現在位置: サイト特集>Panda杯 全日本青年作文コンクール
中国人は本当にマナーが悪いの?

加藤 愛澄

「外国のお客さん、それマナー違反どす。」これはある日の京都新聞の見出しだ。京都は神社などの歴史的建造物が多く、日本らしさが溢れる魅力的な都市だ。それが世界でも評価され、2015年版世界の人気観光都市ランキングでは2年連続で1位に選ばれ、毎年多くの外国人観光客が訪れている。その京都で問題となっているのが、トイレットペーパーを便器に流さずにゴミ箱に捨てていく、所構わず唾を吐く、公共機関でも大きな声で話す、店頭の商品を破損するなどという中国人観光客のマナーの悪さだ。しかし中国に行ったことがある私にとって中国人のこの行動はそんなに驚くようなことでもない。彼ら自身にはマナーに違反している意識はなく、ただ日本のマナーを知らないだけだと思うからだ。

中国人がよく「日本の街中のトイレが清潔で驚いた。」と言うのを耳にするが、中国ではトイレに紙を流せない地域が多く、設置してあるゴミ箱に捨てるため自然と異臭がたちこめているのだ。また、外国での中国人のマナーの悪さは中国国内ではそれほど報道されておらず、日本が自分たちの行動に迷惑しているとは知らなかったという。多くの中国人が日本のマナーの良さに感動するというが、体に染み込んだ習慣は簡単には直せないもので、また自国でも実践しようとは思わないという。

日本人は中国人のそういうマナーに対し、「信じられない、ありえない。」といった反応を示し、「郷に入れば郷に従え」などと中国人のマナーの悪さを批判する。そしてそのイメージだけで中国を悪く言う人までいる。それを私は非常に遺憾に思い、「中国に行ったことがあるんですか。」と聞きたくなる。確かに中国人との交流がない人にとっては観光客が一番身近な中国人なので、悪いイメージを持ちやすいかもしれない。しかし中国人観光客はただ中国にいるのと同じように行動しているのに過ぎないのである。以前韓国のトイレに日本語で「詰まるのでトイレットーパーを流さないでください。」と紙が貼られているのを目にし、日本人のマナーも他国に迷惑をかけているのだと気づかされたことがある。

私たちは、日本のマナーはあくまで国内だけで通用するということを忘れ、日本人のマナーは世界一だと勘違いし、逆に中国人のマナーは悪いとレッテルを貼っている。このマナーの違いによる摩擦の解決の第一歩にしようと、先日京都の嵐山では、中国や台湾の留学生らを招いてセミナーが行われ、企画者はセミナーの最後に「今は相手のことを良く知らず、言葉も通じないので嫌な思いのまま終わっている。違いを知った上で、尊敬の念を持ってもてなしたい」と話したという。

私はこの考えに共感を持った。なぜなら日本と中国の関係は“源远流长”という言葉で喩えられるように、歴史的に長いつながりがあるが、お互いのことを良く知らないというのが実状だからだ。マナーの問題に限らず両国に発生している様々な問題を考えていくと結局、「お互いをよく知らない。」というこの点にたどりつくのではないだろうか。中国と日本は隣国同士で、経済的にも文化的にも交流が深いのに、互いにいがみ合ったり、欠点ばかりを探り合っているような気がする。安倍晋三首相の、70年談話にも「より良い未来を切り拓いていく、アジア、そして世界の平和と繁栄に力を尽くす。」とあるのに、日本は隣国ともめてばかりでどうするのと思ってしまう。両国の関係の悪化は私たち若い世代が断ち切らなければならないと思う。中国人観光客の増加に伴い日本を知る機会が増えている今、私たちはこの問題を良いきっかけとして、中国を知る機会を増やし、相互理解へ発展させていかなければならないと思う。相手を理解したうえで相手をもてなすことが、日本人の心からのおもてなしではないだろうか。

 

人民中国インターネット版 2016年3月

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。 京ICP備14043293号
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010)6831-3990  FAX: (010)6831-3850