シルバー市場に海外も注目

高原=文

中国は21世紀の初めから高齢化社会に入り、現在は高齢化の加速が進む時代にある。昨年のデータによると、60歳以上の高齢者は2億1200万人に達し、総人口の15・5%を占めている。予測では、今世紀半ばには高齢者人口はピークを迎え、4億人を上回って国民3人に1人が高齢者になるとされている。高齢化の加速とともに、核家族化もまた一層進んでおり、以前のように在宅で老後を過ごすモデルはますます維持するのが難しくなり、社会による高齢化対応が大きな流れとなっている。

こうした中、多くの企業や民間資本がシルバー産業に参入しており、政府もシルバー産業への支援を強化しながら、年金積み立て不足問題の解決に乗り出している。

──変わる公立ホームの位置付け

長い間、中国では高齢者が老人ホームへの入居を考える場合、まず公立老人ホームを選んできた。公立には政府の補助金があり、費用が安く、医療に関する設備やサービスが充実しているため、信頼されてきたのだ。しかし、近年では従来とは異なり、公立老人ホームのサービス理念の立ち遅れや効率の低下、政府補助金頼みの体質、経営意識の低さなどの問題がますます目立つようになっている。

2013年、国務院は「高齢者サービス業発展加速に関する若干の意見」を発表した。その後、民政部(総務省に相当)が中心となり、各地で公立老人ホーム改革の試行が始まった。北京市で高齢者サービスに長く携わってきたある専門家は、高齢者福祉施設の市場化が将来の発展において目指すべき方向だと指摘する。目下のところ、高齢者福祉施設改革が最も抜本的に進んだ地域は浙江省杭州市だ。全ての高齢者福祉施設で市場化運営を実現しているが、北京市の改革の歩みは比較的慎重だ。同市は民間による高齢者福祉施設の建設を奨励しながら、一部の公立施設では「公建民営」を試行している。

公建民営とは、政府が老人ホームの敷地や各種ハードと設備を提供し、民間企業に運営を委託する方式だ。これまで民間企業がシルバー産業に進出する際、施設の敷地確保が困難で地価が高いため、投資回収期間が長くなって採算が取れないことが最大のハードルになっていた。しかし、公建民営方式を採用すれば、運営側の投資回収期間が大幅に短縮され、民間資本のシルバー産業参入を後押しすることができる。

専門家によれば、現在北京市には専門高齢者福祉施設が500カ所余りあるが、民間と公立がそれぞれ半分を占めているという。また、公立施設の半分では公建民営が試行されているため、今後、公立の高齢者福祉施設の数は減少していくだろう。改革が達成されれば、公立の高齢者福祉施設は主に低所得、身寄りがない、生活に困っている家庭の高齢者、または社会に特別な貢献をした高齢者に対するものとして、底辺を支える役割を果たすようになっていくだろう。そのほかの高齢者に対しては、自宅で老後を過ごすこと、訪問介護サービスの利用、市場化した民間老人ホームへの入居を奨励していく。

──保険、不動産業界が先手

欧米諸国では、高齢者福祉施設建設に最も多く投資しているのは保険会社や不動産会社だ。現在の中国も例外ではなく、中国人寿保険、新華人寿保険、泰康人寿保険などの保険会社や万科企業、大連万達グループ、保利集団などの不動産会社に加え、多くの大手国営企業も投資している。今後、大きな発展が見込まれるシルバー産業で先手を打とうとしているのだ。

中国人寿保険で長年シルバー産業の投資に携わってきた徐標さんは次のように説明している。「今、企業が高齢者福祉施設建設への投資を行うのは、その施設でもうけようとしているからでは決してありません。今の状況から見ると、経営がうまくいっている老人ホームでも利益が出るには短く見積もっても15年が必要です。企業が注目しているのは、老人ホームのバックにあるシルバー産業チェーンなのです。この産業チェーンは高齢者の衣食住全てを含みます。例えば高齢者の飲食、車椅子や歩行用具、ユニバーサルデザインの食器など高齢者用具から、高齢者向け観光などまでです。これらの豊富さは不動産に関する産業チェーンにも全く引けを取りません。高齢者福祉施設はその一部に過ぎません。企業が高齢者福祉施設を運営するのは、それを糸口にシルバー産業全体に進出したいからなのです」

14年に初めて発表された「中国シルバー産業発展報告」によると、今後5~10年の間に、中国はシルバー消費の最盛期を迎える。1940~50年代生まれの人々は働き盛りの頃に改革開放の恩恵を受け、ある程度の財産を築いている。また老後に対する意識はかつての人たちとは異なり、子どもに頼る老後を期待しておらず、定年退職後には第二の人生を楽しみたいと考えている。この世代が高齢者の仲間入りをすると、大きな消費力になると見込まれている。徐さんは「現在、誰もがこの市場に期待しています。将来の高齢者消費の成長は必ず起こります。これは第2子出産の完全自由化後に乳幼児関連の消費成長が確実なのと同様です。高齢者が安心して消費できるように政府が高齢者福祉をしっかり保障できれば、この市場は爆発的な成長が見込めるでしょう」と話している。

 

 

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