中国外交の「ソフト」と「ハード」

 

中国の王毅外交部長の8日の記者会見では、王部長の親しみやすい一面が見られた。中国で最近はやっている引用符のジェスチャーを2度作ってみせたほか、多くの名言や俗語も引用した。堅固な立場を柔らかい言葉で表した王部長は、「ハード」と「ソフト」のバランスの取れた外交姿勢を示していると言える。

外交は大事業であり、ある種の強硬さが必要となる。中国の核心利益や重大な関心にかかわる件について、王毅部長はしっかりと、気骨のある答えをしてみせた。中日歴史問題については、「70年前、日本は戦争に負けた。70年後の今日、良識を失うべきではない」と語った。南中国海の島での中国による建設工事の展開については、「合法的で合理的な事であれば、私たちは行う権利を持っている」とした。

外交が持つ「ハード」な一面を見て、「ソフト」な外交の効果には限りがあると考える人もいる。だが王毅部長の回答を分析すると、発言には「ソフト」な戦略を用いながら、立場や原則の伝達においてはまったく譲ることなく、的を射た答えをしていることがわかる。

戦略1:流行語の借用。中国の外交成果について王毅部長は、中国の「朋友圏」(友だちの輪)はますます拡大し、良い友だち、良いパートナーが増えていると語った。「朋友圏」は、SNS時代の流行語だ。

戦略2:広告キャッチフレーズの借用。王毅部長は、世界領事保護緊急コールセンターの12308ホットラインについては「トラブルがあったらすぐ12308」、ビザ発給の便利化の問題については「行きたくなったらすぐ行ける旅行を」と語ったが、いずれも人々がよく知る広告キャッチフレーズを借用したものだ。

戦略3:先人の言葉の引用。日本がいかに歴史問題に向き合うべきかについて、王毅部長は、先人にあたる中国の外交官の言葉を引用し、「加害者が加害の責任をしっかりと忘れなければ、被害者の受けた傷がいえる可能性は高くなる」として、中日間の心のしこりを解く責任を日本に預けた。

戦略4:絶妙な比喩。「1ベルト、1ロード」(シルクロード経済ベルト、21世紀の海上シルクロード)戦略について語った際には、中国だけの「独奏曲」ではなく、各主体が共同で参加する「交響楽」であるとし、関係国家の不安を音楽の比喩で打ち消した。また「ほかの人の敷地に出向いて違法建築を建てるようなことはしないが、自分の敷地で工事をしている時に人からあれこれ言われることは受け入れられない」とし、南中国海の複雑な情勢を説明すると同時に、中国の立場をはっきりと伝えた。

中国外交は近年、これまで通りの「ハード」な立場を保つと同時に、「ソフト」な表現にも気を配るようになってきた。中国首脳は多くの場面で「ソフト」戦略で勝利を収め、予期した効果を上げている。

習近平主席の外交手腕は深い印象を与えている。海外訪問にあたっては、署名入りの文章を何度も寄稿し、「文章外交」のカードを用いている。外交活動の場所も多元化し、中米首脳の会合場所には北京の瀛台(えいだい)やカリフォルニアのアネンバーグ邸が選ばれた。外交スピーチには様々なエピソードが散りばめられ、訪問国の故事を引用して現地の人々の好感を得た。

英語に精通する李克強総理は、交流しやすさと親しみやすさで海外メディアの評判が特に高い。昨年の欧州訪問では、ドイツのメルケル首相とスーパーに立ち寄り、ロシアのメドベージェフ首相にはサッカーボールを贈り、イタリアのレンツィ首相とは美食を語るなど、親しみやすい外交スタイルを遺憾なく発揮した。

「国の交わりは民の親しみにある」。「公共外交」が呼びかけられる現在、外交の「ハード」と「ソフト」のバランスを取ることの重要性はますます高まっている。中国も、外交の理論・実践・形式の革新を進めている。

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年3月9日

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