沈暁寧=文
万里の長城から西へ延々と続いたその先にある甘粛省西北部の祁連山脈と陰山山脈まで広がるゴビ砂漠には、640年以上の歴史を持つ関所が今なおそびえ、見る者を圧倒させている。これこそ万里の長城の起点である嘉峪関だ。数百年間、この軍事要塞はゆっくりと辺境の要に変化を遂げていった。1958年、中国政府が嘉峪関に酒泉鋼鉄工場を建設し、西北地方の大手重工企業の成長に伴い、現地の経済と人口規模が次第に拡大していき、65年には都市にまで発展した。
数十年にわたって、嘉峪関市はずっと工業で栄えてきた。中国の発展の動向と改革の歩みに沿って、さらなる成長を遂げるために嘉峪関市はこの5年間で経済構造と産業の高度化において大きく改革し、古き工業都市を現代的で魅力あふれる中国西部の人気都市へ変えた。
成長する企業に社員も満足
嘉峪関市から北へ15㌔先にあるゴビ砂漠には45平方㌔以上の面積を持つ工業団地がある。敷地内には工場が所狭しと建ち並び、道路には資材や製品を運送する大型トラックの往来が絶えない。甘粛中威斯アルミニウム業有限会社も団地内にある企業の一つだ。
2013年7月、長きにわたって製鉄業で繁栄してきた嘉峪関市はハイテクノロジー技術を導入し、工業構造を改善する発展構想に基づき、東南沿海地域からアルミニウム合金を生産する中威斯アルミニウム業有限会社を誘致し、市の工業製品のラインナップを豊富にした。14年8月に会社の操業が始まり、建築材料として用いられるアルミのインゴットは嘉峪関市から中国各地へ輸送された。
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中国西部の特徴が融合したテーマパークは市の観光業に新しい風を吹き込んだ(写真・沈暁寧/人民中国) |
中威斯のスタートは好調だったがアルミインゴット市場はすでに飽和状態だった。そこで会社は思い切った経営戦略を取り、ノルウェーから先進的な生産設備を導入し、自動車のタイヤホイールと燃料タンクを製造するミドルレンジ・ハイエンドのアルミ製品の加工を始めた。会社の責任者は記者に、この技術が16年に16億元の利益を生み、今年は22億元に達する見込みがあることを話した。中威斯の成長はこれで終わりではなく、現在はさらに先端的な宇宙航空製品の生産を検討している。
会社は利益を上げることに鋭意努力している一方、社員に手厚い実益と自信を与えている。劉旭さん(28)は入社して3年にも満たないが鋳造現場の主任として42人の部下を管理している。劉さんの月収は約7000元で、これは嘉峪関市の平均月収よりも高い。普通車を持ち、市内に120平方㍍のマンションを買い、妻子と共に暮らし、今は2人目の子どもをつくろうかと考えている。「中威斯で仕事していると自分と会社の成長を実感できます」と笑顔で話してくれた。
嘉峪関市には中威斯のように技術の向上で成長を図る企業が少なくなく、会社のレベルを上げながら現地の経済成長に寄与し続けている。嘉峪関市発展・改革委員会のデータによると、過去5年間で市全体のGDPが年間13・6%増加し、今年の上半期で工業増加値(付加価値増加値に相当)が42億7300万元に達した。都市部と農村部の住民の平均年収はそれぞれ3万714元と1万5371元で、年間12・1%と14・3%上昇し、中国政府が提起した一般庶民の生活水準の向上と改革発展の同時達成を体現している。
特色を生かした夢の国
古から残る道に、ゴビ砂漠を囲む雪山、嘉峪関が持つ豪放磊落で雄々しい西部の風土は強い蒸留酒のように無数の人々の心に英雄の姿を思い起こさせる。特に嘉峪関から西へ380㌔先にある、世界に名高い敦煌遺跡は国内外の多くの観光客を呼び、荒涼とした風景の中で歴史的情緒を感じさせる。
近年、嘉峪関市は発展の進路を変え、製造業中心の経済構造から観光産業に比重を置き、嘉峪関の観光資源がさらなる経済効果を発揮するように調整している。嘉峪関市観光局の張東生副局長はこのように話す。「かつては観光客がここまで来て嘉峪関と万里の長城だけ見て、半日も滞在せずに敦煌へ行ってしまいましたが、最近新しい観光スポットとして開放した魏晋古墓やゴビ地質公園などで観光客を引き付けられています。われわれはここを通過点ではなく宿泊地にするつもりです」
嘉峪関市の観光開発計画において方特歓楽世界が成功例として挙げられる。15年4月に深圳華強グループは嘉峪関市が中国西部の中心地であるという地理的優位性に目を付け、現地に投資し中国において14番目となる方特テーマパークを建設した。
この方特パークは中国西部文化の特徴が溶け合い、ハイテクノロジーを駆使したシルクロード、タングラ山脈、中華宇宙基地、方特キャッスル、ジェットコースター、3Dシアター、魔法のお城など20以上の大型アトラクションがある。大人が楽しめるさまざまな出し物や子どもが大好きなゲーム、さらに若者好みのスリル満点のアトラクションまであり、嘉峪関方特は瞬く間に中国西部の「ディズニーランド」と化した。「方特が開業半年で96万人の入場者を達成したことはわれわれの予想をいい意味で裏切りました」と嘉峪関方特歓楽世界観光発展有限会社営業部の李佐主任は話した。
方特パークに大勢いる来場者の中から取材を受けてくれた、白鳥の湖の前で写真を撮っていた張さん(24)はここに来るのが2回目だという。「ここの『火流星』っていうジェットコースターにハマってしまって2回連続で乗りました。お城とかの建物もどれもきれいだし、記念に写真に収めました」。張さんは続けて「家は新疆ウイグル自治区のハミ(哈密)市にありますが、高速列車に3時間も乗ればここに来られます。土曜日に方特で遊んでから嘉峪関に泊まり、月曜日に仕事があるので日曜日に帰ります」。幼稚園の先生をしている張さんが子どもたちに方特の話をしたところ、大半の児童が自分より先に方特に遊びに行っていたことが分かった。
「方特は嘉峪関観光業の新たなスターです」。張副局長はこう話す。「方特は市の従来の観光資源に現代的なパワーを注入してくれました」。12年から16年にかけて嘉峪関市の観光客数は延べ281万4300人から延べ702万人に増加し、観光収入も16億1900万元から45億3000万元まで増大した。さらに観光業の発展に伴い、飲食業やホテルや交通機関などのサービス業の売上も増加した。この5年で嘉峪関市サービス業の生産額は平均で年間11・8%という急速な成長を遂げている。
シルクロード国際観光祭、国際トライアスロン大会、嘉峪関国際短編映画祭など世界的な文化・スポーツイベントがすでに何度も嘉峪関で開催されているという。「工業の高度化を図り、強じんな農業をつくり、サービス業を発展させる。歴史ある嘉峪関は全く新しい発展の道に沿って、工業文化観光都市へ転換している最中です」と張副局長は語った。
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