軽快な針運びで緻密に描く

 

 湘繍は生き生きとした絵柄と強い質感が特長。複雑な運針法で、「針の上のバレエ」と称されてきた

2000年を超える古い技

1本の細い針がさまざまな色の絹糸を伴って、上や下、左や右に平らで柔らかいシルクの上を舞い、次々と感動的な絵柄を描いていく。これが「針の上のバレエ」とたたえられる伝統工芸の湘繍だ。

湘繍は長沙を中心とする鮮明な湖湘文化の特色を持った湖南刺繍の総称で、江蘇の蘇繍、四川の蜀繍、広東の粤繍と合わせて、「中国四大名繍」と呼ばれている。蘇繍の構図のうまさや清新な上品さ、蜀繍の運針の厳密さや色使いの柔らかさ、粤繍の糸の多さや色の鮮やかさとは異なり、湘繍は生き生きとした絵柄や強い質感が特長で、「花を刺繍すれば香りがあり、鳥を刺繍すれば鳴き声が聞こえ、トラを刺繍すれば走り回り、人を刺繍すれば真に迫る」とたたえられてきた。

 湘繍作品の『雪豹』は、真に迫っており、シルクの上で生きているようだ

湘繍の歴史は長く、2500年以上前の春秋時代にまでさかのぼることができる。1958年、長沙の楚墓から竜と鳳凰がデザインされた刺繍の残片が発見され、72年には長沙の馬王堆漢墓からさらに刺繍のある着物40点以上が出土した。これらの刺繍のデザインの美しさや職人の針使いの細かさは、人々を感嘆させるほどだ。早くも2000年以上前に湖南の刺繍はすでにかなり高いレベルに達していたことが分かる。 古代、農村の女性たちが衣類や小物入れ、たばこ入れなどを飾るために行っていた針仕事が湘繍の最初の姿だ。長い歴史の中で、不断に民間芸術の栄養を吸収し、改良とレベルアップをしてきた。清の光緒年間(1871~1908年)に画家の楊世焯(1842~1911年)が中国画の技法を湘繍に移植し、刺繍の下絵を描き、さまざまな運針法を編み出し、湘繍の芸術的レベルを高めた。民国時期に湘繍はすでに「中国四大名繍」の一つとなっていた。

現在、民間から生まれたこの針と糸の技は、2000年の発展と変化を経て、質素な職人技を脱し、芸術品として扱われるようになっている。

 

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