平原紀子「歴史認識と民間交流」 

 

今回の旅で一番印象に残っているのは、人民大学の学生との意見交換だ。「歴史認識と国民感情は分けて考えている」という中国の学生の意見に両国関係改善への希望を見いだす一方、「分けて考える」ことで歴史事実が十分に認識されなくなるのではないかという危惧も覚えた。

今回、「分けて考える」主語が「私たち九〇后(90年代生まれ)」であることにいささか引っかかった。戦争の記憶が薄れ、分けて考えることに抵抗感がなくなり、歴史事実の認識も薄まってしまうのではないかという危惧だ。

「九〇后」前後の両国の青年たちには、歴史と感情を分けて考えることは容易かもしれない。しかし、きれいに収めようとするあまり、歴史事実にふたをしてしまうことにならないか心配だ。

今回の初対面かつ短い時間では、衝突にまで至る議論はできなかった。しかし、私たち青年には自由に衝突できる特権がある。戦争世代は高齢化し、証言できる人も徐々に少なくなっている。できるだけ先人に学び、理解を深めた上で、現代の青年同士が思いっきり意見をぶつけ合う。「分けて考える」のはそれを経てからでも遅くはないし、それを経て初めて意味を持つのだと思う。

日中両国の関係改善に向け、青年に期待される役割とは、肩肘張らずに本音で語り、意見をぶつけ合う機会を持ち続けることではないか。7日間の旅で、そう感じた。

自分は日本のメディアの一員として、中国のメディア関係者との意見交換も大変貴重な機会だった。しかし、メディアの役割や問題点を話し合っていても、最終的には個人の話になる。個人の見方を多面的で充実したものにして初めて、メディアという組織の中でも青年の役割が果たせると思う。


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