貧困からの脱却に新戦略

 

 

都会から来た周書記

15年10月某日、西部鉱業グループ有限会社の作業場主任の周義青さんは上司に呼ばれた。行ってみると、上部機関が彼を西寧市管轄下の大通県東至溝村へ派遣し、貧困支援の第一書記に任じるというのだ。いままで全く農村生活の経験がなく、農業の知識が一切ない周さんはこの異動に対していぶかしむとともに、ある種の好奇心も抱いていた。家に戻ったら80歳になる母親も心配そうに、「農村へ行ってお前に何ができるのかね?」と聞いた。周さんは「農作業はできないけど、他の方法を考えつくよ」と答えた。

東至溝村に着いた初日に、周さんは現地の状況が想像以上だと分かった。村に入ると見渡す限り日干しれんがの家、土壁、未舗装の道路であり、山腹の畑にまばらに植えられていたのはジャガイモや小麦、アブラナだった。さらに、現地の村人の学歴は最高でも中学校卒業で、しかも皆は貧乏な生活に慣れた様子で、政府から支給された救済金を待っているだけだ。周さんはすぐに両肩にのしかかる責任の重さを痛感した。

陳さん(右)の家を訪れ、村の貧困脱却に関する具体的な取り組みを説明する周さん(左)(写真・沈暁寧/人民中国)

それから、周さんは同村の党支部書記の白玉橋さんら村の幹部と家々を回り、彼らの貧困の原因を詳しく調査し、村民委員会の指導に従い自力で更生して貧困から脱却する自信を持つよう説得に努めた。夜になると、村の幹部たちと集まり、村全員が貧困脱却できる措置を相談した。

検討した結果、村の状況と村人の生活を変える一連の方法を決めた。周さんたちは西寧市貧困救済弁公室へ産業救済資金164万元を申請し、経済価値のある種牛とニワトリを購入し、村人に養殖を奨励した。村人が輸送業で稼げるように、貨物用オートバイも購入した。同時に、村人を率いて道路を整備し、住宅を改修し、村の交通、居住、衛生環境を変えることに努めた。周さんはさらに村の女性たちの調理技術を訓練するために、都市から経験豊富な料理人を招聘した。

特筆に値するのは、周さんと村の幹部たちが産業救済資金の中から25万元を出して漢方薬のトウキの種苗を購入し、1戸当たり2ムー(0・13㌶)分の種苗を村人に配ったことだ。後に、彼らは農民たちのトウキ栽培の収益を確保するために、漢方薬会社と元金を保証する買い上げ契約を結んだ。16年4月、全村でトウキを植え付け、10月の収穫のシーズンを迎えると村人は最高で1万1000元、最低でも4000元の収入を手に入れた。これは従来の農作物栽培より1ムー(0・06㌶)当たり1000元も多く稼げた。

陳富元さん(46)は母親、妻、娘と4人で暮らしている。15年に一家はまだ日干しれんがの家に住んでいたが、村の貧困救済活動の下で、彼は牛2頭、ニワトリ30羽を飼育し、3ムー(0・2㌶)のトウキを栽培し、昨年の収入はいきなり1万6000元にまで上った。今年、陳さんはさらに豚を二十数頭飼育し、調理技術を身に付けた妻も近くの観光地で飲食店の経営を始めたため、家の収入はさらに増えた。現在、日干しれんがの家は本物のれんが造りの家に改修され、部屋の土床にも整然としたタイルが敷かれている。増えた収入は、生活を改善しただけでなく、家族に将来に対する希望を抱かせるようになった。「もう少しお金を稼いだら、母親と娘を連れて北京旅行に行きますよ」と陳さんは満足げにほほ笑む。ますます裕福になった生活について陳さんの妻は「周書記と村の幹部に感謝しなければなりません。彼らのおかげで良い生活ができたのですから」と感動を隠しきれないようだった。

各貧困家庭の状況や貧困の原因、そして貧困脱却プランを詳細に記録したノートを見せる劉副局長(写真・沈暁寧/人民中国)

1年余りの農村貧困救済活動を通じて、周さんは自らの成長ぶりも感じた。「かつて工場で働いたときは指示して生産を監督するだけで済んだのですが、農村で仕事をするに当たり繰り返し村人を説得しなければなりません。これで私は仕事における我慢強さを鍛え、人とコミュニケーションをとる方法も身に付けました」という。周さんの任期は間もなく終了するが、この土地とここの村人との別れが名残惜しい。「いま離れるのは本当につらいです。成し遂げていない仕事がまだたくさん残っているし、村人を豊かにする多くの考えがまだ実現されていませんので」。しばらく前に帰省したとき、日に焼けて真っ黒になった周さんを見た母親は「お前はまだ農村で何かやりたいの」と聞いた。

田家寨村と東至溝村の貧困脱却の事例に言及すると、西寧市農牧・貧困救済開発局の劉海雲副局長は顔に喜色を浮かべた。劉副局長によると西寧市管轄下の貧困地域でこのような成功例は珍しくない。16年に同市の80の貧困村の2万6000人が貧困脱却を実現した。17年に100の貧困村の2万5000人が貧困脱却を実現し、18年に150の貧困村1万4000人が貧困脱却を実現することで、同市全体の貧困脱却の目標が実現するという。「2020年までに小康社会を全面的に実現するという目標まであと2年。貧困から抜け出せた人々の生産と生活をさらにしっかりとしたものにし、貧困状態に戻らない(8)ように保証し、全員で小康生活が送れるように頑張ります」と語る劉副局長は自信に満ちあふれていた。

この目標の達成に向けて、周さんのような貧困救済幹部が現在西寧市に数百人もいる。彼らは都会の生活を離れ、貧しい辺ぴな農村地区に入り、現地の農民と共に暮らし、共に働き、彼らを率いて豊かになる道を切り開くことに努めている。彼ら幹部の間ではこのような言葉が流行っている。「人民に奉仕することは苦しいことではない。どんなに苦しくても疲れても幸せを感じる」

 

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