チャンスと試練:第13次5カ年計画

 

アシュラフ・サイード・ムハンマド

 

アシュラフ・サイード・ムハンマド:エジプト駐ヨルダン報道担当参事官、エジプトピラミッド戦略研究センター研究員、エジプトニュース総処政治研究員。

 国際社会が中国の「第13次5カ年計画(13・5)」を非常に重視するのにはとても多くの理由がある。中国は世界第2の経済大国であるだけでなく、世界経済発展の重要なエンジンの一つでもあるからだ。今年10月、中国の人民元は正式に国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)バスケットの構成通貨に採用される。一方でこの1、2年、中国は経済発展の減速段階に入っている。また世界一の人口を持つこの国は昨年、国内総生産(GDP)の伸び率が1990年(3.9%)以降で初めて7%以下(6.9%)に下がった。このため中国政府はより大きなプレッシャーを背負っており、世界市場にも影響を及ぼしている。

 中国の最初の5カ年計画は1953年に始まり、特別な歴史的意義を持っている。この5カ年計画で中国は大型工業基地を建設し、国防の基礎を築き、農業生産の改革を進め、ほかの社会主義建設の業績も達成した。「13・5」の重要性は「第1次5カ年計画」にも劣らない。これは習近平国家主席の最初の5カ年計画だからだ。さらに目下の中国は1978年に改革開放政策を実施して以来のさまざまな経済発展分野の試練に直面しているからだ。

 2015年11月に発表された「国民経済・社会発展第13次5カ年計画の策定に関する中国共産党中央の提案」によると、「13・5」は全面的に小康(ややゆとりのある)社会を作り上げる新たな目標を打ち出している。そこには、既に実現に向けて努力している下記の目標も含まれている。経済の中高速成長の維持、人々の生活水準と質の全面的向上、国民の資質と社会の文明度の著しい向上、生態環境の全体的な改善、各分野の制度のさらなる成熟と定型化、発展理念の完全化だ。

 注目に値するのは、新しい5カ年計画がイノベーションを発展理念のトップに据えていることだ。これは中国が経済発展をモデルチェンジする決意と、中国経済が新常態(ニューノーマル)に適応するための調整を体現している。張高麗・国務院副総理は「13・5」期間中にはいっそうの努力を払わなければならないと強調し、「引き続き発展を最重要のこととし、マクロ調整で新機軸を打ち出して完全なものとし、消費の基礎的な役割と投資の鍵の役割を発揮させ、経済の持続的かつ健全な発展を促さなければならない」と指摘した。彼はまた次のように補足した。「イノベーション駆動の発展戦略の実施を堅持し、科学技術のイノベーションを核心とする全面的なイノベーションを推進し、経済の中高速成長維持を推進し、ミドルレベルとハイレベルへまい進し続けなければならない。都市・農村の調和のとれた発展を堅持し、発展の新しい空間を切り開き、発展の新しい原動力を育てなければならない。改革を深化し、開放を拡大し、経済・社会の発展を抑制する構造的・体制的な障害を取り除き、社会生産力をいっそう解放して発展させ、社会の活力を解き放って強化しなければならない。グリーン・循環型・低炭素の発展を堅持し、生態環境保護を着実に推進しなければならない」。張副総理はまた貧困支援の重要性も強調し、改革と発展の成果をさらに増やし、公平なものとし、いっそう着実に広大な群衆に恩恵を及ぼすよう説いた。

 英国の中国専門家アンドリュー・ムーディー氏は「13・5」の特徴を数点にまとめた。

 統治分野…国家・政府の統治システムをさらに現代的にし、民主メカニズムと法制、司法の信頼性を完全なものにし、人権と財産権を守り、マクロ経済政策に対する国際的な協調を強化し、インターネットや深海、両極・宇宙開発などの新しい分野でルール作りの役割を積極的に果たす。

 教育分野…大学と研究機関にいっそうの自主性を与え、財政や人事管理などでプロジェクトリーダーにいっそうの戦略決定権を与える。より多くの大学を国際的なレベルに到達させるため教学のイノベーション能力を高め、現代的な職業教育体系を確立し、一部の大学の職業学院へのモデルチェンジを奨励し、産学の協力を奨励し、技術者を育成して給与水準を上げる。

 社会分野…都市化の新施策を打ち出して普及させ、民生を改善し、戸籍改革を深化し、社会保障制度を改良して全住民をカバーし、保険料率を合理的な水準に下げ、養老基金を合理的に調整し、定年を引き上げる。養老基金の投資チャンネルを増やし、投資収益を高め、民間の医療保険と企業の定年改革を完全なものとし、中央・地方政府がチャンネルを広げ、貧困脱出などに努力する。

 医療保障分野…計画出産政策の全面的な普及を呼びかけ、全ての夫婦に第2子出産を許し、生殖に関する健康や女性・児童の医療保険と看護サービスを改善し、公立病院の総合的改革を推進し、公益の特徴を堅持し、利益追求メカニズムを打ち破り、適切な配置で分担・協力する医療サービス体系とランク別診療の枠組みを打ち立てる。

 科学技術分野…インターネット経済を開拓し、「インターネット+(プラス)」計画を実施し、通信速度を上げ、通信費を下げ、業界内のネット空間のイノベーションと供給・物流チェーンに対する支援の度合いを高め、ネット環境を浄化してポジティブなネット文化を奨励し、伝統メディアと新メディアの融合した発展を推し進め、デジタル化を加速する。

環境分野…離任直前の政府幹部について環境保護も含んだ審査を実施し、自然保護を政府幹部の成績評価の一部分にする。グリーン生産を推し進め、グリーン・低炭素産業体系を打ち立て、グリーン投資を促進し、グリーン発展ファンドを築き、新エネルギー車の利用を普及させ、電気自動車のさらなる開発を推し進める。全国的なオンライン・モニタリングシステムと汚染排出企業の排出許可システムを打ち立てる。

経済分野…電力や通信、石油、公共サービス業などの独占業界に一段と競争を導入し、金融改革を加速し、株式と債権の発行・取引制度を完全なものとし、金融市場をいっそう開放し、人民元がSDR通貨バスケットに採用されるのを機に資本の互換性を高める。

農業分野…新しいタイプの農民を養成し、農村の土地制度を改革し、土地経営権の秩序ある移転を導く。

軍事分野…軍事改革を加速し、中国の特色ある現代的な軍事を確立する。

 中国の「13・5」は中国と途上国の協力するチャンスを生み出すだろう。王毅外交部長(外務大臣に相当)はアラブ諸国との関係の将来に触れ、次のように述べたことがある。「『13・5』はイノベーションと協調、グリーン、開放、共有という発展理念を打ち出し、中国経済がより持続可能な中高速成長を実現するのを後押しし、中国・アラブの友好協力を深めていっそう明るい未来を切り開くよう提案している。アラブ国家も自国の国情に合った発展の道を模索しており、素晴らしい生活への憧れを飽きることなく追求している。これは平和と安定を実現する根本に合致しているだけでなく、変革と発展を推進する尽きない原動力にもなっており、中国・アラブの友好協力の深化に向けていっそう大きな舞台を作り上げるだろう」

 

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