時間と伝統が生む山の珍味

 

 伝統的なトゥチャ料理、山里の最高のごちそうだ

臘肉を求めて山奥へ

村の向こう側はこれまで通り青々とした山に囲まれていたが、ここに菜の花はなく、あるのはさまざまな大きさの美しい水田だった。水牛がその中をゆっくり移動し、そばでは赤イヌが気だるそうに地面に伏せて、さらに農村生活の雰囲気を濃くしている。田畑を抜けて、山里の人家に向かう。今われわれは山奥に隠された美食――臘肉を探しているのだ。臘肉は湘西ないしは湖南全体で最も有名な美食だといえる。薫製された肉は、同地の湿度の高い気候でも腐りにくいだけでなく、さらに思いがけない香りと口当たりを備えている。

毎年冬至が過ぎると、この辺りの家々はどこも黄道吉日(何をしてもうまくいくとされる日)を選んで、1年育てたブタを処理する。皮が薄く赤身と脂身がちょうどいい新鮮な肉を棒状に切り取り、塩とその他の調味料をまぶして漬け込む。しっかり漬かった肉に穴を開け、ちまき用の葉の茎や細い麻縄を通し、輪を作って結び、水平に架けられた細い竹竿に掛ける。こうして長い薫製の過程が始まる。

 いろりに、いくつかの薪、全さんの家では湘西の最も原始的かつ一般的な臘肉の薫製法を守っている

湘西の山岳地帯にある農家の堂屋の中央には、どこも冬の間消えることのない大きないろりがあり、これがちょうど臘肉を薫製するのに素朴で自然な方法を提供している。いろりの上には上げ下げできる大きな鉄のフックがあり、大鍋あるいはやかんが掛けられ、料理や湯沸かしに使われる。漬けて干した肉の塊をいろりの上に掛けると、暖房や料理のときにいろりから上がる煙で自然と肉の薫製ができる。このような薫製の過程は長く、ゆっくりかつ十分で、さらに燃やされる木材に特殊な香りがあるため、こうして薫製された臘肉は見た目は良くないが、塩気がきいていて、油気はあるがくどくなく、かんでいると口の中に唾液があふれてくる。

 

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