ふたりの中国人 |
大八木愛 あなたは「中国」と聞いて、どのようなイメージをもつだろうか。正直に言うと、私は5年前まで「中国」と聞いて良いイメージを持つことはできなかった。私がよく遊びに行く福岡市には多くの外国人観光客がおり、とりわけ多いのが中国人観光客だ。そのせいか、私は彼らのマナーの悪さを目にすることが多かった。周りの人のことを気にせずに、自分中心の行動をしているのが目についた。彼らの行動を見て、私は中国に対して良いイメージをもつことはなかった。しかし、二人の中国人が私の中国に対するイメージを変えた。 中学2年生だった私が母と宮崎県に旅行に行ったときのことである。夕日が眩しい夕方、電車に乗っていると、前の席に中年の女性二人と若い男性一人の中国人の3人組がやってきた。席に座るやいなや、女性二人はガヤガヤと大声で話し始めた。私と母は「うるさいな。」と心の中で思いながら黙っていた。そのとき、若い男性が隣にやってきて、「すみません、うるさいですよね、あの二人。」と話しかけてきた。この男性が私の中国に対するイメージを変えた一人目の中国人だ。流暢な日本語で私たちが驚いていたところ、男性は「あの二人は私のおばなんです。日本に観光で来たんですけど、日本語が喋れないから、日本語が喋れる私を無理やり同行させたんです。あ、日差しが眩しくないですか、シェード下げますね。」と言って、前に座っていた、その男性のおばの席の窓のシェードを下げてくれた。私と母はその男性の振る舞いに感激した。目的の駅に着くまで私たちはその男性と話を続けた。彼らのこれからの旅行計画を聞いたり、その土地のおすすめの料理やお店を教えたりして、退屈だった移動時間がとても楽しいものになった。先に私達が目的の駅に着いて電車を降りようとしたとき、男性は「お気をつけて。」と笑顔で声をかけてくれた。私は、その男性に出会うまでは、中国人はみんなマナーが悪く気遣いができないのだと思っていたが、それはひどい思い込みだった。よく考えると、中国人と話したのはそのときが初めてだった。実際にその国の人と話もせず、考え方などを知ろうともせずに間違ったイメージを持ったのは本当に馬鹿なことだった思い、私は恥ずかしくなった。そのときから私は、外国に対して勝手なイメージを持たないことを心がけるようになった。 私の中国に対するイメージを変えた二人目の中国人とは、高校1年生のときに参加したオーストラリア研修で出会った。研修では、現地の高校で授業をうけることが10回程あり、その高校の生徒とバディーを組むことになった。私の友人のバディーがその中国人だった。彼女は日本に興味があり、日本語が上手だった。「いつか日本に行ってみたい。だけど、日本では中国に対するイメージがあまり良くないと聞いた。」と、彼女は悲しそうに話した。せっかく日本を好きになってくれたのにそのようなことでショックを受けている彼女を見て、私は申し訳ない気持ちになった。また、彼女の話を聞いて、日本人の中国に対するイメージによって、悲しい気持ちになっている中国人がいるのだと気づかせられた。5年前の私と同じように、多くの日本人は中国に対して良いイメージを持っていないかもしれない。その中で、中国人に接したことがないにも関わらず勝手なイメージを持っている人がいるのであるならば、実際に中国人と接する機会を持ってほしいと私は考える。 私は、今では中国に興味を持つようになり、大学では初修外国語として中国語を学んでいる。中国に行ったことのある先輩の話を聞いて、いつか中国に行ってみたいとも思うようになった。このように考えるようになったきっかけの全ては、二人の中国人との出会いだ。たった二つの出会いが私の考え方を変えたのだ。他の人にも出会いを通して自分の価値観が変わる体験をしてほしい。それは必ずあなた自身にとって価値あるものになるはずだ。 |
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