歴史の節目に回顧と展望

──中日関係史学会の学者が鼎談

 

進行=王衆一(写真も) 構成=王朝陽

 中日関係史学会は1984年、いわゆる中日関係の蜜月時代に発足した。30歳を迎えた同史学会は中日関係が国交正常化以後、最も厳しい現在でも研究を深め、討論を重ね、日本側研究者との交流を欠かさない。今年は甲午戦争(日清戦争)120周年、第1次世界大戦100周年、第2次世界大戦75周年、中国人民抗日戦争勝利記念日(9月3日)が法定記念日に格上げされ最初の年に当たる。本誌はこの節目の年に、中日関係史学界を代表する王暁秋、歩平、徐啓新の3氏に「中日関係の過去、現在、未来」をテーマに鼎談をしていただき、読者の皆さまと両国関係の復元、改善の道を冷静、客観的に考えたい。

王暁秋(Wang Xiaoqiu)氏

全国政治協商会議委員(第9期から第11期)。北京大学歴史学部教授、前中日関係史学会副会長、現顧問を兼任

――近代中日関係の転換点は120年前の中日甲午戦争だったと言っていいでしょうが、その甲午戦争、第1次、第2次世界大戦開戦から数えて今年は節目の年です。その意義から鼎談の口火を切っていただきます。

王暁秋氏 おっしゃるように今年は中国の近現代史にとって特別な意義があります。総合的に見れば、中華民族がいかに屈辱から立ち上がり、強敵に勝ち、復興の道をたどったかが分かります。

甲午戦争は中国近代史、とりわけ近代中日関係史の転換点でした。中国人民自立の転換点だったと言ってもいいでしょう。洋務運動が破綻し、一層深刻になった危機感が「繁栄の夢」をむさぼっていた人々を目覚めさせました。1894年、孫文が興中会で「中華振興」のスローガンを掲げました。

第1次世界大戦が終わり、パリ講和会議で、中国は戦勝国として、失っていた権益回復を図ろうとしました。しかし、帝国主義列強の不当な分配によって、山東省のドイツ権益はすべて日本に引き継がれました。この屈辱が中国人を大いに刺激しました。このニュースが国内に伝わると、五四運動が巻き起こり、われわれをさらにはっきり目覚めさせました。

歩平氏 日本は清朝の衰退に乗じて、甲午戦争、日露戦争を通じて、東アジアの秩序を変えられると考え、弱肉強食という侵略政策を遂行し始めました。これを見た孫文は、日本が言う大アジア主義が覇道であり、王道ではないことをはっきり認識しました。

第1次大戦は甚大な被害を与えたため、戦後、人々は平和世界の構築を願いましたが、当時の戦後処理がまずく、うまくいきませんでした。これが教訓ですね。

王 その意味で、抗日戦争は中華民族を完ぺき覚醒させ、初めて反侵略戦争で全面勝利を手にしました。まさに一歩ずつ覚醒し、奮闘を重ねた結果、最終的に勝利を収め、近代以来強いられてきた歴史的な屈辱から脱却しました。

歩 第2次大戦後、人々は教訓を生かして国連を設立しました。戦後処理の方法も変え、領土割譲、賠償金という方法では決して、戦後平和は実現できないことを認識しました。

徐啓新氏 戦後70年余、局地戦は後を絶ちませんが、世界大戦は起きていません。これは非常に得難いことですね。その鍵は、人類が二つの世界大戦から教訓をくみ取り、戦争を避けるため、国連憲章を制定したことです。日本はこの精神を受け継ぎ、平和憲法─特に交戦権の否定を明記した第9条を持つ─を制定しました。

――今年は中国人民抗日戦争勝利記念日を法律で決めた最初の年です。この意義をどのようにお考えですか。

王 今年の全国人民代表大会(全人代)で9月3日を抗日戦争勝利記念日として国家行事に格上げし、立法化したことは大変意義があることです。この日は中華民族が初めて外国侵略者に勝ち、民族解放戦争に勝利した日であり、決して忘れてはならない日です。この記念日は、手に入れるのが生易しいものではない平和を心から尊び、平和的に発展し、共に繁栄する世界を建設するようわれわれを激励しています。またわれわれに戦争の悲劇が繰り返されないように警鐘を鳴らし、軍国主義勢力の復活に警戒心を呼んでいます。

徐 今年は最初の記念日ですから、大規模な記念行事が行われ、国家指導者が出席するでしょう。この記念日制定によって、若者世代に歴史を銘記し、正しい歴史観を確立するよう伝えることができますね。また、抗日戦争の勝利は国共合作の成果でもあります。国民党側の多くの将兵も戦争中に犠牲になりました。抗日戦争勝利を記念するのはこうした将兵を記念することでもあります。こうした意味でも、大変現実的な意義がありますよ。

歩 少し補足させていただきますが、実は早くも1946年に、国民党政府が9・3抗日戦争勝利記念日を制定しました。1951年に、中央人民政府もあらためて9月3日を記念日―忘れてはならない記念日に決めました。今回、立法化しさらに重視することになりましたが、これは、決して日本の民衆を標的にしたものではありませんから、日本のみなさんが心配する必要はありませんよ。

王 しかも、この勝利は中国人民の勝利だっただけでなく、全世界の反ファシズム勢力の勝利であり、平和と正義を愛する民衆の勝利でした。軍国主義の失敗によって、日本人民は生まれ変わりました。平和を愛する日本人民もわれわれと共に、平和の勝利を分かち合えるはずですよ。

歩 王先生がおっしゃった通りですね。私は近ごろ、駐日大使館で開かれた七七事変記念日のイベントに参加しました。出席していたのは約100人でした。関東日中平和友好会はじめ、四つの日本平和団体は毎年7月7日に記念行事を行っています。今年の行事は大使館で行われただけでなく、「撫順の奇蹟を受け継ぐ会」の合唱団が組曲『再生の大地』を披露しました。この曲は戦犯が(戦犯管理所での)改造を経て、生まれ変わった物語です。会場の人々に大きな感動を与えました。この歌の主人公の戦犯たちは、帰国後、「中帰連(中国帰還者連絡会)」を結成し、多くの困難に直面しながら、証言活動など有益な行動を行い、日本の民衆に向かって、戦争で犯した罪をざんげしました。「中帰連」の活動から、戦後日本の戦争責任に対する民衆の考え方をうかがえるし、1980年代と90年代に日本政府の右傾化阻止の面で大きな役割を果たしました。

徐 戦後、日本は長年にわたって、平和の道を歩んできましたが、日本国内には軍国主義の亡霊がまだ漂っており、極右勢力が決して現状に甘んじているわけでないことを直視しなければなりません。さらに、真実の歴史を次世代に伝えたくない人も大勢いて、侵略の歴史を隠ぺい、あるいは美化しようという勢力も依然として存在します。また日本国内で国際社会の束縛から脱しようとしている勢力がいることにも、われわれは警戒しなければなりません。日本が正常な国家として、敗戦国の帽子を脱ぎ捨てたいと考えていることは理解できますが、しかし、その前提は日本が歴史に対して、正しく、目覚めた認識を持つことでなければなりません。世界人民が日本に対して不安感を抱いている状況下で、日本の一部の行動は隣国の警戒心と反感を引き起こしています。

 

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