和解には加害認識も必要

 

張雪=文 

湯重南氏
安倍晋三首相は8月9日、長崎市で行われた被爆70周年長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に出席した。安倍首相はあいさつの中で核兵器による惨禍に言及したが、日本の侵略の歴史には触れなかった。日本政府および一部の政治勢力の第2次世界大戦をめぐる歴史認識問題、そして平和憲法改正をたくらむ言動について、中国日本史学会名誉会長の湯重南氏は不満と憂いを示す。

侵略否定は日本にマイナス

第2次世界大戦では、数百万人の日本人が戦場で死亡した。東京などの大空襲や広島、長崎への原爆投下によって数十万人の一般市民が命を落とした。また国内経済は破綻し、国民は生活の手だてを失った。こうして日本は自分も戦争の被害者だと繰り返し主張するようになった。これに対し湯氏は次のように考える。日本はまず自分が加害者だったと認識しなければならない。これが基本的な歴史認識であり、戦後の「国連憲章」とほかの国際的な文書はすでに大戦の性格について結論を出している。日本軍国主義が侵略戦争を発動したという前提がないなら、日本国民もあのような災難に遭うはずはなかった。

1940年に重慶で生まれた湯氏は1942~1944年の重慶大空襲を今もぼんやりと覚えている。当時まだ幼かった彼を抱いて空襲を避けた恐ろしい経験を母親は何度も教えてくれた。湯氏は「第2次世界大戦中、多くの日本国民が軍国主義によって戦争に巻き込まれ、軍国主義思想による支配の下で他国の人々に大きな災難をもたらし、戦争の進展に伴って彼ら自身も被害を受けた。もし一方的に日本は戦争の被害者だと強調するなら、誰が戦争の発動者、加害者になるのか」と疑問を呈する。

湯氏が幼いころ遭った空襲について、元早稲田大学総長の西原春夫氏はかつて湯氏に「私はあなたに深くおわびしたいと思います。重慶爆撃の後、私はお祝いのちょうちん行列に参加しました。当時はまだ子どもでしたが、今思い出すとそれはやってはいけないことでした」と話した。この言葉は湯氏に感銘を与え、永遠に心に刻まれた。西原氏は日本軍国主義の罪に責任を負う必要はない。しかし、湯氏は歴史に向き合う彼の正しい姿勢から日本の人々の善良で正義にかなった一面を見た。

日本が戦後に「平和憲法」を制定し、70年にわたって平和的な発展の道を堅持してきたことは評価に値する。平和の下で日本の経済は急成長し、国民は落ち着いて楽しく生活し働けるようになった。しかし、日本社会の一部の政治勢力は歴史の定説と戦後の国際秩序を受け入れることに甘んじず、さまざまな手段を利用して侵略の罪を否定している。彼らは平和憲法の改正と集団的自衛権の行使容認をたくらみ、「再軍事化」の道を歩もうとしている。「彼らの言動は当然、かつて日本に侵略された国々の不満と警戒を呼び起こすだろう。アジア太平洋地域に不安定要素をもたらすだけでなく、平和国家としての日本のイメージも崩れてしまう」と湯氏は指摘する。

日本は正義と平和の堅持を

戦中と戦後、日本の数多くの有識者は正義と戦争反対の主張を堅持し、正しい歴史的選択を下したと湯氏は語る。彼らの物語は中国でも多く紹介され、中国の人々にも尊敬されている。

1940年初頭、コミンテルン(共産主義インターナショナル)日本代表の野坂参三氏は中国で中国共産党の活動に協力した。野坂氏は延安で日本人反戦同盟延安支部を設立し、戦場で反戦思想を広め、日本軍国主義の邪悪な本質を暴き出した。また軍国主義の犠牲になるのをやめて反戦運動に関わるよう多くの日本兵を目覚めさせた。彼らは正義が邪悪に打ち勝つ戦いの中で功績を立てた。

著名な画家の丸木位里・丸木俊夫妻は戦後、人心を揺さぶる大型作品「原爆の図」「南京大虐殺の図」を制作し、戦争の原因と結果を生き生きと映し出した。「私は『原爆の図丸木美術館』でこれらの作品を見て、深く魅了された。丸木夫妻は正義感と人類の良識を備えた芸術家だったと思う」と湯氏は称賛する。

田上富久長崎市長は平和祈念式典で「平和宣言」を読み上げた際、戦争の記憶が急速に失われつつあると危機感を示し、「被爆体験だけでなく、アジアの多くの人々を苦しめた悲惨な戦争の記憶を忘れてはなりません」と呼びかけた。日本には現在、歴史を正視する人たちが大勢いて、彼らの姿勢は歴史にも未来にも責任を負っているのだと分かる。

中国は正義と平和を堅持する日本の人々を一貫して歓迎している。「習近平国家主席が5月、日本の3000人訪中団と会見して指摘したように、中日両国の友好の基礎は民間にある。最終的には中日両国の人々はより適切にこの歴史に向き合えるようになり、人々の目覚めに伴って中日の徹底的な和解の時代が必ずやってくると私は信じている」と湯氏は語った。

 

人民中国インターネット版 

 

 

 

 
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