貧困脱出は最終ステップへ

 

王浩=文

多くの国家、そして国際機関がさまざまな方法を駆使して貧困問題に取り組んでいる折、世界最大人口を持つ発展途上国の中国は、今年に入るとすぐに貧困撲滅の号砲をあらためて鳴らした。中国政府は今後5年間で、現行の基準に従ってあらゆる地域的貧困問題、つまり農村部の貧困層全てを貧困から救い、全貧困県の「レッテル」を剥がすと宣言したのだ。この目標は7017万人が対象となるため、政府にとって一つの大きな目標であると同時に大きなチャレンジでもある。

──7000万人が対象

新中国成立以来、政府は国民の生活改善をするために貧困撲滅を常に重視してきた。特に改革開放後の三十数年来、中国の経済は急成長を遂げ、国民の生活レベルは著しく向上した。系統的で計画的な公的貧困対策事業を大々的に行い、6億6000万人の貧困脱出を実現させた。2011年、政府は国民経済発展レベルの高まりに応じて、1人当たりの年間所得2300元(約4万2000円)を新しい貧困ラインとした。その後、14年までにさらに5221万人を貧困から救済した。現在、中国の農村部には7017万人の貧困層が存在し、592県が貧困県とされているが、そのほとんどが中・西部に集中している。

昨年10月末、北京で開催された5中全会では小康社会を全面的に実現する20年には、農村部の全ての貧困層を貧困から脱出させ、全ての県を貧困リストから外れるようにすると提起した。5年間で7017万人ということは、毎月100万人以上を貧困から脱出させなければならない計算だ。これは重要であると同時に大変困難な任務でもある。その後ほどなく、中央貧困扶助・開発活動会議において習近平国家主席から以下のようなさらに踏み込んだ解釈が加えられた。それは「第13次5カ年計画期間における貧困脱却の目標は、農村部貧困層の衣食問題を解決するとともに、義務教育、基本的医療、住居の安全を保障することだ。そして、貧困地域の農民1人当たりの可処分所得伸び率を全国平均以上にし、基本的公共サービスの主要な指標が全国平均に近づくようにすること」というものだ。そしてまた、習主席は「(貧困の救済)事業は全ての貧困地域と貧困層を対象とし、決して取りこぼしがあってはならない」と強調している。

昨年5月25日から27日まで、習近平国家主席は浙江省を視察・調査した際、舟山定海区干礷鎮新建設コミュニティーを訪れ、現地の人々の熱烈な歓迎を受けた(新華社)

中国国務院貧困対策弁公室の劉永富主任はメディアに向け、「時間的余裕はなく、任務もとても重要だ。現在残っているのは難題ばかりだ」と、公的貧困対策事業の現状を説明した。劉主任によると、中国の貧困層が分布するほとんどの地域は、インフラや貧困脱出条件があまり整っていないという。長年の貧困緩和事業を経て、現在残されているのは全て比較的解決が難しい問題ばかりで、公的貧困対策事業はまさに正念場を迎えているという。政府は期限内に目標を実現させるため、すでに支援を拡大し始めている。公的援助の方法について中央政府は、各地の実情に応じた事業を展開し、生産と雇用の援助、他地域への移転手配、医療救護の提供、最低生活の保障などによって、地域の貧困問題を徹底的に解決するよう求めた。

現在、中央から地方まで、多くの政府責任者が全力を挙げて公的貧困対策事業に取り組んでいる。

──精密かつ正確な対策

河南省鞏義市公的貧困対策弁公室の張金旗主任は、「精密かつ正確な貧困対策」という言葉を毎日のように口にしている。今年に入ってから、張主任は同市における公的貧困対策事業のリーダーの一人として、極めて重大な任務を負った。同市は河南省の中部に位置し、省都の鄭州市から車で30分ほどだ。同市の経済基盤は悪くはなく、特に工業生産高は河南省の中でも上位にある。しかし、山地・丘陵地帯にあるため、自然資源に乏しく、山間地域で生活する一部農民の収入は依然として貧困ラインを下回っている。こうした地域の人々をいかに貧困から脱出させるかが、張主任を中心とした公的貧困対策弁公室が重点的に取り組んでいる課題だ。

「少し前に私たちが国と省の貧困ライン基準を基に市内の貧困層について詳細に調査を行ったところ、貧困家庭は2819世帯、9014人に及びました。その多くが山間地域で生活している人々です。今年、市では全市民の貧困救済を目指します」。張主任によると、全貧困世帯の基本データを記録し、各貧困世帯の状況に応じて貧困対策事業を行うことが責任者に要求されているという。つまり、国が要求する「精密かつ正確な公的貧困対策」政策を、全ての貧困世帯に対して着実に実施するということだ。

「精密かつ正確な公的貧困対策」は、政府が公的貧困対策事業の質を向上させるために打ち出した新しい要求だ。この概念は習主席が13年11月に湖南省で視察をした際に提起したものだ。この「精密かつ正確」とは、投入は大きいものの効果が上がらなかった、かつてのいわゆる「粗放型」の公的貧困対策の方法を改め、各貧困地域の環境と貧困世帯の状況に応じた貧困救済策を実施することを指す。「精密かつ正確な公的貧困対策とは、全ての貧困世帯に対して個別的な対策を着実に行うことです。そのために人員を割いて貧困家庭に派遣し、実態調査をしました。市、鎮、村が協力し、努力を重ね、今年中に全市の貧困世帯を貧困から脱出させます」と張主任は力強く話している。

 

 

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