仏心染み入る精進料理

 

普陀山では、人々は観音菩薩をまつる以外にも、独特の精進料理を味わうことができる。昼近く、私たちは大乗禅院隣の長生素齋に来た。空色の禅服を着て、髪をうしろでまとめた接客係が迎え、中国式の古典的内装の部屋に案内してくれた。長生素齋は普陀山最大の精進料理店で、この場所は以前薬師殿があり、無病息災で長寿の薬師如来をまつっていたことから「長生素齋」と命名され、縁起の良さと不老長寿を願う。行き届いたサービスのために店員はみな菜食で、毎日朝9時に菩薩大殿に集まり、『般若心経』を3回あげて人々のために最高の料理を客人に差し出すことができるよう祈る。

普陀山の海と空の色の服を着る長生素齋の接客係

 

馬雪萍さん(54)は長生素齋の経営者で、中国仏学院普陀山学院第1期居士班の学員で、優雅な態度でいつも笑みを浮かべる。いかにして美味しい精進料理を作るかの話題になると、次のように話す。「ここでは全てのお客様を観音菩薩として見て、料理人は穏やかな心で一つ一つの料理に心を込めて作ります。朝、舟山本島の沈家門から、新鮮な野菜を運んできて、普陀山の泉の水でスープを作り、良質な油を選んで調理します。ここで使用するキノコ類はほとんど、貴州、福建などの山で採れたもので、現地の人々から買い取っています。優れた原料で、価格も高くないので、長生素齋が38元の手頃なビュッフェを提供できるのです」。一皿の精進料理で一生の幸福を。普陀山仏教協会会長の道慈大和尚は、普陀山に来た全ての観光客に気軽に美味しい精進料理を味わってもらうことを提案する。大和尚もまた長生素齋の発起人だ。

他の地方の精進料理店ではよく魚や肉などの形に似せたおかずを見るが、長生素齋では全ての料理に素材自身の美が表されていて素材本来の味を追求している。馬雪萍さんは、「このような料理は以前にもありましたが、現在ここでは多く見られません。以前は純粋にお参りするだけでしたが、今ではオーナーも仏教を学んでいて、だんだんと理念が心に染みて、さらに穏やかになりました。清浄な心で皆さんにサービスを提供しようとすると、自然と精進料理の真髄に立ち返る」と話す。

手頃なビュッフェのほかに高級な精進料理も出している。

どれも手が込んでいて、精進料理の美しさを表している

 

長生素齋は細やかな精進料理を提供するだけではなく、禅修行に訪れる人に宿を提供する。精進料理店隣の大乗禅院内では、観音菩薩と仏教の開祖の釈迦牟尼仏の涅槃像をまつっている。朝観光客は大乗禅院の僧侶と共に朝の修行を行い、昼は店に戻り丹精込めて作られた料理を味わい、しばし喧騒の世界から遠ざかり、世俗の心を浄化させる。

 

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