政府活動報告、100個の注目ポイント

 

2015年、経済の「新常態」(ニューノーマル)を迎えた状況下、中国政府はいかなる手を打っていくのか。第12期全国人民代表大会第3回会議で提出され審議に付された政府活動報告はこの疑問に、実務的・全面的でプラスのエネルギーに満ちた回答を出してくれた。約1万8000字にのぼる報告から中国2015年政府活動の「ルートマップ」となる100の実務的な目標を抜き出してみた。

▽全体的計画

1、「中高度成長の維持」と「中高レベル水準への前進」という二重の目標を見据え、「政策の安定と予期の安定」と「改革の促進と構造の調整」という二重の結合を堅持し、「大衆による起業、大衆による革新」と「公共製品、公共サービスの増加」という二重の原動力を強化する。

2、GDP(国内総生産)の成長率は7%前後とする。

3、消費者物価指数の増加幅は3%前後とする。

4、都市の新たな雇用を1000万人以上、都市の登録失業率を4.5%以内とする。

5、輸出入の成長率を6%前後とする。

6、単位GDP当たりの生産に必要なエネルギー消費量を3.1%以上引き下げる。

7、積極的な財政政策を強化し、効率を高める。今年の財政赤字は1兆6200億元(1元は約19.2円)が計上され、昨年より2700億元増加し、赤字率は昨年の2.1%から2.3%に高まる。

8、穏健な金融政策を適切に緩和する。広義マネーサプライ(M2)の増加率は12%前後とし、実施の過程では経済発展の必要に応じてこれを上回ることができるものとする。

▽改革開放

9、今年も一連の行政審査・認可事項の撤廃や移譲を進め、非行政許可の審査・認可を撤廃し、規範的な行政審査・認可の管理制度を構築する。

10、市場参入のネガティブリストを制定し、省級政府の権限リストと責任リストを公表する。

11、全国統一の社会信用コード制度と信用情報共有交換プラットフォームを構築する。

12、政府による投資プロジェクトの審査・認可の範囲を大きく縮小し、審査・認可の権限を移譲する。投資プロジェクトの事前審査・認可を大幅に減らし、プロジェクト審査・認可のオンラインでの一括処理を実施する。民間投資の市場参入を大きく緩和し、社会資本による株式投資ファンド設立を奨励する。

13、インフラや公共事業などの分野では、政府と社会資本の協力モデルを積極的に推進する。

14、政府が価格を決める種類と項目を大きく減らし、競争の条件を備えた商品やサービスの価格は原則としてすべて自由とする。

15、ほとんどの薬品の政府による価格決定を取り消し、一連の基本的な公共サービスの費用徴収の価格決定権を移譲する。

16、法で定められた秘密情報以外は、中央と地方のあらゆる部門の予算・決算は公開とし、社会の監督を全面的に受けるものとする。

17、条件の整った民間資本による中小銀行などの金融機関の法に基づく設立を推進する。成熟したものから順に許可するものとし、限度額は設けない。

18、預金保険制度を打ち出す。

19、人民元レートを合理的でバランスの取れた水準で維持し、人民元レートの双方向の変動の柔軟性を高める。

20、「深港通」(深セン・香港の株式市場相互乗り入れ)の試行を適時に始動する。

21、株式発行登録制改革を実施する。

22、災害保険と個人税収繰延型商業養老保険を打ち出す。

23、国有資本の投資会社や運用会社の試行を加速し、市場化運用のプラットフォームを構築し、国有資本の運用効率を高める。

24、輸出還付税の負担制度を整備し、増量部分は中央財政が全額負担し、地方と企業を落ち着かせる。

25、外商投資産業指導目録を修正し、サービス業と一般製造業の開放を重点的に拡大し、外資の投資制限項目を半減させる。すべてを登録対象とし一部のみを審査・認可対象とする管理制度を全面的に推進し、奨励項目の審査・認可権を大幅に移譲し、投資前の内国民待遇とネガティブリストを合わせた管理モデルを積極的に検討する。

26、登録制を中心とした対外投資管理方式を実行する。

27、シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロードの協力を推進する。「コネクティビティ」「効率的な通関プロセス」「国際物流大通路」などの建設を進める。中国・パキスタン、バングラデシュ・中国・インド・ミャンマーなどの経済回廊を構築する。

28、中韓と中豪の自由貿易協定を早期に締結し、中日韓自由貿易区の交渉を加速し、湾岸協力会議やイスラエルなどとの自由貿易区の交渉も推進する。中国ASEAN自由貿易協定のバージョンアップの交渉と地域の全面経済パートナー協定の交渉の妥結に努め、アジア太平洋自由貿易区を構築する。

▽成長の安定、構造の調整

29、介護・家事・健康消費を促進し、情報消費を拡大し、観光・レジャー消費を引き上げ、エコ消費を推進し、住宅消費を安定化し、教育・文化・スポーツ消費を拡大する。

30、インターネットを媒介として、オンライン・オフラインが相互に相互に働きかけ合う新たな消費を大きく発展させる。

31、一連の新たな重大プロジェクトの実施を始動する。

32、今年の中央予算内の投資額は4776億元に増やされたが、政府が全てを担うわけではない。民間の投資活力をさらに引き出し、社会の資本がより多くの分野に流れるよう導く。

33、鉄道投資は8000億元以上を維持し、新たな運行距離を8000km以上とする。高速道路の料金を停車せずに払える電子支払いのネットワークを全国に普及させる。発展を引っ張る交通の役割をさらに発揮させる。

34、建設中の水利プロジェクトの投資規模を8000億元以上とする。

35、今年の食糧生産量を5500億kg以上とする。

36、今年も6000万人の農村人口の飲料水の安全問題を解決し、農村の道路20万kmを新設・補修する。西部の辺境山間部の渡り綱を橋にする任務を全面的に完了させる。電気の通じていない地域に住む最後の20万人余りの電気使用を可能にする。

37、ゴミと汚水を重点として環境対策を強化し、美しく住みやすい都市・農村の建設を進める。

38、どんなに難度が高くても、農村の貧困人口を今年も1000万人以上減少させる。

39、土地関連権利の確定の登記・証書発行を進め、農村の土地接収や集団経営建設用地の市場開放、住宅用地制度、集団財産権制度などの改革の試行を実施する。

40、今年は、社会保障向けの住宅プロジェクトで新たに740万戸を建設する。このうちバラック密集地の改造は580万戸で、昨年から110万戸増えた。都市の倒壊危険家屋はバラック密集地改造政策の対象とする。

41、農村の倒壊危険家屋を、昨年より100万戸多い366万戸分改造する。農村家屋の耐震改修も一括で進める。

42、都市で仕事・生活しているがまだ登録をしていない他地方出身者に対しては、居住証に基づいて基本的な公共サービスを提供し、居住証の発行費徴収を廃止する。

43、財政移転支出と市民化がリンクする仕組みを作り、農民工(出稼ぎ労働者)の市民化のコストを合理的に分担する。

44、市制導入基準を整備し、特大鎮の権限の拡大・付与の試行を実施し、超大都市の人口規模を抑制し、地級市や県の中心地、中心鎮の産業と人口収容能力を高め、農民のより近くでの都市住民化を促す。

45、「1ベルト、1ロード」(シルクロード経済ベルト、21世紀海上シルクロード)の建設と地域の開発・開放を結合し、ユーラシア横断鉄道や陸海の通関地の建設を強化する。

46、京津冀(北京・天津・河北)の協同発展を推進し、交通一体化や環境保護、産業のバージョンアップ・移転などの面でまずは実質的な突破をはかる。

47、海洋戦略計画を作成・計画する。

48、「中国製造2025」を実施し、「革新駆動、スマート転換、基礎強化、グリーン発展」を堅持し、製造大国から製造強国への発展を加速させる。

49、行動計画「インターネット+」を制定し、モバイルインターネットやクラウドコンピューティング、ビッグデータ、モノのインターネットなどと近代製造業との結合を推進し、電子商取引やインダストリアルインターネット、インターネット金融の健全な発展を促進し、IT企業の国際市場進出を後押しする。

50、サービス業の改革開放を深化し、財政・税制・土地・価格などによる支援政策と有給休暇などの制度を実現し、観光・健康・介護・クリエイティブデザインなどの生活・生産サービス業の力強い発展をはかる。

51、科学技術成果の使用・処理と収益管理の改革を加速し、株主権と配当による奨励政策の実施範囲を拡大し、科学技術の成果の移転や職務発明に関する法律制度を整備し、革新人才が成果の収益を共有できるようにする。

52、誰もが起業できる環境を整え、国家自主革新モデル区を増設し、国家ハイテク区の建設を進め、革新要素の集合による牽引的役割を発揮させる。中小零細企業も役割は大きく、支援は欠かせない。「草の根」の革新を大いに盛り立て、各地で花を咲かせるようにする。

53、重大研究インフラと大型研究機器を社会一般に対して全面的に開放する。

▽国民生活と社会

54、今年の大学卒業生は749万人で、史上最高の人数に達する。就職指導と起業教育を強化し、大学卒業生の就業促進計画を実施し、末端組織での就職を奨励する。大学生の起業指導計画を実施し、新興産業分野での起業を支援する。

55、企業の退職者の基本年金の給付水準を10%高める。都市・農村の住民基礎年金の標準は55元から70元に引き上げる。

56、機関・事業機関の養老保険制度改革措置を実施し、同時に賃金制度も整備し、基層の労働者を助ける政策を取る。県以下の機関では、公務員の職務と職級の並行制度を設ける。

57、重大な疾病に対する医療救助を強化し、臨時救助制度を全面的に実施する。

58、農民工とともに都市に移り住んだ子どもの現地義務教育への受け入れ政策を実施し、後続する進学政策についても整備する。

59、一部の地方の大学の応用型への転換を誘導する。

60、1対1の支援などの方式を通じて、中西部の高等教育の発展を支援し、中西部地域と人口の多い省の大学合格率を引き続き高める。

61、都市・農村住民の基本医療保障を整備し、財政補助基準を一人毎年320元から380元に上げ、住民の医療費用の省内での直接決済をほぼ実現し、退職者の医療費用の省をまたいでの直接決済も着実に進める。

62、都市・農村住民の大病保険制度を全面的に実施する。

63、県級の公立病院の総合改革を全面的に展開し、地級市以上の都市100カ所で公立病院改革の試行を実施する。

64、医療トラブルの予防・調停の仕組みの構築を急ぐ。

65、一人当たりの基本公共衛生サービス経費の補助標準を35元から40元に上げ、増加分はすべて村医の基本公共衛生サービスの支払いに使うものとし、数億人の農民が近くで医療サービスを受けられるようにする。

66、基本公共文化サービスの標準化・均等化を一歩ずつ推進し、公共文化施設の無料開放の範囲を拡大し、基層総合文化サービスセンターの役割をさらに発揮させる。

67、2022年冬季五輪大会の招致を行う。

68、産業協会や商会と行政機関との引き離しを進める。

69、大衆組織による法に基づく社会のガバナンスへの参加を支援し、専門的な社会業務やボランティアサービス、慈善事業を発展させる。

70、民間の力による介護施設の発展を奨励し、コミュニティや自宅での介護を発展させる。

71、重大政策決定と社会の安定リスクの評価の仕組みを実現する。

72、「平安中国」の建設を深化させ、立体的な社会治安防御体系を整備し、暴力テロや売買春、賭博、麻薬、邪教、密輸などの犯罪行為を法に則って取締り、サイバー空間の発展と規範化を進め、国家の安全と公共の安全を確保する。

73、今年は、二酸化炭素の単位GDP当たりの排出量を3.1%以上減らし、化学的酸素要求量とアンモニア態窒素の輩出を2%前後減らし、二酸化硫黄と窒素酸化物の排出量をそれぞれ3%前後と5%前後減らす。

74、重点地域における石炭消費のゼロ成長を促進する。

75、重点地域の重点都市において国家第5段階排ガス基準の自動車用軽油を全面的に供給する。2005年末までに営業登録された排ガス基準を満たない車はすべて淘汰する。

76、水汚染の防止行動計画を実施し、河川・湖水・海水の汚染や水汚染源、農業汚染の対策を強化し、水源地から蛇口までの全過程の監督管理を実行する。

77、環境汚染の第三者によるガバナンスを進める。

78、環境保護税の立法事業を進める。

79、国土河川総合対策の試行を展開し、流域の上下流での当事者間での補償制度の試行を拡大し、三江源(長江、黄河、瀾滄江の源流)地域を保護する。

80、天然林の保護範囲を拡大し、天然林の商業用の伐採は適宜に禁止する。今年、耕作をやめて林地や草地に帰される地域は約67万ヘクタール、造林された土地は約600万ヘクタールを増加する。

▽政府建設

81、行政執行責任制を全面的に実施する。

82、基本公共サービスの提供にはできるだけサービス購入方式を採用する。第三者が提供できる事務的な管理サービスは市場または民間が担う。

83、政務の公開を全面的に実行し、電子政務とオンライン事務を拡大する。

84、権力のスリム化によってクリーンな政治を目指す。

85、腐敗行為に対しては、指導機関で起こったものも、大衆のそばで起こったものも、すべて厳しく罰する。

86、政治実績の審査評価制度を整備し、実績の優れたものは奨励し、仕事ぶりが振るわないものは発破をかけ、職務に就いているのに仕事をせずに怠けているものは公にして責任を追及する。

▽民族、宗教、華僑事務

87、民族地域の自治制度を堅持・整備し、発達していない民族地域への支援を強化し、人口の少ない民族の発展を後押しし、辺境の発展・振興行動を推進し、少数民族の優秀な伝統文化と特色のある村を保護し発展させ、各民族の交流と融合を促進する。

88、西蔵(チベット)自治区の設立50周年と新疆維吾爾(ウイグル)自治区の設立60周年の祝賀活動を行う。

89、宗教関係の調和を促進し、宗教界の合法的な権益を守り、宗教界の人々と信者の人々に経済社会発展を促進する積極的な役割を発揮させる。

90、祖国の近代化建設への参加や祖国の平和統一の促進、中国と外国の交流協力の推進など、海外の華僑同胞と帰国華僑が持つ独特な役割をさらに発揮させ、国内外の中華の人々の求心力をさらに高める。

▽国防

91、軍に対する党の絶対的な指導という根本原則を堅持し、各方面・各分野の軍事闘争の準備を全体として進め、国境防衛や海の防衛、空の防衛の安定を保つ。

92、近代的な後方支援業務の建設を全面的に強化し、国防研究とハイテク武器装備の建設を強化し、国防工業を発展させる。

93、国防と軍隊の改革を深化させ、国防と軍建設の法治化の水準を高める。

94、近代化された武装警察の建設を強化する。

▽香港・マカオ・台湾

95、香港・澳門(マカオ)特別行政区の行政長官と政府の法に基づく施政を全力で支援し、経済を発展させ、国民生活を改善し、民主主義を推進し、調和を促進する。

96、「九二共通認識」の堅持と「台湾独立」の反対という台湾海峡両岸の政治的土台を堅持し、両岸関係の平和発展という正しい方向を維持する。両岸の協議や対話の推進や経済の相互利益・融合の推進、基層と若者の交流の強化に努める。

▽外交

97、国家の主権・安全・発展の利益を断固として守り、中国の国民と法人の海外での合法的な権益を守り、協力・ウィンウィンを中核とする新型の国際関係の構築を推進する。

98、各大国との戦略対話と実務的な協力を深め、健全で安定した大国関係の枠組みを構築する。

99、周辺外交を全面的に推進し、周辺の運命共同体を形成する。発展途上国との団結と協力を強化し、共同の利益を守る。

100、世界反ファシスト戦争と中国人民抗日戦争勝利70周年を記念する関連イベントを行い、国際社会とともに第2次世界大戦の勝利の成果と世界の公平正義を維持する。(編集MA)

 

 「人民網日本語版」2015年3月6日

 

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