胡同コミュニティーに新たな活力 社会貢献にやりがい見いだす若者

 

高原=文 馮進=写真

西四北三条コミュニティーは北京市中心部の長い歴史を有する胡同(路地)にある。この一帯は元代(1271~1368年)の大都を造営する際にゆっくりと形成されていった場所だ。多くの古跡があり、四合院(伝統的家屋)が完璧な状態で残されている。現在、千八百数世帯、4000人以上がここで暮らしている。新しく建設されるコミュニティーには、自治会が組織され、企業が運営を委託されている。しかし、西四北三条のような古いコミュニティーにはそのような組織が存在しない。そのため、住民同士の交流や活動の促進、住民への各種サービスの提供などで重要な役割を果たしているのがコミュニティーサービスステーションだ。このサービスステーションには現在、多くの若者が参加しており、昔ながらのコミュニティーに新たな活気をもたらしている。

 

必要とされる若いスタッフ 

 

周瀅さん(29)は西四北三条コミュニティーサービスステーションの責任者だ。2009年に大学を卒業してからずっとここで仕事をしている。コミュニティーサービスステーションとは、コミュニティーの住民が自治管理を行い、住民にさまざまなサービスを提供する組織。ここで働くスタッフは政府から給与を支給されるが、公務員ではない。サービスステーション自体も政府機関には属さず、社会団体とみなされる。「仕事は全て細かなことです。住民のために証明書を発行したり、隣近所のもめ事の仲裁に入ったり、一人住まいの高齢者を定期的に訪問したりしています。また、文化、スポーツなどのイベントを企画したり、ボランティア活動の計画を立てたりもしています」と周さんは言う。これらの仕事は定年退職者がやってきたが、最近ではこの仕事に参加する若者が徐々に増えてきている。周さんが所属するサービスステーションのように、20代、30代の若いスタッフが半数近くも占めている。この若者たちは高齢者が多いコミュニティーに活力と活気をもたらしている。 

とても明るく、外向的な性格の周さんは、人とのコミュニケーションが大好きだという。金物屋の経営者であれ、警備員の青年であれ、胡同で生活する誰もが周さんを見かけると話しかけたくなるのだという。ある日、周さんは足が不自由なおばあさんに小麦粉を買って届けに行った。そのおばあさんは周さんを見るなり彼女の手を握り、離そうとはしなかった。息子の仕事の話から孫の勉強の話まで、周さんはずっと耳を傾けていた。 

「近所の高齢者を訪ねるとよくあることなんです。私が帰るのを嫌がるんですよ。引き留めようとしてずっとしゃべるんです。高齢者がどれほど関心を向けてほしいのか、面倒を見てほしいのかということが強く伝わってきます。だから、時間がある時にはできるだけ話を聞くようにしています。お給料は高くはないですが、皆さんとの日々の交流がとても楽しいんです。皆さんのために何かができたり、小さな問題を解決したりするたびに、この仕事にやりがいを感じています」

 

NGO団体のコミュニティー参入 

 

コミュニティーに勤めている若者の中には周さんのようなサービスステーションのスタッフ以外に非政府組織(NGO)のメンバーもいる。北三条コミュニティーには地元政府が空き部屋を借りて作った「老街坊」というコミュニティーセンターがある。政府は毎年各NGOが提出した活動計画書に基づいて、どの団体のサービスを購入するかを決める。現在、「老街坊」を運営しているのは「睦友社会活動事務所」というNGO。董全さんは同団体の社会福祉士の一人だ。 

董さんは大学で社会福祉事業を専攻していた。卒業して間もないものの、現在「老街坊」で高齢者向けの中国画、編み物、合唱などの講座運営を担当している。おおらかな性格の董さんは「老街坊」利用者の全員と、とても良い関係を築いている。「大学では社会学、心理学を学んだので高齢者との付き合い方は分かっているつもりです。卒業後、このような仕事に就いた同級生は多くはありません。でも、私はこの仕事がとても好きなんです。小さいころ、うちは生活が苦しかったので、たくさんの人に助けてもらいました。今の私には、皆さんに恩返しできる力があると思います」 

「老街坊」から遠くない所に「常青藤持続可能発展研究所」というNGOが運営している児童活動センターがある。同センターも政府がNGOのサービスを購入する形で運営されている。児童教育に取り組んでいるこの団体は、コミュニティーの青少年に放課後の遊び場や読書の場所を提供するだけでなく、フリーマーケットやピクニックなどのイベントも行っている。

 

「心のドア」を開くための活動 

 

日本に比べると中国のコミュニティー組織は従来から自主性が弱く、一般的に住民の参加率は高くない印象がある。しかし、ここ数年でこのような状況に変化が見られた。新規建設の団地に住む人々は自治会を通じて自分の意思と要求を訴え、自治管理することに慣れている。一方、北三条のような古いコミュニティーではサービスステーションとNGOが住民を自治活動に参加するよう促す「エンジン」となっている。このエンジンが稼働することで住民たちが自発的にさまざまなボランティア活動や助け合い活動を展開するようになった。 

「私たちのコミュニティーでは多くの退職者がボランティア活動に参加しています。体の不自由な高齢者のために食事の材料を買いに行ったり、新聞や本を声に出して読んだり、話し相手になったりしています。医療関係の仕事に就いていた人は血圧を測ったり、補助的な物理療法を行ったりもしています。ろうあ学校で教師をしていた林先生はボランティア活動にとても熱心なんです。そして、防犯のために閉ざしているドアを開け放せるよう、特に『心のドア』を開けるために、警戒心を解き、隣近所と常に交流することで意思疎通を図り、互いに思いやるべきだといつも言っています」

 
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