中国封じ込めの発想はもう通用しない(後編)

横浜国立大学名誉教授 村田忠禧(談)

「人類運命共同体」の発想で両国の食い違いを是正

日中関係というと、すぐに「島」の問題が関係を阻む大きな要因であるかのように言われていますが、私はあのような問題は小さなことで、そこにとらわれるのは良くないと思っています。日本と中国が協力できる分野はたくさんあります。たとえば地球規模での温暖化対策に積極的に取り組む中国に対し、日本は消極的な姿勢を見せていますが、これを良しとしない意見も多く出てきています。中国と日本は技術面で協力しあえる要素をかなり持っているので、温暖化対策、環境保護問題などで協力しあい、小さな対立にとらわれてはいけないと思います。

1972年の日中国交正常化の際にも、「島」の問題は提起されていました。しかしこれにこだわっていては国交樹立ができないと、周恩来首相が棚上げを提案し、それを願う日本側が安心して国交樹立に踏み切ったのです。実際に国交正常化は、日中両国にとって非常にプラスになりました。「島」の問題はすぐに解決できるものではありません。お互いが主張を堅持している限り、棚上げにするべきです。

しかし、棚上げにするだけでいいのかといえば、私はそうは思いません。平和的解決を実現するための様々な努力をするべきです。特に学者が国の立場を超越し、客観的事実を尊重する立場に立ち、「島」の問題を国際法的にも歴史的にも多方面から共同研究を行うべきです。それにはまず、事実の共有化が必要です。認識の共有化はすぐにはできませんが、事実は事実ですから、その共有化に努力をし、その成果を資料集やウェブ上で公開することを私は提案します。

争いが共に手を取り合うきっかけづくりになれば、学者の果たす役割はとても大きいものがあります。私は日本で「島研究会」をやっていますが、私と同様の意見を持つ人は増えており、カナダなどの他国の学者や、中国からの協力を得ています。「島」の問題はお互いに突っ張り合うのではなく、平和的に共同で解決することが望ましいです。

習近平氏は「人類運命共同体」という思想を提起していますが、これは非常に重要なことで、アジアインフラ投資銀行(AIIB)や「一帯一路」の理念にもこの発想が込められていると思います。領土問題を考える上でも、この思想を深めていく必要があります。そうすれば東海も南海も、昔のように平和で友好的な共同発展をする場になるでしょう。だからこそ共同研究は、中国と日本だけでなく、世界の領土問題の平和的解決のために努力しようとする学者を集めて行うのが望ましいと私は思っています。

 

人民中国インターネット版

 

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