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良い「隣人」であるには

 

吉崎 晴香

  

中国は様々な意味を含む「隣人」である。

地理的な「隣人」―以前上海へ旅行に行った際、飛行時間の短さと運賃の安さに驚愕した。今まで報道の中でしか見て、聞いたことがなかった中国という国の中に、こんなにもすぐに、簡単に入ることができるのだと実感した。

競争相手としての「隣人」―些細な出来事に関する中国国内でのニュースを見てみると、頻繁に「日本」という文字が目に入る。同じアジア圏だということも影響しているだろうが、よく日本を引き合いに出して物事を比べることが多いと感じる。日本に対するライバル意識だけではなく同胞としての意識もあるのではないかと思う。GDPや経済的にはすでに中国の方が上をいっているが、これらの面以外でも日本を意識していると思うと、何だか少し嬉しくなった。

文化的な「隣人」―周知の通り、漢字を意思疎通の手段として用いているのは、ほぼ日本と中国だけと言って良いだろう。中国語を勉強していると、発音は分からずとも何となく意味が分かる文章に遭遇することがある。こういう時、中国と日本の近さを実感させられる。また、最近では日本のアニメや漫画に興味を持って日本を訪れたり日本語を勉強したいと思う中国人が多かったりすると感じる。もちろん今や中国だけではなく様々な国の人々がアニメや漫画に興味を持っているが、特に中国人が多いのは、こういった「近さ」も関係しているのではないだろうか。

歴史的な「隣人」―日本と中国は、古代から現代に至るまで、常に何らかの関わりを持って来た。それはある時は良い関係、ある時は悪い関係であったが、やはり一番現代に影響を残しているのは、日本が中国を侵略し始めた近代から現代にかけての戦争ではないだろうか。今の政治的、領土的な対立は、この戦争を発端としていると言えると思う。長い間共にアジアの歴史の一部を作ってきたからこそ、「隣人」より「優越」していなければならないという論理が働いたのかもしれない。

以上のように、中国と日本は切っても切り離せない関係の中にある「隣人」なのである。過去でも「隣人」であり続けたし、これからも「隣人」であり続けるはずだ。今現在の日中関係は歴史的に見て特別に悪いというわけではない。しかし、より良い関係を築き、それを継続していくのに今欠けていると思われるのは、日中相互の信頼と尊重だと思う。互いを信頼することで見えてくるものはたくさんあると思うし、尊重することで気付き直すこともたくさんあると思う。信頼し尊重した結果、相手の長所、短所が顕著になり、そこを理解した上でうまく付き合っていく道を見出すのが大切だと思う。

こう考えたとき、私はこういう考え方は、組織の中での良い人間関係の作り方と似ているのではないかと気づいた。「国と国の関係」ではなく「人と人との関係」の延長だと考えればうまくいくのではないか。国と言っても結局は大勢の人の集まりであり、国を動かしているのも人間である。今自分がこういう行動をしたら相手はどう思うか、相手にこういう行動をされたら自分はどう思うかー日常生活で考えられていることを少しだけ拡大して考えてみればよいのではないだろうか。

 

人民中国インターネット版 2016 年2月

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