友達を通して考える日本と香港

尾本真璃恵

 

“I don’t like Japan.” 面と向かって、香港人の友達にこう言われた。私がニュージーランドに一年間留学していたときだった。ニュージーランドには、いろいろな国からの移民や留学生が一緒に住んでおり、とてもマルチカルチャーな国だ。私がランチを一緒に食べていた友達も、中国人、ベトナム人、インド人、ヨーロッパから来た留学生や現地の子など、国籍はばらばらだった。そのメンバーで、時々、お互いの国の文化について話し合い、楽しい時間を過ごした時もあった。また、領土問題など、国同士、認め合っていない深刻な問題を話し合しあうこともあった。けれど、直接、言葉に出して、どこの国が嫌い、などという話はしたことがなかった。そのような環境の中で、香港から来た、私の留学先で初めて作った友達に日本のことが嫌いと言われたことは私にとって、とてもショックな出来事だった。 

しかし、その友達は日本の有名なアニメキャラクターなどは大好きで、そのグッズを貰うたびに、とてもうれしそうにしていた。また、その子にとっても、私はニュージーランドでできた初めての友達だったらしい。私はその子の嫌いな日本の国籍を持っている日本人であるにも関わらず、その友達は、私と仲良くしてくれた。なぜなのだろう。その友達は日本のアニメが好きだし、日本人である私のことも好きでいてくれている。それに、その子は日本語も習っていたことがあるのだ。しかし、日本のことは嫌いだと言い張る。 

「なぜ、日本のことが嫌いなの?」私は、勇気を出してその友達に尋ねたことがある。そうすると、友達はこう答えた。”I don’t hate Japan. But I don’t like Japan.” 理由を聞いたところ、特にない、と言われてしまった。その答えでは、腑に落ちなかったけれど、その質問をすることで、友達が少し機嫌を悪くしていたので、その時は怖くてそれ以上聞くことはできなかった。しかし、その後、タイ人の子とも仲良くなり、三人で話しているうちに、少しずつ、理由がわかるようになってきた。第二次世界大戦の時に、日本は香港を統治していた。その時のことを、祖父母に聞いたり、授業で習ったりして、日本のことが嫌いになってしまったそうだ。日本は香港を占領していた三年半、恐ろしいことをたくさん香港に向けてやっていた。今だからこそ、香港に親日の人は多いが、このような悲劇を忘れていない人、語り継いでいく人もたくさんいるということを改めて感じた。日本が占領下においてしたことは、全て日本の責任である。なので、日本はその責任に応じた、またはそれ以上のことをちゃんとしているのか。本当の事実を日本人、または、いろいろな人に公表しているのか。そして、私は日本が罪を認めて、本気で謝罪することによって、香港に許してもらうということが必要なのではないかと考える。そこが、もっとたくさんの人に、日本の魅力を知ってもらうこと、日本を好きになってもらうことのキーポイントになるではないか。 

また、香港人の友達は、日本の過去したことと、日本人や、日本のアニメなどはまた別のことだと考えていた。だから、あまり英語が上手く話せない私のために、英語を教えてくれたりしてもらううちに、日本人である私と普通の友達より、より近い存在になれたのだ。国境を越えて、国籍を気にせずに、友達になるということは、こういうことを指すのだと、気づかされた。 

いろいろな国の人と、留学先で関わることにより、たくさんのことを知ることができた。香港人の友達により、日本の負の歴史など、気づかされることもたくさんあった。しかし、そのような中でできた友情は日本に帰ってきた今でも続いている。なので、日本と香港がお互いより仲良くなるためには、実際友達を作っていろいろ学んで気づかされることが、遠いように見えて、一番の近道ではないだろうか。


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