穏やかに増加し、両国の協力によるビジネスチャンスもますます多くなるに違いない。

 

人民中国インターネット版

 

 
人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850