相互理解を深める友愛のこころ

 

 

一週間の日程で中国を訪問ができ、とても貴重な経験をすることができた。渡航前、連日のように報道されていた北京の大気汚染は想像以上に深刻だった。青空の日は一日もなく、毎日スモッグに包まれた灰色世界で、滞在四日目にはのどに異変を感じるようになった。11月はマスクをしていても鼻をかんだら真っ黒だったそうで、10メートル先が霞んで見えなかったという。「高度経済成長期、1960年代の日本と同じ問題がたくさん起きている」ということで、経済成長優先の資本主義経済を突っ走る中国の躍動感と歪みを肌で感じる機会になった。まちには経済成長の象徴である高級外国車が溢れかえっていたが、一方で都市(北京市)と農村(山東省曲阜市)では、経済格差や所得格差、教育格差が確実に広がっていることを感じた。大卒の就職率は30%前後で、上位国立大でも就職がとても難しいとのこと。政府は大学生の起業を奨励しているが、経営についての実体験や知識を学べる場所が少なく、中国は詰め込み型の知識教育を優先していることもあり、実情はうまくいっていないとのことだった。 

今回交流した北京人民大学の学生たちも、さまざまな悩みや不安を抱えていた。大卒の初任給は月6万円で、北京の物価は高騰し続けているので、若者の生活は苦しいようだ。物価は日本とほとんど変わらなくなってきている。しかし、北京で切磋琢磨して働かないと落ちこぼれてしまう。大学生の自殺など、行き詰まりも見えてきており、少子高齢化などの課題を抱えている。日中両国が連携しながら、環境問題や社会問題の解決に向けて行動することの必要性を実感した。 

中でも印象に残っている言葉が「中国人にとって、一番身近な国は韓国でもアメリカでもない。日本だ」ということ。日本の文化や経済を学ぼうとする姿勢を感じた。日本への理解を深めようとしている学生も多いという。私たち日本人は、中国のことについてどれほど知っているだろうか。「近くて遠い国」なのではなく、きちんと向き合う姿勢が大切であるということを改めて深く考えるきっかけとなった。 

中国人民大学の学生たちと行った盧溝橋、抗日戦争記念館。自分が「日本人であること」を強く認識し、改めて歴史問題に対する知識にかけていることを感じた。しっかりと学ばなければいけない問題である。孔子のふるさと曲阜市、曲阜師範大学、万里の長城、天安門広場。普通の旅行では体験できない貴重な出会いと心の通う交流をすることができ、出会った中国の人たちはみんな優しい方ばかりだった。「反日感情を持つ人が多い」と聞いていたので、怯えた心で訪れた中国で、価値観が変わるほどのカルチャーショックを感じた。 

百聞は一見にしかず。歴史を直視しながらも互いを尊重し、学び合う友愛の精神を大切にしたいと思う。若い世代がしっかりと知識と交流を行い、日中交流の架け橋となれるように努力を続けていきたいと思う。今回、貴重な研修の場を提供してくださった人民中国雑誌社、日本科学協会、中国外文局の皆様に、改めて心から感謝申し上げます。


人民中国インターネット版

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