自動翻訳機に期待高まる

王焱=文

旧約聖書の「創世紀」の中に「バベルの塔」について次のように書かれている。当初、全ての人類は同じ言葉を使い、みんなが協力して、天国に通じる巨大な塔を作ろうとした。ますます高くなる塔に神は驚いた。人類の計画を阻止するために、神が人類の言葉を乱し、お互い通じない違う言葉を話すようにしたため、人類はコミュニケーションも協力もできなくなり、塔の建設が棚上げされてしまった。

言葉は巨大な力を持っている。人と人がコミュニケーションできれば、共に行動できる。コミュニケーションできなければ、協力できないばかりか、さらに誤解や紛争が生じる可能性もある。

現在、科学技術の進展につれ、「バベルの塔」は中国の企業によって再建されることになった。その企業は安徽省合肥市に本社があるアイフライテック社(科大訊飛)だ。

科学技術で隔たり解消

今年6月27日『MITテクノロジーレビュー』誌が選定した今年の「スマート・カンパニー50」が発表された。アイフライテックという中国の企業は初の50入りを達成しただけでなく、ランクインされた9社の中国企業の中ではトップの6位に輝いた。選定された理由として、同誌は次のように評価している。「同社の音声アシスタント技術は中国版のSiri(アップルのスマホ向けの秘書機能アプリ)だ。そのリアルタイム翻訳技術はまた素晴らしい人工知能(AI)の応用例で、なまり、方言、雑音の問題を克服し、中国語を正確に十数の言語に訳すことができる」

「英語や日本語などの外国語だけでなく、現在はウイグル語を処理する機能を開発し、新疆ウイグル自治区でも活躍できるようになっています」と、同社の展示ホールでスタッフが紹介してくれた。「今後、チベット語とモンゴル語を含め、弊社の翻訳機はより多くの少数民族の言葉に対応していきます」

アイフライテック社が開発したAIロボットたち(写真・王焱/人民中国)

今年3月に開催された「両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)」で、アイフライテックの製品「訊飛聴見」は李克強総理の行った政府活動報告のネット生中継においてリアルタイムの自動字幕生成という役目を完璧に果たした。安徽代表団の活動報告に対する審議に参加する際に、李総理は多言語通訳機「暁訳」を利用し、その優れた音声認識と翻訳能力を体験し、そのコア技術が世界最先端を走っていることを知ると、親指を立てて称賛した。今年5月に北京で開かれた「一帯一路」国際協力サミットフォーラムにおいて、多くの日本人記者もよりタイムリーに代表・委員たちの発言を記録するために、アイフライテックの音声認識ソフトを利用している光景が見られた。

アイフライテックの音声認識技術はまた日常生活でも幅広く応用されている。通信、金融などの業界から企業、個人ユーザー、スマホの音声アシスタントから車載の測位システム、家電製品からおもちゃに至るまで、中国人の日常生活で応用されている中国語音声技術の70%が同社によるもので、「暁訳」も次第に人々が海外旅行する際に便利に使える「通訳助手」になっている。現在、アイフライテックのサービス利用者数はすでに9億人を超え、市場価値は400億元に達し、8000人の社員を持つ規模になっている。

来たるべき未来で、同時通訳という職業はなくなり、アイフライテックの製品は異なる言語による対話の障害を克服し、全人類が再び共に行動し、「人類運命共同体」という「バベルの塔」を構築することに寄与していくとますます多くの人々が信じている。

AI分野に布石

音声認識技術の成熟も人類とAIとの対話を実現するための基礎を作り出した。

昨年4月26日午前、習近平総書記は安徽省合肥市にある中国科学技術大学先端技術研究院を訪れ、ハイテク企業の科学技術成果の展示を視察した。AIロボットの展示コーナーで突然「こんにちは、総書記。私は曼です。お待ちしておりました」という声が聞こえた。それはアイフライテックが作った丸い形の頭をしたロボットのあいさつで、習総書記の興味を引いた。

一方、AIロボットのビジネス化についての試みも始まっている。今年7月7日、アイフライテックはAIロボット「アルファエッグ」を発売した。これは教育・付き添い機能を主とするAIロボットで、教育・テレビ・ビデオ通話・スマートスピーカー・日常会話交流の機能を搭載にしている。

「今後、われわれは新しいAI生態系の構築に尽くします」。同社の創始者チームの1人である徐玉林さんは語る。「2014年、AI時代が到来するとともに、弊社は『訊飛超脳(スーパー頭脳)計画』を打ち出し、機械が聞いてしゃべるだけでなく、知ることと考えることもできるようにすることで、中国語の認知・スマート計算エンジンを作り出し、家庭生活・教育・カスタマーサービス・医療などの分野におけるAI応用をけん引していくことを目指しています」

16年5月30日、習総書記は中国科学技術革新大会で「中国が強くなるには、中国人民の生活がよりよくなるには、強い科学技術がなければならない」と述べた。アイフライテックの成果は近年中国が取り組んだ科学技術の発展の縮図だ。

 

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