貧困脱出は最終ステップへ

 

 

──1本の道路から状況打開

鞏義市の管轄下にある小関鎮の南嶺新村は市南部の山間にあり、806世帯2700人が生活している。山深く耕地はわずか、鉱物資源もないため、以前から貧困対策の重点対象地域とされてきた。ここ数年、鞏義市の公的貧困対策・開発事業の成果が表れており、この貧困村にも変化が生じるようになった。

鞏義市から南嶺新村まで続く舗装路がある。同村の李国振党支部書記によると、この道路は昨年開通したばかりだという。この道路ができたことで村民の外出は以前よりずっと便利になった。地元の人々はこの道路を「観光道路」と呼んでいる。今後、都市部からこの道路を通って観光客が来るようになり、村の観光業が盛んになることを願っているからだという。

村に入ると、道路の起伏に沿って山中に点在する農家を見ることができる。多くのれんが造りの新しい住宅が並ぶが、古い石造りの住宅も混在しており、その様子から村の変化をうかがい知ることができる。李書記は同村の厳しい過去の暮らしを次のように語っている。李書記が02年に村の党支部書記に選出された時には、まともな道路が1本もなかった。ほとんどの村民は石造りの住居で生活しており、雨の日には山を下りることもかなわなかった。当時、村民1人当たりの年間収入は600元(約1万円)にも満たなかった。このような劣悪な条件の下、村外からこの村に嫁ごうという女性は一人もおらず、村の男性は結婚相手を見つけることもできなかった。貧困がこの村の人々にとって最大の悩みだったのだ。

米河鎮明月新村では200戸近い家庭が近代的な住宅に引っ越した(写真・馮進)

このような村の状況を打開するために、李書記は村民委員会のメンバーを率いて各地を奔走し、さまざまな打開策を探った。まず解決すべきは交通の問題だった。「豊かになりたければ、まずは道路を造るべき」で、李書記および村民委員会のメンバーは何度も鎮や市の公的貧困対策関係機関を訪ね、政府による支援を求めた。その後、李書記自ら先頭に立ち、3万元(約55万円)を寄付した。そして、村民委員会メンバーの各1万元(約18万円)の寄付と政府からの補助金を加えることでようやく道路を造る費用を工面できた。村民委員会の呼びかけの下、全村民が道路建設に参加した。「道路が自宅の前にまで引かれることを思い、みんなの意欲は高まりました。道路を造る際に一部の農家の敷地に影響が出ましたが、不平を言う者は誰もおらず、自主的に引っ越してくれました」。村全員の努力の下、村の道路事情は大幅に改善された。

道路のほかに、飲用水の問題もまた長い間南嶺新村の村民を悩ませてきた。数年前まで、一部農家の飲用水は消防車で山の上にまで運んでいた。そこで、李書記は村民委員会のメンバーと共に資金を調達し、村民に飲用水を提供するための貯水池を建設した。数年の間に、同村には三つの貯水池が建設され、多くの村民の家に水道が通った。今年1月、市政府の公的貧困対策関連機関の支援の下、四つ目の貯水池建設が始まった。「この貯水池が完成すれば、飲用水問題は完全に解決します」と李書記は話している。

インフラが改善されると、村民委員会は村民の増収という課題に積極的に取り組み始めた。しかし近年、村内で環境保護のために耕地を林に戻す事業が展開され、耕地はさらに減少した。このため、村民委員会は経済作物の栽培を指導した。調査・研究を通じて、同村の土壌や気候はクルミの栽培に適していることが分かり、村民委員会は良質なクルミを農民に植えさせた。数年にわたる努力の結果、村内のクルミ栽培面積は3400ムー(約230㌶)に達した。これだけで、村民1人当たりの年間収入は600元増加した。そのほか、李書記は病人のいる家庭や学費捻出のために貧困状態に陥ってしまった家庭への寄付金を募ったりした。また、村民の就業率を向上させるために、調理や養殖技術の訓練の場を提供するなど、さまざまな方法で村民全員が豊かになるよう、積極的に取り組んでいる。

各方面が力を合わせて努力した結果、ここ数年、村民のほとんどが貧困からの脱却を実現させた。「現在、貧困世帯はわずか44世帯です。そのうちの11世帯は働き手が1人もいない家庭なので、全て低所得保障対象の世帯としました。その他の貧困世帯についても、それぞれの状況に応じて個別に対策を行っています」と李書記は言う。

──村を丸ごと引っ越し

この南嶺新村と比べ、同じ鞏義市管轄下でも米河鎮の明月新村はまた事情が異なっている。この村はかつて「(市街地から)最も遠く」「標高が最も高く」「収入が最も低く」「面積が最も広い」という「四つの最も」が特徴的な場所だった。そしてこの村の250余世帯は全て貧困ライン以下の生活を送っていた。特に居住条件が悪かったため、政府の公的貧困対策機関の検討を経て、貧困脱却のために村を丸ごと引っ越しさせることになった。

馬樹忠党支部書記によると、この大掛かりな移住事業は11年から計画された。政府は世帯ごとに4万5000元(約82万円)の補助金を支給した。鎮政府は移住先の土地を取得して8棟の住宅を建設し、1平方㍍1000元(約1万8000円)前後の価格で村民に販売した。こうして昨年末までに、200世帯近くが引っ越しを終えた。新しい村は米河鎮の市街地に近く、山を下りた村民たちの大部分が仕事を得た。「新しい住宅に引っ越したことで、生活条件が大幅に改善されました。以前は、多くの住宅が古くて傷んでおり、夏は雨漏りし、冬は非常に寒かったのですが、新しい家を建てるお金はありませんでした。村民は政府の事業によって新しい住宅に移り住み、貧困状態から完全に脱却しました」。馬書記によれば、村民委員会は市場化によって投資を呼び込み、以前人々が住んでいた村の整備と観光開発を行う計画だという。これが成功すれば、村の経済はさらに改善される。

南嶺新村と明月新村は鞏義市による公的貧困対策事業の代表例であると同時に、現在の中国における公的貧困対策事業の縮図でもある。ここ数年、中国の公的貧困対策事業は多くの成果を上げた。農民の多くは貧困状態から抜け出し、生活は大きく改善された。国と各地方政府はインフラへの投資以外にも、例えば、農民向けの小口ローンの積極的実施、農民家庭向け奨学金制度の確立など多くの政策や手法を打ち出している。「精密かつ正確な貧困対策」の段階的な実施に伴い、中国は全面的な貧困撲滅という目標に向かってまい進している。

 

人民中国インターネット版

 

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