ジョセフ・ナイ氏「米中はトゥキディデスの罠を回避できる」

 

著名な国際関係学者で、ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授は16日、人民日報記者の単独取材に応じ、「米中は各分野での交流を強め、客観的かつ理性的に相手と向き合うことで、『トゥキディデスの罠』は回避できる」と述べた。人民日報が伝えた。

 新興大国と既成大国は必然的に衝突するという歴史的事実を前に、中米関係もこの「トゥキディデスの罠」に陥るのではないかという見方が浮上しているが、これに対しナイ教授は、「米中が歴史と同じ道を辿ることはない。中国は国際秩序の建設的な参加者であり、国際秩序の充実を望んでおり、それに挑戦することはない」と述べた。

 ナイ教授によると、アメリカ国内では一時期中米関係に関する様々な議論が巻き起こり、アメリカは衰退するのか、中米関係はどう発展していくのかといった問いに注目が集まり、両国間の競争と衝突は回避できないのではないかという懸念を示す人もいた。中国問題の専門家ランプトン教授は、「臨界点」という言葉で目下の中米関係を形容しているが、「彼の観点は見識に溢れているものの、『臨界点』という表現は少し行き過ぎており、米中関係は相互理解を深めることで衝突を回避することができる」とナイ教授は考える。

 「トゥキディデスの罠」についてナイ教授は、ぺロポネソス戦争が勃発したのは、日増しに力をつけるアテネを前に恐怖心を拭えなかったスパルタとの間に戦争が起きてしまったためで、現在の中米関係はアテネとスパルタの関係とはまったく異なり、同様に扱うことはできないと語る。「現在米中両国の各レベルでの往来はますます増え、中国人観光客や留学生も両国と両国民の相互理解に貢献しており、知らぬがゆえに恐怖に陥るということはない。そのため、米中両国は『トゥキディデスの罠』を完全に回避することができる」と指摘した。また、中国が国際問題においてより重要な役割を発揮することが、アメリカの役割を削ぎ落とすゼロサムゲームだとする見方があるが、それは愚かだとも指摘する。「例えば、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立当初、他国の参加に反対した人がいたが、幸いオバマ政権がAIIB政策の調整を図った。TPPでは中国さえ意欲があれば、中国の加盟は今後いつでも歓迎されるだろう」

中米関係に存在する問題についてナイ教授は、両国の経済・貿易・人的、文化分野の交流は絶えず深まっているものの、相互理解と相互信頼に欠けているため、そこから生まれる問題が多くあるとしている。その上でナイ教授は、米中のサイバーセキュリティー分野における意見の食い違いは、相互信頼の欠如の表れであるということができ、この分野での協力を増やし、余計な疑いを減らす必要があり、「米中は交流を強め、客観的かつ理性的に相手と向き合う必要がある」と指摘した。

 また、中国は絶えず発展しているが、アメリカには依然独自の優位性があり、焦る必要はないとナイ教授は考える。中国は脅威としてアメリカ国民や専門家に誇張されることも多いが、誇張や中国の発展を貶めるやり方は間違っている。中国経済の発展は実際には一種の「回帰」であるとする必要があり、歴史的背景や中国の発展段階をより長いスパンで考慮しなければ、中国の発展に対し過剰な反応をしてしまうことになると述べた。

 国際関係における権力の移転についてナイ教授は、国家間の権力の移転や政府と国際組織、非政府組織間の権力の移転は正常な現象で、順応するということを学ばなければならないと指摘した。(編集IM)

 

 「人民網日本語版」2015年9月17日

 

 

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