「我喜欢中国」

 

斎藤萌香

「本当は帰りたくなかった。もっと長く、中国にいたかった。」帰国して一番に、頭によぎった言葉だ。

 今まで、家族旅行や修学旅行で様々な国へ行ってきた。しかしその中で、今回の中国研修旅行は群を抜いて有意義で楽しいものとなった。その大きな理由の一つは、自分の意思で行きたいと思った旅行だったことだ。見るもの一つ一つが鮮明に映った上に、能動的に吸収しているという実感があった。

 例えば、北京に住まわれている人民中国社の方のお宅訪問。初対面の人間をこんなにも温かく迎えてくれるものなのか、とひどく感動した。ご主人は料亭を営んでいるらしく、出てきた料理はどれもむせび泣く程おいしかった。私のお気に入りは、黄金色をしたとろとろの揚げ茄子だ。料理の数々を見て、私は今まで本当の中華料理を食べたことがなかったのだな、と思わされた。

 また、揚州で痩西湖の周りや庭園を歩いたことも、大切な思い出となった。天気が良かったこともあり、そこでの風景は私に「ここにずっといたい。」と思わせるのに充分だった。湖、しだれ柳、小さな舟、書画・・・。中国の美が、そこにはあった。お散歩に来ていた母親が、小さな子どもを叱りなだめる。そんな光景すらも、微笑ましく思えたのだ。

 そして最後の夜は、みんなで火鍋をつついた。今回のPanda杯で審査員となってくださった現地の方も駆けつけ、非常に賑やかな晩餐会となった。会の終盤、審査員の方が乾杯の音頭をとった。彼の大きな「喜中国吗~?」という合図の後、全員で「喜中国~!!」と叫んだ。その空間は、私たち同士の絆と中国への愛で溢れていた。溺れそうなほどに。

 他にも楽しかったこと、感動したことはたくさんある。そのどれもが、生涯を通じて何か重要な意味を持つことになるだろう。

 ただ一つ悔しかったことは、私がまだあまり中国語を話せないため、現地の方々と直接コミュニケーションを図れなかったことだ。中国の人たちは日本にとても興味を持ってくれているし、日本語を流暢に話す人もたくさんいる。それなのに自分はこれでいいのか、とやや自責の念を抱いた。この気持ちを燃料に、これから中国語の習得に力を入れていこうと思っている。揚州博物館で書道をしていた方からいただいた小さな紙に、美麗な楷書でこう書かれていた。「丽发芽、你需要耐心播种。」美しい芽を出すには、こつこつと種を蒔かねばならない。そういった意味の言葉だ。どんなことについても言えるが、私はこれを自身の中国語学習へのエールだと受け取った。読み書きができるだけでなく、実際に中国の方とコミュニケーションをして何かお互いの国に良い影響を与えることが少しでもできれば、本望だ。

 今回の旅行を企画・実行してくださった方々、北京の学生や社員の方、新しく出会った友人、すべての方に感謝しつつ、名残惜しくもあの夢のような一週間を、思い出の箱に仕舞う。


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