私たちから変えていく

 

古谷恵莉子

「なんとなく嫌わないで。」

なんとなく中国が嫌だ。なんとなく中国人はマナーが悪そう。中国に対して、悪いイメージを持つ人は多い。私も偏見を持つ一人だった。日本では、中国からの観光客のマナーの悪さや爆買いの報道ばかりが取り上げられている。銀座では、中国語が飛び交いチャイナタウンさながらである。同族嫌悪とも言うべきだろうか、同じアジア人なのに激しくエネルギーにあふれた中国人が時に横暴な振る舞いに見えてしまうことがあった。そんな意識を変えたい、中国人の考え方に触れてみたい。そんな思いから中国語の学習を始めて4年になる。

大学でも、アルバイトでも、自然と周囲に中国人の友人が増えていった。中国人の友人ほど熱心にメッセージをくれる友人はいなかった。中国をもっと知ってほしい。日本と中国の懸け橋になりたいと考え、昨年2016年冬、笹川杯日中学生討論会実行委員に参加した。実行委員は14名。普段は大学も専攻も学年も異なる学生が「日中関係は私たちが作る」という志の下に集まった。討論会のテーマは「日本と中国の将来を考える」とした。テーマ設定の理由は次の世代である私たちが、日中共同で話し合い未来について意見を出し合うことにより、今何ができるかを考える機会にしたいという想いがあったからだ。両国の15年後の未来年表を6グループ分かれて予想し、日中関係がどうなっていたいのか討論する。未来の15年間を1年ごとに予想することで過去や歴史から学ぶ大切さだけでなく、ゼロから物事を生み出すことの大切さも感じられる場にすることができるからだ。討論会では「日中関係の悪さばかりが報道されているが、これから互いの長所を生かしたい」「日中の国民の行き来を増やしたい」「互いの文化を学びつながりを増やしたい」という意見が交わされた。実行委員14名から参加学生へ、そこから熱意は広がっていき、テレビ局や雑誌社から取材も受けた。熱意のバトンが繋がっていくのを感じた。

そして討論会の後には、行先ごとに分かれ東京を案内した。原宿など有名な観光地から、大学まで案内することでメディアの虚像ではない躍動する東京を見せ伝えることができた。

案内した日本人学生も、今まで気が付かなかった日本の良さや美しさに気づかされる。日本を知ることで世界が広がった気がした。中国の学生に原宿の印象を聞くと「まるでワンダーランドだ。こんなに人がたくさんいるのに互いにぶつからないように気遣う日本人は素晴らしい」と驚いていたようだ。 

後日、案内した中国人学生から「日本であなたたちと過ごした1日は宝物。日本文化に興味はあったけれど、実際に見て感じることで日本へ留学してみたい気持ちが高まった。」というメッセージが届いた。私は心が温かくなるのと同時に、日中関係をよりよくしていこうという気持ちが届いたのだと分かった。この出来事を大学の友人に伝えた。すると友人は「中国へ留学してみようと思うんだよね」と打ち明けてくれた。

なんと奇遇だろう。日本からも友人が中国へ行くのだ。私一人から、どんどんつながりは広がり、その輪は大きくなりつつある。この大きくなった輪を今度は日中に留まらず、世界に広げていく。私の新たな目標が生まれた。私たちから変えていく。私たちから作っていく。中国への偏見が私たちを変えた。


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