党員として人一倍努力を 若者に伝える技術と精神

 

高原=文 馮進=写真

趙郁さん(48)は北京メルセデス・ベンツ自動車有限会社(以下、北京ベンツ)のチーフエンジニア。機械組立工から出発し、絶え間ない努力によって自動車上級整備士にまで上り詰めた。このように努力家の趙さんは、同会社で「チーフ」の肩書を獲得した初めてのブルーカラーでもある。また、組立作業場内に四つある共産党チームの中の1人のリーダーとしても活躍する。共産党党員、そして、党チームのリーダーという立場は、エリート技術者たちを率いて、課題に対する克服を課されると同時に、若者の手本となるべくさらなる責任を負うということでもある。

新入社員育てる「スタジオ」

1988年、大学受験に失敗した趙さんは北京ジープ有限会社(北京ベンツの前身)が求人を出していると聞き、軽い気持ちで受けたことがきっかけで見習社員となった。その後、趙さんは仕事に真面目に取り組み、早くから頭角を現した。見習期間はフロントガラスの取り付けを担当していた。この作業は簡単に見えるものの、少しでも気を抜くとすぐにガラスが割れてしまうことに趙さんは頭を抱えた。しかし、経験を活かし、技術改良することで、3万ものフロントガラスを割らずに取り付けるという記録を打ち立て、その年の優秀見習社員に輝いた。

正社員となって組み立て生産ラインに配属された後、進んで学び、自ら考える趙さんの勤務態度は先輩技師たちから高く評価された。不断の技術向上の結果、趙さんは生産ラインから試運転作業に配属された。その後、さらに高い技術が要求される自動車電気工事士となった。

趙さんは自動車組立・修理に関する問題点を積極的に解決していった。ほぼ毎年、自ら技術課題を設定し、その研究成果を出してきた。それら多くの成果は生産製造とアフターサービスにおいて直接的に応用され、目に見える形での経済効果を生み出していった。

趙さんは共産党員として、自分1人だけが向上するのではなく、仲間も共に向上させるよう導いていくことがより重要なことだと十分に理解している。そこで、自らが学んだ技術、そして、長年にわたって模索し、つかんだこつの全てを惜しげもなく仲間に伝授していった。仲間の技術素養を高める助力となるため、趙さんのチームは学習グループを作り、互いに切磋琢磨するようになった。趙さんの影響の下、作業場内の自動車上級整備士の割合が70%近くにまで上がり、中国全土における自動車業界の中でも上位を占めるようになった。

2009年、社内に「趙郁イノベーションスタジオ」が設立された。趙さんはこのスタジオを通じて、若手技師たちのために実用的で斬新なトレーニング器具を開発していった。これらの器具を使うことで、新入社員の研修期間を大幅に短縮させることができた。毎日、夜になると机に向かって設計図を描き、昼間は昼間で旋盤に向かってさまざまな加工をすることが、この「スタジオ」の日常だ。現在までに趙さんが開発したトレーニング器具を見習期間に使用した新入社員は、既に延べ2061人にも上り、研修の総時間は既に1万5000時間にも達している。

共産党員は若手社員の憧れ

北京ベンツでは、趙さんのような中堅社員が少なくない。しかも、彼らの大多数は共産党員だ。同会社では、業績がずば抜けて良く、品行方正で優秀な青年しか党員になることはできない。しかも、党員である以上、業務のさまざまなプロジェクトにおいて積極的に企画し、取り組むことが要求される。また、各プロジェクトでは、付加価値生産が生み出せているのか、技術革新があるのか、利益を上げることができているのかが定期的に評価されている。このように十分な評価体制の下、党員は若手社員の手本の代名詞となっている。

作業場の党総支部委員会委員の楊旭さんは、趙さんについて以下のように語る。最近では、手本である趙さんを見て党に入る青年がとても多い。現在、工場には1000人以上の社員がいるが、平均年齢は20歳を少し超えるくらいにしかならない。その中の200~300人が入党申請を提出している。しかし、党組織へ入るための審査はとても厳しく、今年入党できたのはたったの4人しかいなかった。彼らは少なくとも2、3年前、あるいはもっと以前から「入党積極分子(積極的な入党希望者)」になっていた。「若者にとっての入党とは一つの誇りなんです。なぜなら、自分の様々な面が優秀であると評価されるからこそ党組織に入ることができるのですから。周りから認められるというわけです。普段の仕事においても、誰が党員で、誰が「入党積極分子」で、勤務態度はどうなのかということをみんなが見ています。つまり、『入党』とは自分自身に課す一種の制約であり鞭撻でもあると言えるのです」

中国の多くの企業と同じように、北京ベンツの党組織と労働組合の仕事も緊密に絡み合っている。党員は党組織の仕事だけではなく、労働組合が主催する様々な活動、例えば各種イベントや職員訓練、その他にも会社の年間行事の準備などに中心となって取り組まなければならない。昨年の春節(旧正月)前には、労働組合主催で「正月用品大集合」というイベントが開催された。このイベントは、残業をしている社員たちが休憩時間に必要な正月用品を買い揃えられるよう、スーパーに並んでいる関連商品を工場内に移動させるというもので、みんなに喜ばれたという。このイベントで社員みんなのために中心となって動いたのは、言うまでもなく共産党員たちだった。

「私たち党員は仕事でリーダーシップを取るだけではなく、新しく来た社員たちの意見に耳を傾け、しかも、まとめあげる役割を担わなければなりません。様々な活動を通して、1人1人に自らの才能を発揮させ、この企業に必要不可欠な人材だと感じさせなければなりません。同時に、より多くの人々に共産党員の前向きな姿勢を見てもらわなければならないと思っています。本社も私たち党員のこのような組織的役割を認めてくれています」と楊さんは言う。

北京ベンツでは党員が従事する党の仕事と労働組合の仕事を数値化するという新たな評価基準を設定した。これは、党員がさらに多くの人々の役に立つことを目的としている。この評価は年末の業績評価100満点中の5点を占める。現在では、この5点を獲得した党員が表彰されるようになっている。

 

人民中国インターネット版

 

 
人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850