第19回党大会を前に考える中国と世界

 

2049年を視野に

そして、内政と外交政策は対を成すものとして見なければならない。

「第13次5カ年計画」は中国の経済成長が「新常態」(ニューノーマル)に入ったとされてはじめて策定された「5カ年計画」だが、「2020年までに小康社会を全面的に実現する」という「5年間」の目標にとどまらず、「2つの百年」すなわち2021年の中国共産党結党百周年、さらに2049年の中華人民共和国建国百周年までをも「射程」に入れて中国社会をどのような姿で発展させるのかを提起している。そこでは、「革新(イノベーション)」「調和」「グリーン(環境)」「開放」そして「共有(わかちあい)」という5つの発展理念が語られている。内政と外交は対をなすと書いたが、ここが重要なところだ。この5つのキーワードは、今まさに世界が直面する課題を言い当てている。

いうまでもなく、中国の社会発展プロセスでは矛盾やリスクの増大にも直面するということは習近平主席をはじめ指導者、研究者・専門家が随所で語っていることでもある。すべてが容易く進み、一直線に達成できるものではない。曲折を経て、問題や困難を一つひとつ解決、克服していく道をたどることは当然だろう。

中国共産党第18回全国代表大会は2012年、北京で開催された

前回大会から5年を経て、課題とどう向き合い、どのように問題を乗り越えてこれからの「二つの百年」をめざすのか、まさにそのカギとなるのが19回党大会だと言える。

中国の台頭という「現象」に、世界には、戸惑いや「ためらい」がないわけではない。中国がグローバルガバナンス形成の主導者の一人として登場したことを容易に受け入れることができない「旧思考」の人々もいる。20世紀的世界から世界は新たな段階に歩みを進めていることに正面から向き合うことを避けようとする人々もいる。しかし、世界は動く、時代は進化し、深化する。日増しにそのスピードを加速しながら、である。ならば、われわれが採るべき態度は、共に考え、共に課題を克服し、手を携えて新たな世界のあり方をめざすということではないか。

さて、そして、最後に回りまわって、日本のわれわれのあり方に問題はめぐってくる。ここまでの考察だけでも、もはや「中国をどう封じ込めるのか」あるいは旧来の西欧・欧米型の「価値観」に「中国をどう従わせるのか」という発想では、これからの21世紀世界は生きられないことは明白である。これからの日中関係を構想するときに、この視座に立てるかどうか、われわれの試練の時でもある。

第19回党大会を迎える際にわれわれが留意すべきいくつかの視点について述べた。もちろん、これで網羅されているわけではない。しかし、今大会は、述べたような世界の大きな「変化」のなかで、「次の5年」にとどまらず今世紀半ばまでを視界に入れた、重要な画期となる党大会になることは間違いないだろう。(9月26日記)

 

木村 知義

(きむら ともよし)

1948年生まれ。21世紀社会動態研究所(個人研究所)主宰。多摩大学経営情報学部客員教授。元NHKアナウンサー。70年NHK入社。報道、情報番組を担当。アジアをテーマにした番組の企画・制作にも取り組む。90年中国放送大学「日本語講座」制作協力で訪中。

 

 

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