中国との「共生」こそ日本の生きる道

AIIB顧問 鳩山由紀夫(談)

不正への厳しさと共生の心

 私は習近平主席には、日本に来られた副主席当時からお目にかかっていましたが、主席になってからの手腕には、「虎もハエも叩く」という言葉で、犯罪の大小に関わらず腐敗退治を強く主張するなど、大変力強いものを感じています。今まで中国国内の改革には国が中心となり、地方の官僚も含め大きな指導力を発揮してきましたが、その背後には様々な腐敗が生まれ、放置すべからずと相当強い権力を使われたと思います。さまざまな批判もあるでしょうが、私は決意を断行する勇気を評価したく思います。

国を統治するために法律があり、その法律を国民が守っていくのは大切なことです。日本がそうであるように、中国も大きく社会構造が変化したため、権力にたかるさまざまな腐敗の構造ができてしまいがちでしょう。それに対して法律で規制する態度を示し、国民にも法の遵守への意識を持ってもらうことは、法治国家の基本だと思います。法には裏表があり、法の目をかいくぐろうとする人々もいますが、それにも厳しくあろうという姿は、優れた指導者だと言って良いと思います。

最も印象に残っているのは、「一帯一路」構想を世に問われたことで、このような新しい発想を世界平和のために打ち出されたことを、高く評価したいと思います。私は「一帯一路」のフォーラムに参加し、各国首脳の演説を遠くから拝見しましたが、習主席の演説には特に感銘を受けました。

 「一帯一路」構想は一般的に、インフラ整備でユーラシア大陸の国々を中心に連結性を高め、特に発展途上国の経済発展を行うものと捉えられていますが、最大の目的は、経済発展ののちに紛争を未然に防ぎ、地域全体をより平和に導いていくことでしょう。私は常々こうした発想は非常に大切だと思っていますが、習主席は演説で、「一帯一路」構想の五つの目的のうち、第一が平和への道、その次が繁栄だと言われました。そこには経済的な問題解決以上に、地域全体を戦争のない地域に変えるだという習主席の強い意志を感じることができ、直にこの言葉を聞くことができたことを嬉しく思っています。

 私は人生の目的を、平和に幸せに生きることだと思っています。その手段としての経済発展は必要ですが、金融資本主義や市場経済万能主義がまかり通ってしまうと、経済が最優先のように聞こえてしまいます。そして、必ずしもその利益にあずかることができず、むしろ貧困におちてしまう人々が増えてきているのが現状です。そんな中で習近平主席が「『一帯一路』最大の目的は運命共同体で、みなが仲良く暮らして平和になること」と規定されるのは、とても正しい指導者の考えだと思っています。

 私も「東アジア共同体」というものを主張してきました、この提言も習主席が提唱する「人類運命共同体」同様、東アジアの国々があらゆる問題を議論し、対話と協調路線の中で地域全体を平和にしたいという発想からなる、東アジアと東南アジアの諸国を包含する運命共同体構想です。習近平主席の「一帯一路」はさらに大きなユーラシア全体を考える構想で、このように気宇壮大な夢の実現への意思を習主席は持っておられること、また、私の発想と方向性が同じであることに感銘を受けています。

さよなら「大日本主義」

 21世紀は今まで唯一の大国とも言えた米国が徐々に衰退する一方で中国が台頭していることから、今後は中国と米国が拮抗しつつ協力して発展する時代にしなければいけないと思います。日本の「実るほど{こうべ}頭を垂れる稲穂かな」というたとえのように、人間も国も成長すればするほど、周辺に対して力で優越を示そうという発想に陥りやすくなりますが、習近平主席の大国主義は実れば実るほど頭を垂れるもので、周辺諸国との協力関係を高めつつ、13億人以上の国民を有する中国としての生き方を訴えていくという発想は良い方向だと思います。そしてその先に「一帯一路」構想があると理解しています。

 日本はかつて経済中心に発展し、GDPが世界第2位にまで伸びた国ですが、人口はわずか1億2000数百万で、中国の10分の1以下です。このように小さな国が中国と米国という二つの大国に挟まれ、自分も大国だと虚勢を張ることに、果たしてどれだけ意味があるでしょうか。私は政治や経済で強い国を目指すよりも、一人ひとりが幸せを感じる国であってもらいたいと思います。ですから日本は大国主義を求めるのではなく、ミドルパワーとして世界の国々にモデルを示すことが大事だと思っています。

 幸か不幸か、日本は世界初の高齢社会国家になりました。恐らく今後の中国も高齢社会に突入し、お年寄りの生きかたと労働力の新しい発想が求められるでしょう。このような時にこそ日本がミドルパワーを発揮し、初の高齢社会の国として成功例を作り上げ、お年寄りや生まれてくる子供たちに満たされた社会を提供するようであってほしいと思います。そのためには経済成長や軍事大国を目標とするのではなく、一人ひとりの人間の生きる価値をいかに見出し、国がそれをいかに助長していくかが求められていると思います。周辺国とケンカをするのではなく、より仲良くしていくことこそが、共生の社会です。もともと中国や韓国から多くのものを学び、文化的価値を享受している日本は、より中国と共に生きる、あるいは生かされる喜びを味わえるような関係になるべきで、紛争を未然に防ぐシステムを作っていくことが大事だと考えます。

関係改善のメッセージは日本から

 私は米国に6年留学していたので、決して米国嫌いではありませんし、反米でもありません。米国人は実際にお会いしても、それぞれ良い人たちであると感じています。しかし米国に常に依存しながら外交政策を決めなければならない日本の政治状況は、あまりにも寂しいと思います。独立国の日本は何でも米国に従うのではなく、自分の意見や政策の方向を持つべきです。日米関係あるいは日米安保体制をより相対化し、日中間のバランスをより上手に取れる日本にならなければいけないと思います。

 中国が経済的に安定して発展することは日本にとっても望ましいと、日本人には特に理解してもらわなければいけないと私は思っています。安倍首相が中国脅威論のようなものを振りかざしながら、安全保障の環境を整備しようとしたことで、日中関係は政治的に必ずしも正常とは言えなくなりました。私は日本がこの誤りに気づくべきだと思います。私はAIIBの顧問をしていますが、日本がまだ参加していないのは極めて不自然なことだと思います。トランプ大統領は参加を希望しているものの、諸般の事情で叶わないようですが、日本だけが取り残されるのは非常にもったいない話です。

 日本は政治大国や軍事大国を目指すのではなく、外交努力で国力を示すことが大切ではないでしょうか。今後の中国は習近平体制のもと、「一帯一路」構想などを強力に推進させつつ発展していくでしょう。日本はむしろそこに積極的に協力していけるような体制を作るべきだと思います。アジアの平和のためにも、日中がこのような協力関係をつくるのは大変望ましいことで、中日関係をより発展させていくための努力が日本側に求められています。日中関係改善のため、日本側から歴史的問題の解決などを含めたメッセージを新たな習近平体制に提示していくべきです。習近平体制がそれを温かく、また辛抱強く見つめ、適切な方向にリードされることを期待します。

編集者=于文 撮影=呉文欽

人民中国インターネット版 2017年10月18

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