「出会い」は教えてくれる

 

南有紗

私が中国と出会ったのは、つい最近、2016年秋である。

私は国際交流基金日中交流センターによる「日中ふれあいの場」事業という交流事業に参加した。日本の学生チームで日中文化交流イベントを企画・立案し、採択されれば実際に中国で現地の大学生(CP(カウンターパート))の協力のもとイベントを実施できるという事業だ。私と友人がこの事業を知り企画案を練り始めたのが2016年10月ごろであった。幸いにも私のチームは選考を通過することができ、私は2017年3月に杭州へと渡航した。つまり、私が「中国」を初めて意識したのは2016年秋で、実際に訪れたのは2017年3月の1回きりであるのに、私はもう中国に魅了されてしまったのである。中国は、様々な“出会い”を通して私に数多くのことを学ばせてくれた。

まず、人との出会いである。中国では主として日本語学部の学生である11名のCPに協力してもらった。彼らとは渡航前からWeChat上でつながり連絡していたが、対面するのは渡航した日が初めてだった。初対面の人々とたった1週間で仲良くなれるだろうか、イベントをうまく成功させられるだろうか、不安でいっぱいだった。しかし、そうした不安は嬉しいことに渡航初日に吹き飛ばされてしまった。空港に降り立つと、空港まで駆けつけてくれたCPが私たちを見つけ、大きく手を振り「お待ちしていました!」と笑顔で出迎えてくれた。その姿を見た瞬間、まだ自己紹介もしていないのに、不思議な安心感と大きな喜びに包まれ「来て良かった」と思った。CPは皆きれいな日本語を話すので、ホテルに向かう間に色々な話をし、夕食歓迎会も開いてくれて、あっという間に打ち解けられた。初対面の人との壁を破るのが苦手な私にとってこの事業への参加は挑戦だったが、親しみを持って接してくれたCPのおかげで自分も積極的になることができ、楽しい時間を過ごすことができた。また、彼らは私たちがイベントの運営について困っていると親身に相談に乗ってくれ、進んで手を貸してくれた。会場設営に段ボールが必要なときには大学近隣の青果店で交渉してくれ、資料をコピーするため研究室を使わせてくれるなど、様々に助けてくれた。ここにあったのは、「中国人」「日本人」などといった枠組みは関係なく、目の前にいる人をより深く分かりたい、そして助けになりたい、という“人対人”のかかわりであったように思う。私が事業を通し関わった人はもともと日本に好意的だということもあると思うが、私が出会った中国人たちは、メディアなどを通した「中国人」のイメージを払拭してくれて、目の前にいる相手を見つめることの大事さに気づかせてくれたのである。

次に、杭州の景色との出会いである。以前の私は、中国といえば教科書で見るような繁華街を連想していた。しかし、杭州は中国一景観がきれいな街とも言われるように、緑豊かで心落ち着く風景の街並みであった。西湖と茶畑を訪れたが、どちらも美しさのあまり言葉も出ず、特に、東西南北どこを向いてもどんなに目を凝らしても一面に広がる茶畑を見たときは、中国の広さをこの目で実感したような気がした。見渡せど果てが見えない景色に私は初めて出会った。その景色を見ながら飲んだ摘立てのお茶は、茶葉をお湯に浮かせたまま飲むことには驚いたが、味わったことのない深く優しい味がした。この経験を通じ、自分が中国という国を一面的に見ていたのではないかと考えた。日本でさえ地域により景観や慣習は異なるのに、26倍の面積をもつ中国はもっと大きく違って当然である。異国を知るには、実際に現地を訪れ肌で感じることの重要さが気づかされた。

私は、大事なことに気づかせ自信を成長させてくれた中国と中国人のことを大好きになった。中国語の勉強も遅ればせながら始めた。まだ私は杭州とそこに住む朋友のことしか知らないが、広い中国、多くの“出会い”が待っていると信じ、中国についてさらに理解を深めたい。


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