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一人から変えていく日本と中国

 

中澤 耀介  

“Ciao! Seicinese? ”2013年、私が高校3年の9月から1年間留学したイタリアで何回も聞かれたフレーズである。「あなたは中国人ですか?」私たちは顔を見れば日本人か否かは大概分かることだが、遠く離れたヨーロッパに住む彼らにとって日本人と中国人の見た目の違いなど分かりようのないものであった。言ってしまえば、私たちの違いなど「その程度」のものであった。

私は遠くイタリアの地で、中国に対する印象を大きく変えた同じ留学生のMing Hui Yu(ミン)と出会った。私たちの間ではイタリア語が共通語であり、共に励まし、支えあった大切な仲間である。留学するまでの私は、マスコミの情報を鵜呑みにし、中国と言えば冷たく、対日反感の人が多いと勝手に思い込んでいた。島問題、各国首脳の発言による駆け引きなど、連日ニュースが報じていた政治問題等からしか中国を知ることがなかった。そんなことなど知らないミンは、私の思いをどんどんと変えていった。昨日学校で起きたこと、ホストファミリーと出かけたこと、自分の好きなバスケットボールのこと、ミンは僕に対してまるで幼馴染の友人であるかのように、特別な話でもなければ気を遣った話などせず、純粋に一友人として話しかけてくれた。当たり前のことと思うかも知れないが、これこそが国際交流の入り口であり、原点ではないかと感じた。

ある時私はミンに対し、一つ質問をしてみた。「ミンは日本が好き?」ミンは少し間をおいて、「政治的な問題を言えば、私たちはまだ対立関係にあるね。でも僕は、君たちのような日本人が大好きだし、日本食も大好きだ、ゲームもアニメだって大好き。日本を嫌いなわけがないよ」そう言ってくれた。日本と中国の関係改善は、国単位でできることではないとここで強く知った。ミンは常に世界を国単位ではなく、人間一人単位の視点で見ていた。そしてそのことを私に教えてくれたのである。人間一人単位で見ること、それは遠回りのように見えて一番その国を知る近道である。ミンが私を変えてくれたことで、また一つ本当の日中関係がよくなったのではないだろうか。一人からまた一人。私たちの使命は、両国の関係を私たち自身が学びとり、その繋がりを段々と広げていくことである。

現在、訪日中国人の大幅な増加は驚くべきものである。今年の訪日中国人の数は、昨年の約240万人を大きく更新し、2015年8月の統計時点で330万人を記録している。この要因にはもちろん政府の政策、経済社会情勢も影響しているだろうが、それ以上に我々は大きなチャンスを見い出せるはずである。私たち一人一人が本当の日本の良さを理解し、彼らにそれを伝えることで、さらに相互理解が深まるのではないだろうか。そしてもっと私たちが彼らを知ることで、尊重し合える社会を作りあげていけるのではないだろうか。

隣人「中国」、それは私たちのライバルなのではない。ともに協力し、この複雑化していく国際社会に向けて、よき関係構築を示していくお手本でなければならないと私は考えている。決してできないことはない。大きなことではなく、私たち人間一人単位の行動次第である。小さな線はやがて大きな線に繋がり、いつか日本と中国の本当の絆を私は見れる日が来ると信じている。

日本に帰国し、こうして考えることができたのもすべてミンのおかげである。彼は今、中国の蘭州で私と同じく大学生活を送っている。私はいつか彼の住む街を訪れ、あの時言えなかった言葉を、彼に直接伝えたいと思っている。" Anch’ioamo la Cina! " 「私も中国が大好き」と。

 

人民中国インターネット版 2016年3月

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