知識を理解に変えた8日間

──「笹川杯全国大学日本知識大会」「笹川杯作文コンクール」の受賞者が訪日

薛建華=文・写真

 

3月1日から8日までの日程で、2015年の「笹川杯全国大学日本知識大会」と「笹川杯作文コンクール」の受賞者が、公益財団法人日本科学協会の招待で日本を訪問した。日本に対する多くの知識を持ち、日本語で見事な作文をつづれる大学生たちは、この訪問で日本の文化に実際に触れ、日本の人々と実際に交流し、これまでの知識を深い理解に変える体験をした。ソメイヨシノの開花には少々時期が早かったが、彼らは行く先々で心に残る交流の花を咲かせた。

 

文学の聖地から福祉の現場まで

訪問団一行33人は、8日間の日程で、東京、静岡、滋賀、京都、大阪などの地を巡って各所を参観、日本文化を体験し、地元の人々と交流を深めた。日本科学協会は、参加者に一般の旅行ではなかなか行けない場所の訪問を用意している。毎年多彩でユニークな視察ルートを組むことに心を砕いているのは、中国の若者により多くの角度から日本を体験し、理解してもらいたいためだ。今年のテーマは「日本新発見」で、日本を代表する都市をめぐるだけでなく、小さな町や農村の訪問も日程に組み込まれ、文化や歴史、環境保護、社会福祉などさまざまな面で貴重な体験ができるようになっていた。

日本科学協会の大島美恵子会長(中央)と記念撮影する作文コンクール優勝者の奚相昀さん(左)と王喆崎さん

3月2日、訪日団は日本の文学の聖地――伊豆半島を訪れ、近代文学博物館を見学した。川端康成、井上靖など文学の巨匠に加え、葛飾北斎ら芸術家の足跡も残る場所だ。メンバーは『伊豆の踊子』に描かれた山間の小道を散策し、学生の「私」と踊り子の薫の彫像の前で足を止め、小説を読んで想像していた「私」や踊り子の姿との違いを話したり、踊り子が下駄を履いて学生に向かって駆け出す場面を思い浮かべ、感想を述べ合うなどしていた。

3月2日、30人余りの訪問団が伊豆市にある井上靖旧居を訪れた(写真・星多惠)

伊豆の訪問は河津桜まつりの時期にあたり、見事な桜を観賞することができた

伊豆半島が文学・芸術のロマンの雰囲気を味わえる場所だとすれば、御殿場市にある富岳会は訪問団のメンバーが心をふるわせる場所だった。4日、訪問団は富士山の麓にある社会福祉法人・富岳会を訪れた。ここではお年寄りが十分な世話を受け、子どもがたくましく成長し、障害者が適切な職業訓練を受けたりここで仕事に就いているのを目にした。ここは、特に障害を持つ人々に生活の自立と社会自立を支援し、それぞれの生活に夢や希望の持てる愛情あふれる環境を提供していることで知られる。メンバーは同会の活動をつぶさに見て社会福祉の取り組みの重要性を感じた。

また、訪問団のために和太鼓によるパフォーマンス「富岳太鼓」が披露され、メンバーを大いに感動させた。笹川杯作文コンクールの優勝者で、安徽省合肥学院の奚相昀さんは、「私はこれまで、こんなふうにパフォーマンスを見て涙があふれるような経験をしたことがありませんでした。言葉や絵にはできない感動で、その場に身を置いてこそこうした魂を直撃する力を感じられるのだと思います。私たちにパフォーマンスを見せてくれた人たちは障害があるかもしれませんが、私たちがステージで見たのは彼らの努力や自信で、その姿からは積極的に向上していこうという生活態度を感じました」と語った。

 

体験が学生たちに残したもの

8日間の日程では、毎日異なった体験があり、それぞれの学生たちの心にさまざまな日本に対する印象を残していった。

あるメンバーは具合を悪くし、各スタッフから心をつくした手厚い介護を受けた。また、あるメンバーは街で道に迷っていたところ、親切な人がわざわざ案内してくれたという。西南民族大学の袁通衢さんは、静岡県の高速道路サービスエリアで財布を紛失したが、拾った人はなんと京都のホテルまで直接届けてくれた……。

滋賀県長浜市では盆梅展を参観。ボランティアの馬場智章さんによる「この大木の樹齢は400年以上です」という説明に、訪問団のメンバーも驚きを隠せない様子だった

合肥学院の奚相昀さんは、昨年北京で知り合った日

本人の小田真理子さんと日本で再会した。奚さんの来日を知った小田さんは、3月7日早朝に広島をたって大阪に出向きホテルに彼女を訪ねた。二人は天保山で水族館の海遊館や観覧車を楽しみ、道頓堀を散策するなどして旧交を温めた。小田さんは夕刻に奚さんを訪問団の集合地まで送った後も、しばし別れを惜しんでいた。

京都の立命館大学国際平和ミュージアムの入口では、今回の団長である吉林大学外国語学院院長の周異夫教授が布川庸子さんと19年ぶりの再会を果たした。当時、周教授は中国青年代表団のメンバーとしてここを訪れ、ボランティアの布川さんと知り合ったのだ。旧知との思いがけない再会に周教授の喜びもひとしおだった。布川さんは、長年にわたってここで参観者のためにボランティアの解説員を務めている。彼女はまた、博物館内の展示品紹介パンフレットの『ミュージアム「物」がたり』も制作している。

再会した周団長と立命館大学国際平和ミュージアムの布川庸子さん(右)

「国の交わりは民の相親しむに在り」という。団長とボランティア解説員、北京で知り合った若者同士。上の世代と新しい世代では交流方法や連絡手段は異なるかもしれないが、友好や平和、発展を伝えていくことは皆の願いだ。

 

交流に着実な成果を重ねる

2015年の「笹川杯全国大学日本知識大会」は吉林大学で開催された。同大学の周教授は、この大会は中国の学生たちの日本理解、自発的学習、知識増進への積極性をかき立てているだけでなく、中国の大学同士の交流プラットホーム、各大学の日本語教育の成果を示す舞台にもなっていると高く評価している。

人民中国雑誌社と日本科学協会が共催、日本財団が特別協賛する「笹川杯作文コンクール-感知日本」は2015年が第8回となっており、これまでに延べ1万人以上が応募している。なお、日本科学協会と日本財団は日本の若者を対象にした「PANDA杯全日本青年作文コンクール」も、同様に共催、特別協賛として積極的に推進しており、こちらの受賞者は中国訪問に招待される。

 

 

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