ボランティア活動に励むカメラマン
記念写真で高齢者の元気を引き出す

 

高原=文  馮進=写真

最近の若者はみな、写真を撮り、撮られることが好きだとはよく言われている。ところが、実は、最近の高齢者も写真撮影に夢中なのだ。写真館で襟を正して撮った記念写真などは古い写真と共に大切にアルバムに収めてある。たまにめくってみると、昔のことを思い出し胸がいっぱいになる。もちろん、現在の姿も写真に撮り、記念として一緒に収めたいのだが、外出が不便だったり、孫の面倒で手いっぱいだったりと写真館まで出かけて行くチャンスはそう多くない。一方、山村に住んでいる高齢者は十数年もの間、記念写真を撮ったことがないという。このような高齢者のために、ボランティア団体「パンダ撮影チーム」は、60歳以上を対象に無料で記念撮影することを主な活動としている。この団体が高齢者にもたらすのは1枚の写真だけではなく、注目され、耳を傾けてくれる人がいるという喜びと満足感だ。

写真を通じて学んだこと

李明順さん(36)はパンダ撮影チーム(以下は撮影チーム)の創設者。10年前から写真の魅力に取り付かれ、現在はコマーシャルカメラマンとして活躍している。2011年の重陽節(日本の「敬老の日」に相当)に、李さんは友人と一緒に老人ホームへ行き、そこで生活している高齢者の写真を撮ることで敬老の意を表した。1週間後、写真を届けに行った李さんは、写真を手にした高齢者たちの感動や喜びに強く心を動かされた。そこで、李さんは毎月必ず時間を見つけ老人ホームやコミュニティーに赴くことを心に決めた。こうして、そこで生活している60歳以上の人々の写真を無料で撮り、はがきサイズにプリントして手渡すボランティア活動が始まった。

その時から4年、撮影チームには現在二十数人の主要メンバーがいる。北京市、河北省、陝西省などで3万人以上にもなる高齢者の写真を撮ってきた。その間に感動させられたたくさんの出来事があったと李さんは言う。

90歳を超えたある高齢者は、写真撮影のためにわざわざ軍服に着替え、軍功勲章を胸につけてきた。そして、レンズの前で背筋をしゃんと伸ばし、厳粛な面持ちでカメラに収まった。また、武術を習っている高齢者は自分が持っているすべての武具を持ち出し撮影に臨んだ。出来上がった写真を手にし「武具を持った写真を撮ったのはこれが初めて」と満足げだった。北京市門頭溝区にある山村に住む高齢者の中には十数年間写真を撮ったことがないという人もいる。その証拠に、李さんが写真撮影に出かけていった日には150人以上もの長蛇の列ができた。また、ある高齢者は李さんが撮影した日から3カ月後にこの世を去った。この高齢者の息子は李さんを訪ね、写真を多めにもらえないかと懇願した。なぜなら、母親はこの2年間、一度も写真を撮ったことがなく、李さんが撮った写真がこの世での最後の1枚となってしまったからだ。

「『子養わんと欲すれども親待たず』ということわざの意味を身をもって理解しました。現在、ほとんどの家庭にはカメラや携帯電話があり、写真撮影が簡単になったためにかえって家族の写真を撮ろうとしなくなってしまったのだと思います。祝祭日には食事をするだけではなく、一家団らんの写真を撮り、お別れの日が来ても心残りがないようにするべきだと思います」

チームメンバーの育成を

撮影チームには、30歳前後の若手カメラマンもいれば、定年退職したアマチュアの撮影愛好家もいる。若者は主に週末の活動に参加し、平日の撮影は退職カメラマンが担当している。これら退職者はもともと撮影チームに撮影される側だったのだが、撮影が好きで、また、李さんに感化されチームに入り共に活動するようになった。

これらメンバーの撮影技術を向上させるため、また、メンバー以外の撮影好きな退職者に技術習得の機会を作るために、李さんは北京市内の三つのコミュニティーで毎月1回の写真撮影セミナーを開催している。セミナーの後には受講者を連れて市内の公園、あるいは郊外にまで出向き、撮影の指導をしている。高齢者は多くの若者よりも熱意が強く、みぞれが降るような寒い冬の日でもセミナーを聞きに来たり、屋外で撮影の練習をしたりしている。また、互いの作品をめぐって熱い討論を戦わせたりもしている。このようなメンバーの中でも、教職を退き70歳を超えた何さんは、以前は体調が優れず1年に4回も入院したことがあるものの、撮影チームに入ってからは、いつも他のメンバーと撮影に駆け回っていたためか、この1年間1度も病気にかからなかったと言う。李さんはこの話を聞いてとてもうれしかったと話す。

撮影チームは最も多い時で所属メンバーが200人以上にも膨れ上がっていた。しかし、現在は二十数人にまで主要メンバーを絞った。その理由として李さんは以下のように話す。以前は多くのプロカメラマンがこのチームメンバーになりたがっていたが、最終的には全て断った。なぜなら、しばらく一緒に活動した後に、それらカメラマンが個人の創作だけを考えていることに気が付いたからだ。李さん自身もここ数年、多くの人から写真展を開くよう勧められた。しかし、それは功利主義的なもので、写真展を開くと同時にボランティア活動としての意味合いに変化が生じてしまうという考えから応じることはなかった。李さんはただ、高齢者を撮り、その写真を手渡すという小さなことを大切に活動していきたいと言う。

一方、ボランティア活動を始めても三日坊主に終わってしまう若者がいるという。李さんはそのような若者もまた高齢者を対象とするボランティアには向いていないと考える。「うちのメンバーによく言うことなんですが、老人ホームで高齢者とおしゃべりすることは一向に構わないんです。でも、一つだけしっかりと覚えておかなければならないことがあります。それは、できないことは決して約束しないということです。例えば、高齢者のためを思って『明日また会いに来ますね』などと軽々しく口にしたとします。でも、約束を守れなかった時に傷付くのは他でもない高齢者なのです」と李さんは言う。

最近、撮影チームの知名度が向上してきている。そのような中、河北省の邢台市に「支部」が現れたという。それはかつて撮影チームのメンバーだった河北出身の学生がふるさとに帰って立ち上げたものだった。李さんは怒った様子もなく、しっかりと高齢者のために貢献するのであれば「パンダ撮影チーム」という名前を使っても全く問題はないと笑った。

 

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