義務教育率は99・7%に

沈暁寧=文

中国西北の内陸に位置する嘉峪関市の経済発達レベルは東南沿海地域に及ばないが、教育理念や教育方法に関しては後れを取っておらず、学生たちは自由にのびのびと快適に成長することができる。この状況は教育を重視する現地の伝統によるものであり、真剣に取り組み、進んで奉仕者となる教師の活躍のおかげでもある。

子どものメンタルヘルス重視

嘉峡関市第一中学(日本の高校に相当)は夏休みでも登校する生徒が後を絶たない。彼らの中には来年の大学受験を控えて補習授業を受ける学生もいれば、各種クラブ活動に参加する学生もおり、彼らはまるで家にいるかのように校内で自由に過ごす。

同校の周哲校長は心理教育に長年携わっており、「心理3原色」から教育理念のヒントを得たと話している。「いわゆる『色』とは全て赤、黄、青の3原色の組み合わせによるものです。私は生徒のあらゆる才能を伸ばしたいと思っていて、まずは生徒たちの基礎づくりをしなければならないと考えました。そのため、生徒たちの体と心と脳を育てることを本校の最も重要な業務としました」

周校長の「体と心と脳」3原色教育理念に応じて嘉峡関市第一中学では「オリンピック精神の教育」「メンタルヘルス教育」「科学精神のトレーニング」を行い、生徒たちに健やかな体と健全な人格、現実を見据えて革新を続ける学習精神を身に付けさせようとしている。同校ではプール、エアロビクス、武術、バスケットボール、卓球などのスポーツ科目から好きな種目を選ぶことができる。15年、同校のサッカー部は優秀な成績を収め「全国青少年校内サッカー特色学校」に選ばれた。

今年1月25日、生徒たちはニューヨークの国連本部に招かれ中国舞踊を披露した(写真提供・嘉峪関市第一中学)

学校の4階には生徒の心理相談のための箱庭療法コーナー、リラックスコーナー、カウンセリング室と感情を自由に吐露できる教室などが設置されている。学校は定期的にメンタルヘルス教育の専門家を招き、教師に講義を受けさせ、生徒に知識を教え、会話やゲームなどを介して子どもたちの精神的な戸惑いや不安定な気持ちを取り除く。学校のメンタルヘルスサイトでは生徒たちがいつでも自分の心理状態に対し科学的なチェックをすることができる。

科学分野の探求において嘉峡関市第一中学では一般的な授業の他に建築デザイン、電子制御、基礎ロボット工学、模型製作、現代農業技術、家政・生活スキルなどの実際の生活と近い関係を持つ課外授業を導入し、生徒たちは手や頭を動かしながら教科書では学べない知識を身に付ける。「かつて生徒たちを工場へ行かせて1人ずつハンマーを作らせました。ハンマーとはいえその製作過程は簡単ではありません。実践によって生徒たちは忍耐と注意深さを身に付け、自分自身の足りないところに気付き、旋盤や大工などの技術を理解するのです。教育効果も高いです」と周校長が例を挙げて説明してくれた。

学校の主役は生徒

「教師の存在によって学生は素晴らしさを感じ、学校の教育によって学生は未来に憧憬を抱く」。校舎に掲げられたスローガンには嘉峡関市第一中学の生徒と教師と学校の関係が映し出されている。「われわれの教育は詰め込み式(9)ではなく、教室を開放し教師と生徒が互いに交流することです。教師は生徒の先導役と模範になり、生徒の友人にならなければいけません」と周校長は話す。

「校長先生は優しいおじさんって感じですね。何でも話せます」。高校3年生の盧佳伊(17)さんが笑いながら話してくれた。積極的な性格で読書家の盧さんは2年前に入学したばかりのときに周校長に読書クラブの設立を申請した。彼女の考えはすぐに学校側の支持を得て、盧さんは活動場所を提供してもらっただけではなくさまざまな書籍ももらえた。新入生にとって大変喜ばしいことだった。

生徒が砂の上に配置した模型の状況を通じて教師は彼らの心理状態を理解することができる、と箱庭療法コーナーの効能を語る周校長(写真・沈暁寧/人民中国)

週に1回の読書クラブの活動にはあっという間に100人以上の生徒が集まった。盧さんは代表者としてより豊かな読書活動の計画を立てた。このとき、教師たちが彼女に朗読大会や読書で得た経験を語り合う会を開催するなどのアドバイスをし、さらに休み時間を利用して朗読の指導を積極的に行った。このようにして盧さんの読書クラブは活発的なものになった。「最初は親からクラブ活動で学業がおろそかにならないかと心配されましたが、今では授業以外の活動で知識を増やす私を見て、クラブ活動が成績アップに役立つと分かったみたいです」。盧さんは続けてこう話す。「私はこの学校が大好きです。クラスの先生の異動時は別れが本当につらくなります」

「『厚声』とはわが校の校訓です。意味は努力を重ね、厚く蓄積した力を少しずつ発揮し(10)、その声を遠くまで響かせる、です」。周校長が語る通り、生徒たちの総合的な素質の育成を重視している嘉峡関市第一中学の生徒は学業と人となりに非常に良い教育成果を得た。同校は「全国中学トップ400」の一つに選ばれている。

嘉峪関市第一中学の状況は現地の教育の縮図だ。嘉峪関市は5年間で合計13億元を幼稚園、小中学校、高校を含む87カ所の市の教育機関に投資し、校舎の建設や教育設備の購入や設置を行い、教育環境を大幅に改善した。さらに教師の人数を増やし、教師の待遇をアップして能力の育成も引き続き行い、生徒に良質で安定した教育リソースを提供している。データによると、現在、嘉峪関市の都市部と農村部の幼稚園の入園率は97・8%で、小中学校の義務教育率は99・7%に達している。特にこの5年間で現地の大学受験生の受験合格率は90・4%になった。嘉峪関市教育局の華来迎副局長は「われわれは嘉峪関を中国西部における人材の揺り籠にする」と誇らしげに話してくれた。

 

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