計り知れない中国

 

清川仁

私が中国という国に関心を持ったのは今から9年前。父親が中国出張のお土産として買ってきた、『西遊記』のDVDであった。六小齢童演じる孫悟空の躍動感、そして何よりドラマの中で流れる中国の音楽。これらに惹かれ、中学生ながらに第二言語として中国語を学び始めた。中国語は音が大事だということを知りラジオを使った。最初は、独特の発音形態に戸惑ったが次第に慣れ、今となっては私自身中国語の響きの方が日本語のそれよりも心地よく感じてしまう。それから聞く力がついていき、HSKではリスニングの部分では満点をとるまでに至った。高校生となり、今度は中国の文化について関心を持ち始めた。特に広い国土をもつ中国だからこそ、その気候等の違いから生じる多様な文化の発生の面白みにも惹かれた。高校生となってからも毎日中国語に触れることを欠かさずに過ごし、浪人中もそう過ごした。

大学生になってからは慶応義塾大学理工学部へ進み理系科目を学び、體育會に所属しながらも文学部の中国文学専攻のネイティブの学生と共に切磋琢磨する日々を送っている。彼らから聞く生の中国文化の話に惹かれ、自由な時間の少ない学生生活ではあるが二年生の夏に一人で中国に渡った。

私が選んだ渡航先は首都北京と貴陽。北京では主に観光をし、どの建造物も小さな装飾品から壁画まで必ず深い意味があり感動の連続であった。例えば天壇。中国の友人から聞いた話によれば、門の装飾の玉の数が9個の理由は当時中国で縁起の良い数字とされた9は皇帝のみが使用することができたことに由来する。さらに壁画の龍の指の数。これも皇帝のみが五本指の龍を描かせることができたことに由来する。祭事に使われる一区画のために広大な敷地に石造りの土地を建造したところも、当時の皇帝のスケールの大きさをうかがい知ることができた。この様な中国の悠久の歴史もさることながら街中に乱立する高層ビルにも圧倒された。入り組んだ道路網も東京のそれとは比べ物にならない道路の幅とそれでも収まりきらない交通量も、どれ一つをとってもそのスケールの大きさは今も昔も変わらないということも面白く感じた。また雰囲気で都市部の北京にいる中国人は実に多種多様で出稼ぎの地方出身者多いということが感じられた。杭州でのサミットの開催時期と私の渡航が重なったために政府の措置のためか、心配していた空気の悪さはあまり感じられず、いわゆるサミットブルーのきれいな青空が見ることができたのも素敵な思い出となった。

北京での滞在を終えて国内便を使って貴陽へ向かった。貴陽を選んだ理由は特に大きな意味はなく、私の名前が清川であり、友人からあだ名で『キヨ』と呼ばれることが多かったので、その響きが似ているというだけで貴陽(キヨウ)を選んだ。国内便にのってすぐに感じたのは北京語が聞こえてこず、貴陽の方言だけが飛び交っていたということ。北京語ならば問題もなく聞き取ることができるのだが。機内で試してみたがその方言を聞き取ることはできなかった。市街地に出るとその光景に圧倒された。北京とは異なり、まだ発展の遂げていない中国を垣間見ることができた。例えば、土を使った建造物がほぼメインでありその周りを上半身裸の男性が歩く。私がイメージしていた中国がそこにはあった。貴陽では、米粉でつくった麺料理や豚の腸詰などどれもおいしく私自身北京よりも貴陽の方が自分に合っている気がしてならなかった。また初めに心配していた方言のこともなんらも問題はなく私のたどたどしい中国語にも皆さん易しく接してくれた。短期間の渡航ではあったが、中国には私の想像以上の世界が広がっていた。多様な中国の顔を見てそれをぜひ日本に伝えたい。互い刺激しあえる東アジアの国として中国との関係を築くために多様な顔を持ち計り知れない中国をもっと知りたいと強く思う。


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