村の多忙な兼業郵便配達員 家族の応援得てサービス守る

 

高原=文 馮進=写真

 56歳の韓士江さんは、大興区龐各庄鎮梨花村の兼業の郵便配達員。2009年以前、郵便局のサービスは鎮(中国の行政単位の一つ。農村地区で商業・工業が比較的盛んな町)をカバーする。毎日鎮の郵政車は村民の手紙と小包を村民委員会まで送り、村民委員会のスタッフは屋外のスピーカーで村民に受け取りに来るように知らせていた。以前は村に外からの移住者はなく皆が知り合いで、個人情報についての意識がなく、何でも屋外の大きなスピーカーを通じて連絡することに慣れていた。しかし2009年前後になると、北京では各村や鎮に郵便ステーションが普及し、兼業の郵便配達員が選抜、招へいされ、村にもやっと郵便や小包を配達するサービスができた。

 

一人きりの郵便ステーション 

 

梨花村の韓士江さんは村の郵便ステーションの責任者で、唯一のスタッフでもある。村民委員会の敷地内には独立した小さな建物があり、机の上には配達する新聞、手紙を仕分けする棚が並び、そばには拡声器やメガホン、簡易放送とインフォメーション室機能を兼ね備えている。村民が用を足しに村民委員会を訪れる時、先に韓さんの部屋でぶらぶらして日常のことを話し、最近村で起こった珍しい出来事を聞くことが習慣になっている。  

毎日午後3時頃、鎮の郵政車が村の郵便ステーションに来て、韓さんは当日の新聞、手紙、大小の郵便小包を受け取る。鎮の郵便配達員と簡単に申し送りを済ませた後、選別して郵便を配達する。多い時には一日30数件で、少ない時は4~5件だ。韓さんは、「今では郵便を出す人が少なくなり、ネットで買い物をする人が増えました。私たちの村のように北京と河北省の境界上にあり辺ぴな場所では、多くの宅配会社は村まで配送できず、宅配郵便や村の郵便ステーションに頼って届けるしかありません。なかには背丈の半分くらいの大きな商品を買う人もいて、家に届けるのは本当に大変でした。でも確かに、私たちの村の者だからこそ届けることができますが、外から来た郵便配達員なら届け先が見つかるとは限りません。農村は都市のように番地が順序よく並んでいるわけではなく、またどこの家もみな入り口に番地を表記しているわけでもありません。その上、村は広く家が分散していてさらに探しにくいんです」。現在梨花村には320の世帯あり、時には韓さんでさえも住所録を確認して、やっと具体的な人と番地が正確に分かるほどだ。  

ここに配属される前、韓さんは鎮で専門の業務研修と試験に参加した。研修内容は郵政の基礎知識、金融業務、新聞雑誌発行業務、eコマース、販売、配送知識などを含んでいた。正式に職場に配属された後は、毎月700元ほどの補助を受け取っている。毎年10数万元の収入がある自家梨園を持つ韓さんにとって、この程度の補助は大きなものではないが、ただこの仕事を通して村民のために何かしたいと思ったのだ。

 

専門の郵便配達員、余暇に農民 

 

韓さんが若かった頃、かつて県の販売店(当時供銷合作社と呼ばれた購買協同組合)で仕事をしたことがある。給与が高くない上に自由がなかったため、韓さんはこの「体裁のいい」仕事をきっぱりやめる決断をした。彼が住んでいる梨花村は、数百年の梨栽培の歴史があり、彼の家も20数ムー(約1340平方㍍)の梨園を持ち、その中には200年を超える老木も多い。  

毎年春になると梨の花が野を覆う風景には心も晴れ晴れとする。秋になると異なる品種の梨が枝いっぱい実り、観光客が次々と訪れて梨狩りを楽しむ。村の郵便ステーションが暇な時、韓さんは梨園にテントを立て寝泊りし、昼間は梨狩り観光客の面倒を見、夜は梨園を見張る。「今では梨を盗む人はいません。でも長年慣れていて、ここにいると空気がよくて心地いいですね」と言う。梨狩りの最盛期には、韓さん一人では間に合わないので、息子さんに手伝いに来てもらう。彼の息子や娘は、みな市街地で仕事をしていて、韓さんの言葉を借りて言えば、「収入が月千元でもいいから、市街地へ行きたい」のだという。梨園の商売を手伝うため、息子は仕事を夜勤に変えてもらい、昼は梨園に帰ってきて仕事をする。息子が両方の仕事に忙しいため、韓さんは多少恥ずかしそうだ。「本来梨栽培は私の本業で郵便配達員は副業ですが、現在では逆転してしまった。昼間の大部分の時間は郵便ステーションにいて、暇があれば梨園の仕事をします。仕方ないですね。公の仕事だから、遅れるわけにはいきません」  

宅配業が中国の都市や村に急速に普及するに従って、国営郵便ステーションの存続はますます難しくなっている。今ではネットワークの多さや幅広い地域をカバーするという優位性を発揮し、農村地域の業務を積極的に開拓している。各自然村に設けられた村の郵便ステーションはその農村サービスの重要な一歩だ。村の郵便ステーションは手紙、小包の配送を受け持つのみならず、多くの村では電気、水道代の徴収や、携帯電話料金のチャージ、有線テレビの視聴料の代理徴収、農業関連商品(農薬、化学肥料、種など)の代理購入、配送業務を請け負っている。  

韓さんは隣村の郵便ステーションが郵政電子商取引のプラットホームを立ち上げたことを聞いた。スイカ収穫の最盛期、郵政車は毎日スイカ畑に入り、スイカを載せてネットワークの各街の郵便ステーションに運び、翌日の午前中には、ネットでスイカを購入した市街地の住民に、宅配郵便で新鮮なスイカを受けとってもらう。こうして農産品が市内に入る初めの1㌔と市民の家までの最後の1㌔という運送の難題を解決したのだ。韓さんはこの村の郵便ステーションにも利便性があり農民に利益をもたらすこの業務が一日も早く立ち上がることを願っている。

 
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