ヤシの木を渡る風と波音に酔う

 

海南島の最南端にある三亜は、暖かく情熱に満ちた熱帯の海浜の町だ。市内を流れる三亜河(昔は臨水川と呼ばれた)が河口で東河と西河に分かれ、「丫」の字形になっているため、「三亜」と名付けられた。北緯18度の地域にあることと、特殊な地理的条件により、この辺りの年間平均気温は25度を超える。夏が長くて冬がなく、花が常に咲き、かねてより「東洋のハワイ」という呼び名がある。

清々しい空気、青い海に白い砂浜、熱帯雨林…。これら恵まれた自然の風景が中国全土ひいては世界各地から来た観光客を魅了し、現在、三亜は国際的な観光レジャースポットになりつつある。今月の「美しい中国」は、このさまざまな魅力を持つ海浜の町を訪れる。読者の皆さんには、青い海と空が織りなす美しい景色を見て、「天涯海角」の過去と現在を知り、珍しい熱帯雨林を体験し、蜈支洲島のダイビングの楽しさを感じ、それと同時に少数民族の多彩な文化を味わっていただきたい。

 

三亜にはアクアブルーとエメラルドグリーンの2色しかないようだ。高台に登って遠く亜龍湾を眺めると、この青と緑に囲まれた町から清々しい息吹が感じられる(写真・黄慶優)

 

ロマンあふれる空の果て

「天涯海角にいらっしゃい、ここは一年中いつでも春」。1980年代初め、この『請到天涯海角来(天涯海角にいらっしゃい)』という歌が一時、中国全土を風靡した。歌声が描く天涯海角は一年中春のようで、常に花が咲き、多くの人々が憧れる場所となった。

天涯海角は、三亜市街の南西23㌔にあり、陸地面積は10・4平方㌔、海域面積は6平方㌔、馬嶺山を背にして、広大な南海に向いている。ここの海は青く澄んでいて、ヤシの木が揺れ、奇石が林立し、海と空の色が一つに溶け合っている。入り江の砂浜には大小100個もの岩石がそびえ、そのうち最も古いものはすでに300年以上の歴史を持つ。史料の記載によると、清の康熙53(1714)年、3人の欽天監(官署名、天体現象の観察を担当し、節気を算出し、暦法を制定した)が勅命を受け、下馬嶺の浜辺に来て石に「海判南天」と刻み、これを中国の国土における天地の境界とした。南天は太陽が進む範囲を指し、「判」は二つに分けるという意味で、「海」は南海のこと。つまり「海判南天」の意味は、「南海」が「海判南天」で「天南海北(遠く離れた二つの場所)」に分かれているということだ。その後、雍正年間(1727年)に刻まれた「天涯」の石、それから宣統年間(1909年)の「南天一柱」の石、最後は1938年の「海角」の石まで、その時間の長さと文化の蓄積の厚さにより、天涯海角は海南を代表する観光スポットとなっている。

 

「天涯海角を訪れなければ、三亜に来たとは言えない」。「天涯」と書かれた石の前で記念撮影をする観光客が途切れることはない(写真・陳克)

 

現在、天涯海角が大勢の観光客を引き付けるのには、ほかにも重要な原因がある。そこがロマンと愛情の代名詞になっているからだ。長年にわたって海水に洗われ、滑らかでしっとりしたたくさんの巨石が、海が枯れ石が朽ちようとも死ぬまで変わらない恋人たちの愛情を象徴している。もし恋人たちが手をつないでこの海と空の間を散歩し、真っ青な海や柔らかい砂浜、真っ白な雲、そして時折吹く微風とそよそよ揺れるヤシの木を味わい楽しむなら、その感覚は最高に素晴らしいものだといえるだろう。

 

山と海の間の美しい風景

2008年、馮小剛(フォン・シャオガン)監督の映画『非誠勿擾(狙った恋の落とし方。)』が北海道の道東を舞台にして、観客に北海道の美しい自然風景を見せた。映画の人気が高まるにつれて、一時、中国人の北海道旅行ブームが巻き起こった。それから2年後。続編の『非誠勿擾2』で馮監督はロケ地を寒い北海道から暖かい三亜に移した。馮監督は、美しい三亜で撮影して、主要制作スタッフたちはとても楽しい気分になり、撮影中はまるでバカンスを過ごしているようだったと笑いながら話したそうだ。

 

夕日に照らされた亜龍湾。柔らかな光、大きな海と白い砂浜が一つに混じり合い、この上ない心地よさを醸し出す(三亜市旅游発展委員会提供)

 

聞くところによると、『非誠勿擾2』の3分の2以上のシーンが亜龍湾熱帯天堂森林公園で撮影されたという。同公園は三亜市の南東25㌔にあり、主に飛龍嶺、龍頭嶺、双龍嶺、青梅嶺、亜龍山などで構成されており、主峰である亜龍山は標高450㍍、総面積は1506㌶(約2万ムー)に達する。1500種類余りの熱帯植物と190種類余りの野生動物が生息しており、その名の通りの熱帯の天国だといえる。遊覧車に乗ってくねくねとした山道を進む。頭上には青い空と白い雲、視界に入るのは尽きることのない緑。マイナスイオンを多分に含んだ新鮮な空気が流れてきて、さらに鳥のさえずりや花の香気も加わり、なんという心地よさだろう。二つの山の中腹に架かっているのは、映画の中で葛優(グォ・ヨウ)が舒淇(スー・チー)を背負って歩いた過江龍橋。全長168㍍、地上からの高さは約40㍍あり、最も人気のある場所だ。橋の上を歩くと、近くには連なる山々の起伏、遠くには果てしなく広い大海が見え、一陣の風が吹き、足元の谷の森林が波のような音をたててめくれ上がると、まるで海と空の仙境にいるような感じがした。

 

過江龍橋は亜龍湾熱帯天堂森林公園の人気スポットだ。映画の中のロマンチックなシーンを体験しようと観光客が先を争う

 

過江龍橋を体験した後、遊覧車で熱帯天堂駅へ向かった。滄海楼に登って見下ろすと、亜龍湾全体の美しい風景を視界に収めることができる。ここは青々とした山が三方を囲み、南側は三日月型に大海に向かって開いている。亜龍湾には7㌔に及ぶ長さの白い砂浜があり、その砂はとてもきめ細かい。そして、この辺りの南海は汚染がなく、海水はきれいな透明で、遠くの方は何種類もの青色になっていて、「天下第一湾」とたたえられている。このような美しい風景は多数の外国人旅行客をも引き付けている。ロシアから来た青年、アンドレイさん(23)はもう2回も三亜で休暇を過ごした。彼はロシアなまりの英語で、「亜龍湾はとても美しい。僕は三亜が大好きです!」と言っていた。

 

マリンスポーツの天国

亜龍湾北部の海棠湾に蜈支洲島という美しい小島がある。蜈支洲島の周りの海は透明で澄み切っており、水深6~27㍍まで海の中を見ることができる。海底のサンゴの保護状況は三亜で最も良く、硬いサンゴや柔らかいサンゴが重なり合い、色とりどりで華やかだ。この海域では、ヤコウガイ、ナマコ、ロブスター、サワラ、ウニ、マナガツオおよびカラフルな熱帯魚が大量に生息している。そのため、ここはウエイクボード、モーターボート、フライボードといったマリンスポーツ種目、特にダイビングに最適の場所となっており、「中国トップのダイビング拠点」という美称を持つ。

 

蜈支洲島ではさまざまなマリンスポーツを心ゆくまで楽しめる(三亜市旅游発展委員会提供)

 

新疆ウイグル自治区から来た観光客の呉さん(21)はちょうどボーイフレンドと一緒にダイビングを体験したところで、興奮冷めやらない様子だ。「海底の世界は本当にきれいですね。サンゴとかわいい魚たちが体の近くを通りすぎていく感じは、全く新しい世界の扉を開いたような感覚です。水の中では耳が聞こえず、方向感覚もありません。泳げなくても全く問題ないなんて、すごく不思議ですね」

李承豪さん(38)はここでダイビングを教えているインストラクターだ。彼は毎日、全国各地からやって来る観光客を受け入れ、彼らを連れて十数㍍の深さの海底にもぐり、サンゴ礁や熱帯魚の群れに近づいて、美しい熱帯の海底の様子を楽しませている。「私は最初、青島でダイビングを学びました。青島辺りの海中の環境はこの辺りほどではありません。中国で最も素晴らしい海は海南の三亜にあります。現在、ますます多くの人が『保護することこそ美しいものに対する本当の楽しみ方』という意識を持ち始めていて、うれしい限りです」

 

 

 

 

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