王焱=文
中国の都市化が絶えず進む中、コミュニティーづくり(4)が社会の進歩の中で果たす役割もますます大きくなっている。2013年8月30日、習近平総書記は瀋陽市で市民生活を視察し、地元の人々に対しこのように語った。「コミュニティーづくりとは隣人との関係を良くし、隣人を友とすることだ」
孤独をなくす試み
17年6月13日午前10時、安徽省合肥市包河区濱湖世紀コミュニティー瓊臨住民委員会(日本の町内会に似た組織)のイベントルームは、色とりどりの飾りに彩られ、明るい笑い声に満ちていた。十数人の高齢者が楽しそうな様子で輪になって座り、そのうち八、九人の真っ赤なチョッキを着たボランティアは一心不乱に長寿麺を打っていたり、高齢者とお茶を飲みながら話に花を咲かせている。これは「劉おばさん」ボランティアチームがこの区域に住む高齢者の方々のために開いた集団誕生日会だ。
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「劉おばさん」ボランティアチームは定期的に高齢者を集めて出し物を披露する(写真・王焱/人民中国) |
リーダーの劉芸さん(62)は合肥鋼鉄会社を定年退職し、付近の住宅地に住む数人の熱心な住民と共に15年11月にボランティアチームをつくった。今では50~60歳の退職女性を主とする30人のチームになった。チームの主な対象は身寄りのない高齢者や貧困家庭だ。「住民委員会の情報によって、多くの高齢者や子どもが孤独だということを知りました。私たちは彼らの家に行きおしゃべりをしたり、血圧を測ったり、掃除をしたり、代わりに買い物に行ったりするのです。毎週少なくとも2回ボランティア活動を行っています」。小麦粉をこねているボランティアの張さんが次のように教えてくれた。「私たちは報酬をもらっていません。食材を買う代金は住民委員会の補助金でまかなっています。劉さんからこのチームのことを聞き、退職してから時間が有り余っていたので参加しました。隣人の手助けになれて充実した気持ちになれます。チームの制服を着てこの付近を歩いていると大勢の住人から声をかけられるんです」
革新を追求し自治へ
中国の従来のコミュニティーシステムでは区政府の下に街道事務所があり、その下に住民委員会がある。住民委員会は住民に関する一般事務を処理し、政府から命じられる行政管理の任務も引き受けなければならない。経済の発展に伴い、人口の密度や流動が大きくなり、行政管理の難しさも増していった。一方では生活水準の大幅な向上によりコミュニティーに対する住民の要求も高まり、従来の「居政不分(住民の生活関連業務と行政業務に両方対応する)」というシステムが運営しづらくなっていった。
「日本のコミュニティー管理体制では行政管理機構に属する地域の中心が公共サービスや行政機能を実現させ、居住地域の議会や町内会など各クラスの組織が住民の自治を実現させています」。合肥市包河区党委員会の常務委員の呉紅さんは世界各国のコミュニティー管理システムを専門的に研究したことがある。呉さんは次のように語った。「われわれは日本などのコミュニティー管理の経験を参考にして、濱湖世紀コミュニティーを設立した当初から『居政分離』の管理理念を確立し、住民委員会から行政管理機能を切り離しました。
「われわれはコミュニティーサービスセンターを設立し、政府がコミュニティーで公共サービスと行政管理を実施する執行機関として以前の街道事務所(町役場)や住民委員会が担当していた各種行政機能や管理的な事務を引き継ぎました。執行の認可に必要な部署を減らしたことによって各種業務を着実にこなすスピードがより速くなり、効果もより明らかになり、公共サービスの質が上がっていきました」
住民委員会は政府からの仕事を引き受けることはせず、近所トラブルの仲裁や物件管理会社の業務の監督、住民討論会によるコミュニティーの日常事務の決定などに集中するようになっている。現在、濱湖世紀コミュニティーには一つあるいは二つの住宅地ごとに住民委員会が設置され、全部で八つある住民委員会には一般住民の中から選挙で選ばれた40人の担当者がいる。給料はなく毎月数百元の電話代しか出ない。
住民の考えを反映
最初、多くの住民は自治に対し不慣れな様子だった。呉さんは「そのため、われわれは大々的に専門のボランティアを招いて自治業務の手伝いをしてもらい、住民委員会が徐々に本当の意味で自治のレールに乗ることを後押ししました」と当時の活動を話した。
「コミュニティーの住民が処理したいことがあれば直接共同統治理事会の民意募集委員会に議案を提出できます。理事会の申請が通れば専門の運営委員が対応します。運営資金は政府の支出金と理事会の募金でまかないます。現在理事会にはいずれも選挙によって選ばれた理事長1人、副理事長6人、理事10人がいます」
コミュニティーの住民である張承梅さんは、ある学校の門の前の横断歩道に「白黒のしま模様」が塗られていないことを心配していた。「しま模様がないと子どもの登下校が不安になりますし、どの部門が責任を取るのか分かりません」。共同統治理事会設立後、張さんはすぐに議案を提出した。議案が申請を通過するとすぐにプロジェクト運営委員会が交通管理部門に委託してしま模様を引かせた。その資金は理事会が支出した。
「今は物事の決定に自分たちが関われるので、全員が非常に積極的です」。コミュニティーの住民の黄子鳳さんが話す。「住宅地のインフラ整備、生活汚染の処理、子どもの集中課外講習など、どれも理事会が解決することを望んでいます」
自治は住民の帰属感と同一感を日増しに高めた。党員が先頭に立ち、「劉おばさん」や「濱湖チーム」などのボランティア団体が自発的に生まれ、コミュニティー書画協会、読書クラブなどの民間公益社会組織も成立し、年越しや祝日には住民が自ら創作した出し物を披露する。
呉さんによると、現在、濱湖世紀コミュニティーモデルを参考にして同エリアで10万人の人口を有する方興コミュニティーが第2の新型コミュニティーとして建設された。
中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(第18期3中全会)では政府機能の転換を速め、法治型とサービス型の政府をつくり上げることが提起された。自治権を住民へ渡すことはこの改革の流れと時代の動向に沿ったもので、新型コミュニティーづくりに対する探求は合肥だけではなく中国各地で現在積極的に展開されている。
人民中国インターネット版
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