対話の「きっかけ」から未来を語る場へ

 

日本側主催者 言論NPO代表 工藤泰志

 

 

 

  日中が共存するためには、関係者が腹を据えて率直に議論をするべきだ。問題があるから日中関係が進展しないのではない。両国がアジアや世界で利益をもって共存、発展できるという状況に向かえない限り、何も始まらないのだ。互いを批判するための問題提起には意味がない。アジアの将来のために二つの大国が協力し、発展させていく状況をつくるために、みんなで知恵を出し合う時がまさに今だと思っている。

 

 「東京-北京フォーラム」はその方向性をつくるための「基礎工事」と「環境づくり」の場である。有識者や要人たちによる課題解決で困難を乗り越えるだけではなく、未来に向かって協力するために議論のサイクルを構築し、それが公開されることで両国民が「問題解決のためにこんな努力をしている人がいる。私たちもこのアジアのために、両国のために何かができないだろうか」と考え始める、というサイクルが醸成されたなら、日中関係は本当に強いものになるだろう。

 

 言論NPOは設立15年を迎えた。2~3年目の頃、両国民の対立状況を誰かがたださなければいけないと感じたが、政府もメディアもそれをせず、それどころか相手を攻撃し、自国のナショナリズムを加速させてしまい、外交関係まで悪化させる事態になってしまった。この事態を何とかせねばと私は北京に行き、単なる友好ではなく、日中共同で問題解決の糸口を探ろうと提言をした。私の呼びかけに、多くの中国の方々が応えてくれたことを今でも思い出す。

 

 あれから11年が経ち、両国の困難を乗り越えるための対話が数多く行われるようになったが、外交的な対立が深まった途端、みな中止してしまう。よって私は、「東京-北京フォーラム」は両国の困難を乗り越えるための唯一の絆だと思っている。過去フォーラム内にも、これ以上続けるのは難しいのではないかという提言がありはしたが、私は困難だからこそ対話し続けようと説得を続け、今に至っている。

 

 中国の方々は、「大義」に対してきちんと聞く耳を持っていると私は感じている。政府間の両国関係悪化を民間レベルで乗り越える場をつくり、状況を変えようというのが、「東京-北京フォーラム」が掲げる「大義」である。政府よりも半歩先、一歩先に進んで交流を続けようという場を続けて来られたのも、中国の方々の強い思いと協力の意思があったからだと思っている。

 

 しかし、道のりはまだ半ばである。困難を乗り越え、何でも話し合える対話の場をつくったが、未来のためにお互いが協力・発展し、平和をつくる作業はこれからだ。今回の対話を「アジアや世界の未来のために協力しよう」というテーマに定めたのは、変化のさなかにある世界を真正面から議論し、協力して地域の平和をつくっていく作業に入りたいと思ったからだ。今年の「東京-北京フォーラム」は、対話のきっかけづくりから未来に向けたスタートに転換する年だと思っている。

 

 私たちは日中関係の如何に気を取られず、悪い時こそ状況を変えるという覚悟をもって取り組まなければいけない。当然さまざまな摩擦はあるだろうが、対話を止めずに摩擦を乗り越えるための努力をしていきたい。そのために100人近い代表者が話し合うのである。両国民も対話の内容をもとに、両国がアジアの中でどのように協力発展し、地域の平和をつくれるかを共に考え、そして多くの人々が汗をかき、努力をしているということに応援をしてほしい。この応援の輪が広がれば、日中関係はいかなる困難があっても間違いなく乗り越えることができるだろう。今回の対話がその「エンジン」となることに期待する。

 
 

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