サッカーも勉強も大丈夫だよ 育成策に応じのびのび5年生

 

高原=文  馮進=写真

 

北京航空航天大学付属小学校5年生の姚雨松君は文字通りの「サッカー少年」。3年生の後半から、学校の青少年スポーツクラブでサッカーを習い始め、4年生の前半に学校の代表メンバーに選ばれた。学校が位置する海淀区、そして北京市で行われた多くの大会に出場し、昨年北京市小中学生サッカーリーグ戦で4位に輝いたこともある。姚君はクラブ活動に参加することで学校生活も多彩となり、サッカーに対し強い関心も抱くようになった。このような彼の成長は、近年の小中学校における体育教育の進歩と発展を物語っているともいえよう。

 

サッカー始めて勉学にも励む

 

姚君はひとたびサッカーの話になると、とてもうれしそうに話し出す。イタリア系アルゼンチン人のプロサッカー選手、メッシさんが大好き。パスが得意だから、5人制より7人制が好き。「だって7人制は思い切りパスできるから」。このような姚君の毎日はサッカーとは切り離せない。火曜日と金曜日の放課後はスポーツクラブでサッカーの練習がある。そのほかの曜日は北京市が小中学生向けに推進している「無料で参加できる1時間の課外活動」計画に基づいて学校側が設けたスポーツ時間のサッカークラスに参加している。

放課後のベルが鳴ると、姚君は仲間たちとかばんを背負いグラウンドに向かう。サッカーシューズ、ウェアに着替え、コーチ指導の下でまずは技術と戦術面の練習をして、それから5人制の試合を行う。午後5時に練習が終わり、家に戻って晩ごはんを食べると、7時には再び自宅の向こうにある公園で友達と1時間のサッカー試合をする。宿題はいつやるのかと聞くと、彼は涼しい顔で「もう学校で終わらせちゃった」と答える。

「この子は本当にサッカーが好きなんです。サッカーを始めてから、勉強をおろそかにしなくなっただけではなく、自ら進んで勉強する時間を調整するようになりました。ここ2回の期末テストの成績は学年上位3位に入っています。その上、この1年間ほぼ毎晩サッカーをするために仲間たちを集めていたため、コーディネーション能力も鍛えられました。そのため、私たち親も彼のサッカーへの取り組みを応援しています」と姚君の父親はとても誇らしげに言う。

 

遊びを通して身に付けさせる

 

姚君が通っている小学校は北京で最も早く青少年スポーツクラブを導入した小中学校の一つ。同校のクラブ活動担当者である周永忠主任によると、同校のスポーツクラブは2003年に設立され、サッカー、バレーボール、卓球、テコンドーなど19もの選択項目がある。1コマ90分間の授業料は40元で、北京市の各学校のクラブと比べると比較的安い方だといえる。現在、参加者は二百数人いるものの、ほとんどが同校の子ども。「校外参加者も募集していますが、午後3時半から始まるため、校外からの参加者は時間的に厳しいでしょう」と周主任は言う。

同校のスポーツクラブでは、サッカーに参加する子どもが最も多く、6、70人もいる。このクラブには子どもが自らの意思で申し込む。定員制限はなく、いつでも参加できる。しかも、男女問わず、一緒に練習し、試合をしている。上級チームの対抗試合で最も目立っていたのは1人の女の子。ほかの子どもより背は低いが、まったく尻込みせず、全力で駆け回っている。ボールが飛ぶ方向には必ず彼女の姿があった。一方、初級チームは、参加者のほとんどが1年生と2年生で、簡単な練習をこなしている。同校のスポーツクラブで顧問を担当する楊コーチは子どもたちにボールを抱えながらリレーさせたり、ドリブルをさせながらコーチに捕まらないようにさせたりする。「小さい子どもたちにサッカーを教えるには、まず彼らがサッカーに興味を持ち、楽しく遊べるようにしてから協調性やボールに対する感覚を育てなければなりません」と楊コーチは言う。

 

これからの学校スポーツ制度

 

楊コーチはかつて中国国家代表チームの一員で、その後プロチームを指導していた。しかし、小学生を指導した経験はほとんどなく、新たなチャレンジだと言える。「子どもたちがサッカーに興味を持つようになったことをとてもうれしく思います。国家代表チームに入り、アジア大会、アジアカップに出場し、私自身の夢はかないました。今年、定年退職したので、今後は子どもたちの夢をかなえるサポートをしていきたいと思います。学校のサッカー活動は、技術面の練習も然ることながら、人の育成が重要だと思います。丈夫な体とたくましい精神力、そしてチームワークを育成しなければなりません」

同じベテランのサッカーコーチである徐徳林コーチは学校のサッカー活動の未来について真剣に考える。「現在、北京市内の多くの小学校にはサッカーチームがあり、比較的まとまっているところは2、30校もあります。しかし、中学校になると、試合を行うために10チーム集めるのも大変で、高校での状況はさらに厳しいものです。このような状況の中でサッカーをやっている子どもたちはどうなりますか。彼らは行き詰まり、サッカーをやめる子が多くなるでしょう。かつてはこのような経験をした子供がたくさんいましたが、サッカーが勢い付いている今日、以前と同じ悲劇が再び起こらないように願っています」

スポーツ人材がクラブに集中するとともに、スポーツが好きで、得意な子がより才能を発揮できるよう、青少年スポーツクラブの制度を整備すべきだろう。周主任によると、現在、北京市は130以上の青少年スポーツクラブがある。コミュニティーが開設したものもあれば、スポーツ施設運営側が開設したものもある。しかし、小中学校と大学が開設したものはその内の87%も占めている。これは青少年の間にスポーツを普及させるだけではなく、スポーツ人材のこれからの発展のために新しい道を切り開いたとも言えよう。

 
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