あいまいさ残す「安倍談話」

 

中国社会科学院日本研究所副所長 高洪

高洪(Gao Hong)

1955年2月、遼寧省瀋陽市生まれ。93年に中国社会科学院大学院を修了。哲学博士。中国社会科学院日本研究所副所長。専門分野は日本の政治と中日関係。

2015年8月14日、日本の安倍晋三首相は慣例に従い、歴史解釈と現実への理解、今後の国家発展の道筋を示す「安倍談話」を発表した。今回の「談話」は、表から見れば、「侵略」「植民地支配」「反省」「おわび」などのキーワードを使い、過去の「村山談話」「小泉談話」を引き継いだように見えるが、文章の一部に、あいまいなごまかし表現が隠されており、今後の解釈変更にいささかの余地を残してしまった。今回の「安倍談話」は主に以下の3点を明らかにしたと筆者は考えている。

第1に、侵略戦争の被害国として、中国は歴史の真実をきちんと整理し、今の日本政府に過去の邪悪な軍国主義とはっきりけじめをつけるよう求め続けてきた。今回の「安倍談話」を受けて、中国がこの立場を堅持してきた正当性と必要性が証明された。

安倍首相は最初「侵略戦争」という表現を使いたがらず、謝罪するかどうかという問題をごまかそうとしていた。戦略派政治家として、融通がきき、柔軟性がある人柄を有する安倍首相は、今「機会主義」の応変さで一時的に「修正主義」という本当の姿を隠している。安倍首相が本意に沿わない談話を発表したのは、戦争被害国の政府と民衆が安倍氏の「皇国史観」と「大東亜戦争肯定論」に対し、たゆまず対抗してきた結果だ。これらの働きかけによって、最終的に日本国内の諸政治勢力が喚起され、国際社会で安倍首相の「歴史修正主義」を批判する風潮が形成された。内外から圧力を受けた安倍首相は、公然と歴史を後戻りさせる「最終文書」の選択を避けることを余儀なくされた。この一連の推移は、日本社会に歴史の真実を混乱させる極右勢力がまだ存在している中で、歴史事実を守ることが今日の平和を守ることそのものであり、歴史認識問題をめぐる戦いを止めてはいけないことをはっきり伝えた。

第2に、安倍首相は各界の圧力を受け、本人の誤った歴史観をやや譲歩し、今回の「談話」に妥協したが、「村山談話」「小泉談話」に比べれば、簡潔さや明快さを欠いている。ここから、安倍首相の誤った歴史観は根本から変わっていないことが読み取れた。日本を戦後体制から脱却させ、最終的に平和憲法の修正を目指している安倍首相は、日本が近代において歩んでいた侵略拡張の道に対し、いまだに「誇りに思い、未練がましい」姿勢を取っている。1995年8月、当時の村山富市首相は、有名な「村山談話」を発表し、簡潔な表現で過去の侵略戦争への反省を明確に表明し、戦争によって多大な被害を蒙ったアジアの人々に真摯におわびしたことは、まだ人々の記憶に残っている。今日の安倍首相は、民意に公然と逆らえず、米国や連立政権内部穏健派からの意見を直接的に断れないという政治的思惑があって、このような機会主義の色彩を帯びた「談話」を発表したわけだ。この点から見れば、「安倍談話」と「村山談話」には距離がある。

第3に、「安倍談話」には「情勢によって譲歩を迫られた」ことと「言葉を操り、事実をごまかした」という二重性があるため、われわれは「有言実行」を強く求めなければいけない。

われわれは、何びとたりとも歴史を編集し、切り裂き、葬り去るのを許すことはできない。今日、われわれはその言葉を耳にし、明日、世界全体が安倍首相率いる日本の行動に注目するはずだ。まさにその意味において、世界の人々が安倍首相がいかに日本の昨日歩んだ道を定義し、今後日本をいかなる方向に向かわせるのかを極めて注視している。そして、この問題の答えは、安倍首相本人とその政府が将来に実際の行動をもって示すしかないのだ。

 

 

人民中国インターネット版 2015年8月28日

 

 
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